運転下手は損をする! テレマティクス保険は自動車保険の救世主か?

テレマティクスとは、テレコミュニケーション(通信)とインフォマティクス(情報科学)を組み合わせた造語。自動車などの移動体に通信システムを組み合わせて、リアルタイムに運転情報を提供し、その情報を分析して保険料に反映させるのが、テレマティクス保険(以下テレマ保険)です。

走行距離や運転技術で保険料が変わる
「テレマティクス保険」は日本でも普及するか?

テレマ保険が急速に広がっているのが英国だ。国交省の資料によると、テレマ導入前の17歳から22歳の平均保険料は30万円と、日本の26歳の平均保険料(トヨタのアクア、ブルー免許、車両保険有など)の13.4万円の約2.4倍。しかしテレマ保険導入後の2014年9月には、22万円なるなど、保険料算定の公平性から、急速に普及が進んでいる。

2015年上半期、自動車保険新商品を一挙紹介
「テレマティクス」「若者向け」がキーワード

欧米での普及は今後もほぼ確実で、2020年までにイギリスで40%以上、アメリカ、イタリア、フランスで25%以上がテレマティクス保険に移行すると言われている。

若者の車離れ、高齢者の事故の多発と、逆風にさらされる日本の自動車保険業界の中で、テレマ保険は救世主となり得るのか? 今年発売された商品を検証しながら、今後の自動車保険に与える影響を考えてみたいと思います。

今年日本で発売・発表されたテレマティクス保険

テレマ保険には、走行距離が短いほど保険料が安くなる「走行距離連動型」と、急ブレーキ、急ハンドルなどが少ない安全運転ほど保険料が安くなる「運転行動連動型」があります。

あいおいニッセイ同和の「つながる自動車保険」は「走行距離型」です。トヨタのカーナビ「T-Connect」搭載車で、1㎞単位で保険料を算出することができます。「運転行動連動型」は、ソニー損保から「やさしい運転キャッシュバック型」が発売されました。ドライブカウンタで運転特性を点数化し、自身でWEBサイトに入力後キャッシュバックされるため、リアルタイムの通信はありませんが、運転技術を保険料に反映できる日本で唯一の商品です。

2015年発表のテレマティクス自動車保険

会社名 発売日 特徴
ソニー損保
「やさしい運転キャッシュバック型」
2月23日 個人向け運転行動連動型。専用のドライブカウンタで運転特性を計測、点数化。
点数結果をWEBサイトに入力後、点数に応じたキャッシュバックを受けられる。
損保ジャパン日本興亜
「スマイリングロード」
3月 フリート契約の法人対象事故防止等サービス。専用の東芝製通信機能付きドライブレコーダーで、リアルタイムの運転状況を把握し分析、事故防止をサポート。
衝撃から自動で事故通知機能や画像提供有。1800円/月程度の利用料がかかるが、全車両導入で保険料5%割引。
あいおいニッセイ同和
「つながる自動車保険」
4月1日 トヨタの「T-Connect」搭載車向け走行距離連動型。1㎞単位で保険料に反映。
月間1000㎞以内で割安。走行データ分析機能、事故時に24時間事故対応デスクにつながるサービスあり。
三井住友海上
「スマNavi」
5月11日 フリート契約法人向け安全運転取組等サービス。スマNaviキット貸与後スマホアプリ「スマ保『運転力』診断」に運転データを蓄積、分析し安全運転を支援。
無料、運転者の8割以上加入、200件以上診断実施で保険料6%割引。他社契約者も可。
東京海上日動
「ドライブエージェント」
10月予定 同社フリート契約の法人向け事故防止等サービス。パイオニア製ミラー型端末を搭載、ドコモ回線を使用。
安全運転コンサルティング、事故防止、保険会社向け自動発報サービス等による高度な事故対応を目指す。有償、保険料割引検討中。

日本の大手損保会社は法人向けサービスからスタート

損保ジャパン日本興亜、三井住友海上、東京海上日動は、フリート契約(10台以上契約)を対象に、企業向けの事故防止サービスからテレマティクスをスタートします。

損保ジャパン日本興亜は東芝製、東京海上日動はパイオニア製の専用ドライブレコーダーを搭載し、ドライバーごとの運転特性の分析をフィードバックします。また、事故が発生した時には、リアルタイムで報告、画像を提供し、高度で迅速な事故対応サービスを行います。ただし、サービスは有償で、損保ジャパン日本興亜は全車両加入など条件に保険料を5%割引。10月サービス開始予定の東京海上日動も割引を検討中です。

それに対し三井住友海上は専用のスマホアプリで運転データ分析を無償提供します。他社契約でもサービスを利用することができ、診断データと事故防止取組み結果により次年度から最大6%の保険料割引になるのが特徴です。

テレマティクス保険に取り残された人たちはどうなるのか?

欧米でのテレマ保険の普及については冒頭で述べた通りですが、日本ではすでに年齢条件や事故率による保険料が差別化されており、今後テレマ保険がどの程度浸透していくかは未知数です。しかし、国交省の後押しもあり、技術開発や課題の解決が進めば、高額な保険料を払っている若者などを中心に、ゆっくりと普及していくことは予想されます。テレマ保険が普及した時、従来型自動車保険に取り残された人たちはどうなるのでしょうか?

テレマ保険から取り残される人たちはどんな人?

  1. 初めから安全運転の意識を持たない危険運転者
  2. 安全運転を心がけようと思っても運転技術が上がらない運転者
  3. 高齢で運転技術が落ちている運転者
  4. 運転を評価されることでストレスがかかりやすい人 など

テレマ保険が普及することでおのずと運転者が差別化され、二極化されるでしょう。その結果従来型の保険加入者の事故率は高まり、保険料は上昇。それでも生活上、仕事上運転が必要であれば、高額化した任意保険に加入せず運転を続ける人も出てくるはずです。現在の任意保険の加入率は87%(国交省資料より)です。しかし、皮肉なことに国交省が後押しをするテレマ保険の普及で加入率が下がれば、交通事故被害者への救済が不十分になる可能性もあります。

また、保険会社側から見た場合、従来型の自動車保険加入者への保険金支払いコストが増したり、加入者が減ることで採算が悪化し、テレマ保険との保険料の差がどんどん開いていくことも考えられます。逆にそうしたコストを考え、テレマ保険開発に積極的でなくなる可能性もゼロではありません。

損保各社のトライアルを注視

国交省は、こうした課題を解決するために、さまざまな施策を考えています。たとえば保険料の上限を定めて保険料の差を一定範囲に収めること。運転特性のデータ分析や事故削減の効果を検証、システム導入コストの削減に対する後押し、テレマ保険普及を視野に入れた個人情報保護制度の見直し等も考えられています。

日本にとって今年はテレマ保険元年。ここから数年はトライアル期間として、国、損保会社、自動車会社、IT、通信事業者など、さまざまな方面からさまざまな試みがされるでしょう。テレマティクスの技術が運転下手を切り捨てるのではなく、運転技術を向上させ、交通事故弱者である高齢者や子どもたちを守るための技術、サービスにつながっていくことこそが、テレマ保険普及のカギとなるのではないでしょうか。

参考

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