私たちは経済的な助け合い・相互扶助というと保険を思い浮かべることが多いと思います。しかし、最近、20代など若い世代と話していると、従来の金融商品やお金の仕組みにとらわれない、もっと自由な発想や根本的な思考をする方が増えているような気がしています。
そんな中、やはり従業員も比較的若い世代で、理念に「互い助け合いの場を通して、物心両面の幸福を実現し、世界の発展に寄与する」を掲げる株式会社オウケイウェイヴが、従来運営してきたQ&Aサイトのデータベースをもとに、日本ならでは感謝の気持ちを可視化した新しい評価経済のプラットフォームを立ち上げ、半年で様々なサービスを展開し始めています。
保険業界の外からも、真摯に助け合うことに向き合う会社がある例として、これからの流れを汲み取る参考になればと、以下にまとめてみました。
【ご参考】
2000年よりQ&Aサイト「OKWAVE」を運営する株式会社オウケイウェイヴは、2018年4月より、感謝を価値化する新たな経済圏『感謝経済プラットフォーム』の開発を開始し、5月には『感謝指数レーダーチャート』の提供、6月には“ありがとう”をカタチにする『OK-チップ』の提供を始めた。
そして約半年後の9月20日、感謝されている人が報われる社会を目指す新たな経済圏「感謝経済プラットフォーム」に企業や団体19社が参画したことを表明した。
その参画企業や団体は、飲食・服飾・美容・医療などの店舗や小売・サービス業から、機器メーカー、更には不動産の活用・IT関連サービス・お寺の活用など、多岐にわたる。
本当の相互扶助とは何か?を考えさせられる動き
このニュースを知って、誰もが大事と思っている「感謝」の気持ちをどのように経済に反映していくのか、非常に興味を持ち、記者発表も拝見させていただきました。
まず、記者会見で兼元代表取締役会長より、「Q&Aサイトでやってきたことはこれと同じことです」と言って紹介されたのが、以下でした。
米国フロリダ州のビーチで、急激な潮流に流された一家を、海水浴客約80人が自発的に人間の鎖を作って救助したという出来事
https://front-row.jp/_ct/17098286
その場に居合わせた人たちの助け合いの絆のように、Q&Aサイトでの質問・回答・お礼「ありがとう」を送る、という普通の人たちのやりとりが原点にあり、それによって、お互いに励ましあったり、寄り添ったりして成果を生んできたという実績を誇りに思っているのが伝わってきました。
まさしくこれは、助け合いそのもので、報酬とかやった分の元を取るなどの思考が働かない純粋な♡の世界のように映ります。
なお、こうした動きがある一方で、保険会社は、相互扶助を謳いつつ、実際には売れるかどうか、財務的に成り立つかどうかは外せない要素です。やはり、助け合い&感謝&経済的展開のバランスがとても大事になってくると思います。
「ありがとう」の『OK-チップ』はどのように流通するのか?
良いことをした人がより報われるという新しい経済圏「感謝経済プラットフォーム」の構築によって、感謝の気持ちとともに贈り合えるトークン『OK-チップ』はどのように流通していくのでしょうか?
まず、今まで20年近い蓄積があるという「OKWAVE」のQ&Aやりとりで、現在、4,700万件以上の「ありがとう」が存在しているそうです。その「ありがとう」を『OK-チップ』として、誰かに送ったり、参画団体や企業の優待割引などにも使えるようになります。
しかも、この『OK-チップ』はトークンとしてブロックチェーン上に記録されていきます。これから先の様々なデータが一切、改ざんされずに暗号化されて保存されていくのも、従来のポイント制度との大きな違いと言えます。
なお、送る『OK-チップ』には上限などがあるのかどうか聞いてみたところ、自分がもっている範囲内なら、いくらでも上限関係なく送れるとのこと。いいことをして感謝されたら受け取れ、自分の裁量で自由に送って感謝を表現できるというオンライン上のネットワークが広がるイメージですね。
ちなみに私もまず個人として登録をして参加をし始めました。
誰もが大事と思う「ありがとう」の気持ちをどれだけ客観的に評価できるか
「ありがとう」という感謝の気持ちはあくまで主観なので、それをどのように客観的に信頼できるものにしていくのか疑問に思う人もいるでしょう。
それについては、「OKWAVE」の4,700万件以上の「ありがとう」や3,600万件以上のQ&Aなどのビッグデータを機械学習した同社の人工知能AI「KONAN」を用いて、客観的に分析してスコア化しているとのこと。
つまり、「OKWAVE」の質問・回答・お礼などの行動データを基に、「会話力、信頼性、貢献力、感応力、礼儀、常識力、発想力、協調性」の8つの指標で評価し、ユーザーごとに感謝指数レーダーチャートを示すと同時に、その指数に応じて『OK-チップ』が配布されるわけです(以下の見本参照)。まさに自分自身の人間性の客観評価になりそうですね。
発行者側の意図と、利用者側の意図、『OK-チップ』の使い道がすべて一つになれば素晴らしいものに
このように『OK-チップ』発行側の意図や基準が分かりましたが、それに賛同する団体や企業はどのようにこれを使っていくのでしょうか?現時点では、次のような傾向があるようです。
- 参画企業が従来から扱っている商品の優待などの特典として
- 参画団体・企業の組織内またはその周辺の人事評価を補うために
(1)については、一見、Web画面からは、ふるさと納税のような印象を受けたりもしましたが、参画企業や団体のサービスを並んでいる中から選ぶという行為になるようです。現時点では、全国どこでも均一に利用できるものとは限らず、そのニーズを持ち、その場で利用できる人は、ある程度限られてしまうかもしれません。
せっかくQ&Aサイトで質問の傾向や得意分野の傾向がわかるので、そのニーズに応じた企業サービスとの連携など、新しい価値の使い方の展開の余地がありそうに思います。
(2)については、組織の内外を横断的に使えるというのは、有難いと思います。こうした感謝の表現ができれば、家族の体調変化などに合わせて仕事の協力を仰ぐ際にも使いやすいでしょうし、組織関係なく、日ごろの感謝を送り合ったりできることも、より良いサービスや毎日の充実に貢献すると思います。日ごろ、ボランティアなどに積極的に参加している方にとっても、こうした感謝指数によって就職活動なども自信をもって前進できるチャンスが増えるのは嬉しいことでしょう。
『OK-チップ』の使い道としては、更に、防犯や防災、障害者支援、地域の助け合いや産業活性化、そして、観光客や外国人に対する関わりにも変化を及ぼす可能性があるのではないでしょうか?これからの一層の浸透に注目したいと思います。
参考
- 良いことをした人が社会全体からイイコトを受けられる新たな経済圏本格始動 – 「感謝経済プラットフォーム」
https://news.mynavi.jp/article/20180920-kansha/
- 企業・団体19社が参加し、「感謝経済プラットフォーム」が本格稼働
https://www.okwave.co.jp/press/20180920_2/
- Q&Aサイト「OKWAVE」にて『感謝指数レーダーチャート』を提供開始
https://www.okwave.co.jp/press/20180522/