「孤立死」の片づけ費用を補償する保険が増加中

高齢のおひとり様の増加で、「孤立死」が増加傾向にあります。特に賃貸住宅のオーナーにとっては大きなリスクで、少額短期保険を中心に備える保険も登場。大手損保も備える特約などを発売し、今後はさらに広がりそうです。

おひとり様の増加で「孤立死」も増加

内閣府「平成26年版高齢社会白書」によると、65歳以上の1人暮らしの高齢者の数は、2010年に男性約139万人、女性約341万人と、かなりの高水準です。高齢者人口に占める割合は、男性11.1%、女性20.3%で、男性は高齢者の10人に1人、女性は5人に1人がいわゆる高齢のおひとり様と言えます。

30年前は、男性約19万人(高齢者人口に占める割合は4.3%)、女性約69万人(同11.2%)であったことを考えると、高齢のおひとり様が急速に増えているのがわかります。また、今後も増え続けると見られており、2035年には男女合わせて760万人を超える勢いです。その頃には、高齢男性の6人に1人、高齢女性の4人に1人がおひとり様になると予想されています。

高齢のおひとり様が増えるにつれ、社会問題になっているものの1つが「孤立死」です。「孤独死」とも言いますが、公的には「孤立死」という表現が使われています。

「孤立死」とはどのようなものかというと――

脳出血や心臓発作、入浴中の虚血、室内での転倒など原因は様々ですが、突発的な傷病で、誰にも看取られることなく自宅等で亡くなることをそのような言葉で表します。中には、発見が早ければ助かっていたはずのケースや、あるいは亡くなったことが誰にも気づかれず、日数が経過してから遺体が発見されるケースもあります。社会やコミュニティから孤立することで起きる悲劇と言えそうです。

孤立死を避けるため、国が推進している「サービス付き高齢者向け住宅」でも、常駐の介護スタッフによる見守りと生活相談などのサービスが最低でも提供されています(中には、「特定施設入居者生活介護」の指定を受け、ケア付き有料老人ホームと同様のサービスを行うところもあります)。

また、一部の自治体が飲料や弁当の宅配費用を補助する形で高齢者の見守りをサポートしたり、宅配業者が家族の依頼を受けて、配達とともに安否確認を行うサービスなども始まっています。

図表 増えるおひとり様

身寄りがない人が亡くなった後の片づけ

安否を気遣ってくれる家族や親族がいれば、おひとり様でも亡くなった後の葬儀や片づけは誰かがやってくれるかもしれません。「孤立死」の問題をより深刻にしているのは、むしろ亡くなった後に誰も頼れる人がいない場合でしょう。

昨今の「終活」ブームもあって、意識が高い人や資金的に余裕がある人では、「死後事務整理」など事前に業者と契約を結んでおく方法などもありますが、そうした対策もなく身寄りのない人が亡くなった場合、賃貸住宅には次のような問題が残ります。

  • 未納がある場合は家賃の清算
  • 部屋の家財の処分
  • 部屋の原状回復・清掃の費用
  • 部屋で孤立死し発見が遅れた場合などの風評被害
  • (遺体は警察で監察医によるが検案を受けたのち、遺族に引き渡されます)

実はこうした問題で、現状、リスクを負っているのは賃貸住宅のオーナーと言えます。身寄りがなかったり、たとえ親族がいても絶縁状態だったりして、高齢者が部屋で亡くなって部屋の片づけをする人がいない場合に、次の人に部屋を貸せる状態にしないといけないため、放置しておくわけにはいかないのです。国交省のガイドラインでは、滞納した家賃などは保証人に請求できても、原状回復義務までは難しいようです。

オーナー向け火災保険の特約が増加

こうした「孤立死」の増加に伴い、リスクに備えるための保険や特約が誕生しています。

入居者「孤独死」備える保険

三菱総研が2013年に行った調査では、入居者の孤独死によるや経済的リスクがあるため、管理会社や仲介業者の44%、オーナーの12%が「高齢者に貸さない」と答えた。こうしたリスクに備えるため、4年ほど前に登場したのが、孤独死に備えるオーナー向けの損害保険だ。室内の片づけや修繕にかかった費用などを一定額支払う。

まず、アイアル少額短期保険は、賃貸住宅を4室以上保有するオーナー向けに「無縁社会のお守り」という商品を販売しています。賃貸住宅の戸室内で孤独死や自殺、犯罪死が発生した場合に、部屋を元通りにする原状回復費用として1事故最大100万円が支払われるほか、事故後に空室や家賃の値引きになった場合に、最長12ヶ月間、1事故最大200万円まで補償される、などの補償があります。保険料は、1戸月300円。

 こうしたオーナー向けの保険は、ほかにも次のような商品があります。

  • e-Net少額短期保険「賃貸住宅費用補償保険Re-Room」
  • 少額短期保険ハウスガード「賃貸住宅経営あんしん補償保険オーナーズガード」

「孤独死」費用などを火災保険で補償

MS&ADインシュアランスグループの三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は、10月から、賃貸住宅内での孤独死などに伴う費用を補償する特約を付けた火災保険を販売する。

三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は、賃貸住宅オーナー向け火災保険に付ける「家主費用特約」を共同開発し新設します。リリースによると、「賃貸住宅内での孤独死や自殺、犯罪死によりオーナーが被る家賃収入の損失や、清掃・改装・遺品整理等にかかる費用を補償」するそうです。該当の部屋だけでなく、上下左右の戸室も補償され、実情に合っています。

損保では初の特約だそうですが、今後、オーナー向け火災保険の特約として広がるのではないでしょうか。

 自分で備える」補償も広がる!?

 一方、リスクを自覚しているのは、高齢者本人も同じです。孤立死をした時に周囲に迷惑をかけたくないという思いから保険で備えようという人もいます。そうした人を対象にする保険・特約も増え始めています。

例えば、ジック少額短期保険株式会社では、賃貸住宅総合保険に「孤立死原状回復費用特約」があります。同様に特約で備えられる少額短期保険はほかにもあります。

また、NPO法人「人と人をつなぐ会」が少額短期保険会社のメモリード・ライフと共同で開発した「希望のほけん」もユニーク。死亡保険(無配当災害死亡割増型1年定期保険)に加入することで、いざという時の葬儀や清掃、遺品整理、納骨等の支援を受けられます。見守り機器も有料で利用できます。ただし、更新できるのは90歳までです。

賃貸オーナー向け保険も自分で備える保険も、今後、広がっていくものと思われます。

参考

  • 「孤独死」費用などを火災保険で補償(時事ドットコム)
    http://www.jiji.com/jc/zc?k=201506/2015062400702&g=soc
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