日本の長寿化に伴い、2018年から生命保険の保険料が全面的に変わることが予想されます。
生保、死亡保険料下げ 長寿化受け11年ぶり
《要約》生命保険各社が2018年4月にも、死亡保障など主力商品の保険料を全面改定する見通しだ。平均寿命の延びを映し、「標準死亡率」を算定団体が11年ぶりに下げるため。各社はこれを参考に保険料を決める。10年定期の死亡保険料は5~10%程度下がる見込みで、利益を契約者に還元する。逆に長生きがコスト増要因となる医療保険は一部値上げの可能性もある。
平均寿命の延びによる死亡保険の保険料が安くなるというニュースは記憶にありますでしょうか?長寿化が進む上で保険事情はどうなるのでしょうか?また2013年以降、マイナス金利の影響で貯蓄型の死亡保険商品の保険料値上げが続いていましたが、保険料はなぜ上がったり下がったりするのでしょうか?
保険料の仕組みや来年2018年4月以降の保険事情も踏まえ、賢い保険の選ぶポイントなどを見てみましょう。
長寿化の日本で予測される保険料はどうなる?
厚生労働省「平成28年簡易生命表」の結果から、男女それぞれ10万人の出生に対し、65歳の生存率は男性89.1%、女性94.3%で、男女ともに9割近いことがわかります。同様に90歳までの生存率は男性25.6%、女性49.9%であり、女性の約2人に1人は90歳を超える計算となるのです。まさしく人生90年、100年の時代になってきているのでしょう。
そのため保険会社でも、亡くなるリスク以上に長生きリスクに真剣に向き合うようになっており、長寿化に伴って一定期間の掛け捨て型である死亡保険料は安くなるものの、終身保障が続く医療保険やがん保険の保険料は高くなる傾向です。
また健康な人とそうではない人で、健康優良体などの割引で保険料の格差を出している保険会社も出てきていますし、今後はAIを活用した商品なども発売されてくることでしょう。
さて、2018年の保険事情を見る前に、そもそも生命保険の保険料はどのように決められているのかを確認してみましょう。
生命保険の保険料はなぜ上がったり下がったりするの?
そもそも生命保険の保険料は3つの要素「予定利率」と「予定死亡率」、「予定事業費率」によって決められています。ここ数年、マイナス金利の影響で保険会社による運用難となり、貯蓄型の死亡保険の保険料が高くなっていました。これは保険会社が保険料を主に運用している『日本国債』の利回りが下がり、その為に予定していた運用利益の確保が厳しくなった結果となります。以下図のように「予定利率」が低くなるほど保険料の値上げに繋がり、死亡率や事業費が予定よりも低くなると保険料は安くなるしくみとなります。
また。保険会社では厚生労働省の簡易生命表とは別に、日本アクチュアリー会による『標準生命表』を参考にしています。これは生命保険の加入データから平均余命や年齢別にまとめた資料で、保険会社として、責任準備金を積み立てるために重視されているものです。
2018年4月にこの『標準生命表』が2007年以来、11年ぶりに改定されます。死亡率が低下していて、特に40歳男性の死亡率は前回10万人中148人に対し118人に低下している結果となっています。「予定死亡率」が低くなることで死亡保障の保険料は安くなるのです。ではどのくらい保険料などに影響していくのでしょうか?
2018年4月以降の保険料改定はどうなる?
予定死亡率が低くなって、死亡保険の保険料は5~10%安くなる予定ですが、特に定期保険など一定期間の掛け捨て保険について影響が大きく、10%位の値下げも期待できそうです。逆に、長寿化による医療やガンリスクから、医療保険やガン保険の保険料の値上げは見込まれています。
同じ死亡保障でも貯蓄型の終身保険や養老保険については、亡くなっても生きていても、保険会社としてお金を払うことになるため、保険料もあまり影響がない予想です。
終身保険 | 養老保険 | 定期保険・ 収入保障保険 | 終身医療 保険 | 終身がん 保険 | |
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保険料改定の予想 | → | → | ↘ | ↗ | ↗ |
では、保険料が10%程度安くなった場合には、今後支払う保険料にどの位影響するのでしょうか?
【例えば定期保険に毎月の保険料1万円、40歳から65歳まで加入している場合】
- 毎月の保険料1万円×12ヶ月×25年=300万円
- 10%割引かれた毎月の保険料9,000円×12ヶ月×25年
- =270万円(30万円の節約)
ただし『標準生命表』が改定になっても全ての保険会社が保険料を変えるわけではなく、保険料変更実施の有無や時期、保険料値上げ&値下げ幅は保険会社各社によって異なりますので、詳細は各保険会社のHPなどをご確認ください。
また、保険料に影響するのはこれから加入する人の場合で、今加入している場合の保険料は契約時のままとなります。では今加入している人も含め、これからの生命保険をどのように捉えていけばよいのでしょうか?
保険料改定も踏まえた、これからの賢い生命保険の選ぶポイントとは?
- 保険料が安くなったからと飛びつく前に、まずは保障の必要性や保障額を考えましょう。
- これから医療保険やがん保険を検討中の方は、値上げ前に検討した方が保険料は安くなるかもしれません。
- 定期保険や収入保障保険の加入を検討中の方は、値下げまで待つよりも加入できる時期に手続きをする方が安心です。万が一の事態はいつ起きるか予測不可能ですし、健康診断や既往症の状況によっては加入できなくなる場合が出てきます。健康であれば保険料を割り引きできる商品もあるため、色々と商品比較してみるのも良いかと思います。
掛け捨ての死亡保障に加入している人は、2018年4月以降に見直しすることによって、保険料が安くなる可能性があります。
長寿社会の最大のリスクは生活費としてキャッシュも必要となってくることです。そのため保険だけに頼るのではなく、若い頃から適度な運動や適正な栄養管理、定期的な健康診断などを体調管理も同時並行していくことも大事です。
保険は月単位で見ると大きな負担に感じないものの、トータル保険料で見ると住宅に次ぐ大きい買い物と言われます。ライフプランに合せて総合的に検討したうえで必要だからこそ加入してほしいと思います。
参考
- 生保、死亡保険料下げ 長寿化受け11年ぶり
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGC25H05_X20C17A3MM8000/?n_cid=SPTMG002
- 金融庁「保険業法第百十六条第二項の規定に基づく長期の保険契約で内閣府令で定めるものについての責任準備金の積立方式及び予定死亡率その他の責任準備金の計算の基礎となるべき係数の水準(平成8年大蔵省告示第48号)の一部を改正する件(案)」に対するパブリックコメントの結果等について
//www.fsa.go.jp/news/29/hoken/20170817.html