キャッシュレス化の柱となるか?「タッチ決済」のメリットと注意点

2018年末はPayPayの100億円キャッシュバック騒動に目を見はった方も多かったのではないでしょうか?日本は中国に比べて、キャッシュレス化が非常に遅れていると言われます。キャッシュレス決済比率は中国の89.1%に対して、日本はなんと18.4%という低さ(経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」(2018年4月)より)。

オリンピックや観光客対応、グローバル化に向けて、キャッシュレス化を推進するためにも「タッチ決済」が注目されていますが、その特徴と注意点について、以下にまとめました。

<ご参考>

ソフトバンクとヤフーのジョイントベンチャーとしてスタートしたPayPayは、2018年12月4日に「100億円あげちゃうキャンペーン」を大々的に行い、開始10日で予算消化によるキャンペーン終了となった。顧客が殺到したり、通信障害などもあり、さまざまなトラブルも問題となった。
今後は、どこでも使える便利なモバイル決済サービス決済を成功させるために、利用者が使いやすいUIや決済完了までの応答速度、店舗管理ツールなどを磨いていく。PayPay利用者に引き続き使ってもらえるような施策を打つとともに、まだ使っていない層にも使ってもらえるように、今後もお得なキャンペーンを企画する予定。

目次

(1)キャッシュレス化の流れとは?

キャッシュレス決済とは、その名の通りキャッシュ、現金を使わない支払いを指します。日本がまだまだ現金割合が高く、キャッシュレスにならない理由としては、以下が挙げられています。

<現金を使う理由>

  • その場で支払いが完了する
  • 多くの場所で利用できる
  • 使いすぎる心配が少ない
  • 手数料などのコストがかからない

など

(出所) 日本銀行「生活意識に関するアンケート調査(第73回)2018年3月調査」(2018.4)

日本は治安がよく、計算もすぐにできて、てきぱきしていることなども、現金でやっていける背景としてあげられるでしょう。しかし、キャッシュレス化などに関するある調査によると、「中小企業で現金集計に週1.75時間、銀行への入金に週1.06時間を費やすなど、現金集計に対して年間147時間を費やしているといい、人件費に換算すると8861億円に上る」というデータもあるほどです。(Square(東京都港区)によるキャッシュレス化などに関する調査結果)

日本経済の効率性を高めるためにも、また消費を高めるためも、できるだけ簡単な決済を導入する必要があるとされ、スマホをかざすだけでいい「タッチ決済」が昨年より注目され、導入する企業も増えてきたようです。

(2)今までのキャッシュレス化の手段には何があった?

実はキャッシュレス化は、今に始まったことではないはずです。ここで、今までのキャッシュレス化の手段を整理してみました。

◎従来の代表的キャッシュレス支払手段の例
 プリペイドポストペイリアルタイムペイ
前払い後払い即時払い
特徴事前にチャージ与信機能リアルタイム取引
クレジットカードで自動チャージもあり翌月などに支払い使った額だけ銀行口座から引き出される
主なサービス例電子マネークレジットカードデビットカード
・交通系・磁気カード・銀行系
・流通系・ICカード・国際ブランド系
主な支払い方法タッチ式(非接触)
(ICはFelicaが多い)
スライド式(磁気)スライド式(磁気)
読み込み式(IC)読み込み式(IC)
主な例Suica,
PASMO,
WAON,
楽天Edy,
nanaco など
Visa,
Master など
Visaデビット,
JCBデビット など
※「キャッシュレス・ビジョン」(平成30 年4月 経済産業省)を参考に筆者補足作成

キャッシュレス化として、クレジットカード決済はその代表格でしょう。表では、後払いの手段として真ん中の「ポストペイ」に該当します。しかし、実際は、端末の導入コストや、毎回の利用額に応じて決済手数料を店側が負担する問題もあり、導入に消極的な商店も多かったといえます。

他に、「プリペイド」として、事前にチャージするSuicaなどの交通系電子マネーや、WAONなどイオングループの流通系電子マネーがありますが、最近は、与信を使わず、「リアルタイム」の即時払いとしてデビットカードが増えてきました。

(3)QRコードによるタッチ決済が救世主となるか?

更に昨今、QRコード決済など、スマホやタブレットなどのモバイルを使った「タッチ決済」が急増してきました。その主なものをあげたのが以下の表です。

◎主なモバイル決済(カメラ/スキャナでQRコードやバーコード読込
特徴プリペイドポストペイリアルタイムペイ個人間送金
前払い後払い即時払い
事前チャージクレジットカード連携銀行口座連携 
PayPay
LINEPay
楽天Pay
OrigamiPay
QUICPay
iD
※2019年1月筆者調べ   

昨年のキャンペーンで一気に知名度をあげたPayPayは、前払いにも後払いにも、個人間送金にも対応しておりますが、他にもたくさんあります。

LINE Payは、前払いと個人間送金に注力していますが、他に、クレジットカード連携で、後払いができたり、銀行口座との連携で即時払いが可能なものなど、本当に多くの決済アプリが増えています。

(4)まだまだ発展途上の「タッチ決済」、注意して付き合うには?

カードを持ち歩く必要もなく、スキミング被害のリスクもないため、スマホなどによる「タッチ決済」は確かに便利でしょう。しかし、便利である反面、自分を見失うと使い過ぎなどコントロールがきかなくなるリスクがあります。この使い過ぎを心配する人は、家計を預かる女性の多いようです。

また、男性には、システム障害に対する懸念や個人情報の流出不安、セキュリティに対する不安の声も多く聞かれます。

こうした中で、いきなり何かに一本化するのではなく、自分の生活スタイルを大切にしながら、より便利にしたい分野から取り入れていくのがいいでしょう。

例えば、

・使いすぎを心配する人は、即時払いのデビットカードを中心に

デビットカード決済やアプリは、自分の銀行口座の預金で直接決済を行い、残高の範囲内で利用するため、使いすぎの心配がいらないのが最大のメリットですね。

中でも、アプリですぐに残高が確認でき、購入の履歴がわかりやすいものは重宝します(ジャパンネット銀行のVISAデビットなど)。

・電車・バス・地下鉄などの交通機関をよく使う人は、交通系でポイントを効率よくためる

現時点では、通勤ラッシュなどの混雑に対応できる決済機能を維持するために、SuicaなどはICとしてFelicaを使っています。これは海外では使えないので、国内用と割り切って活用するといいでしょう。

・個人事業主・自営業の方、固定資産税を払う方などにとって、税金の支払いをQRコード決済できるようになりつつあるのは朗報

これによって計画的にポイントを貯めることもできそうです。

 

決済は手段の一つ。これからも利便性の競争は進んで、様々な手段が登場してくるでしょう。

ただし、そこに振り回されるのではなく、あくまで主役は自分。自分の暮らしやすさが一番大事なことです。

まずは、自分の生活圏・生活スタイルに合うのは何かをあらためて考えて、目的にあった使い方ができる決済手段を2種類から3種類程度選ぶのが、今後も対応しやすい方法でしょう。

参考

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この記事を書いた人

一般社団法人円流塾代表理事、STコンサルティング有限会社代表取締役。一橋大学卒業後、保険会社の企画部・主計部を経て1994年独立。CFP®、1 級ファイナンシャルプランニング技能士。約20年間、金融商品は扱わず、約3300件の家計を拝見してきた経験から、お客様の行動の癖や価値観に合わせた「美しいお金との付き合い方」を提供中。TV出演、著書多数。

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