貯蓄性が高い保険が販売停止? 保険料値上げ? これからの保険はどう選ぶ?

保険には、養老保険や確定年金、終身保険などのように、払った保険料相当額に対して、将来、受け取れる保険金や年金、解約返戻金が少しでも上回るように貯蓄機能を高めた商品があり、今まで預貯金などの貯蓄代わりによく利用されてきました。

しかし、2014年の終盤から今年にかけて、低金利の影響で、そうした貯蓄機能のある商品の販売停止や保険料の値上げといったニュースが多く見られています。

明治安田や第一、貯蓄保険の販売停止 低金利で運用難

長期金利が低下し、運用利回りを得にくくなったため、貯蓄型の生命保険の販売停止や保険料値上げの動きが広がってきた。2014年10月に、明治安田生命が一時払い個人年金保険を、第一生命やソニー生命が一時払い養老保険の取り扱いを停止し、11月にソニー生命が一部の平準払いの学資保険の販売を停止している。また、退職金の運用などで人気がある一時払い終身保険は、各社の主力商品の一つだが、日本生命は2月から保険料値上げをしており、他の生保も追随して保険料を上げる可能性がある。

日本生命、一時払い終身保険料1~2%上げ 2月から

日本生命保険は9日、2月から貯蓄性の高い「一時払い終身保険」の保険料を約1~2%引き上げると発表した。保険料の値上げが、契約者に約束する利回り(予定利率)を現在の1%から0.05%引き下げるため。利回りを下げると、契約者から従来より多い保険料をもらわないと保険会社の採算が悪くなるからだ。歴史的な低金利は国債での運用が基本の生保業界にとって重荷になっており、このままの水準が続けば、他社も保険料上げで追随する可能性がある。

こうしたニュースを見て、

「ふむふむ、最近の低金利の影響で、今の保険料では、割りが合わないから、貯蓄機能のある保険は売り止めか、または保険料を値上げしていくのかー。」

と即座に思った人もいることでしょう。

その方は、保険の仕組みについてある程度勉強されている方ですね。

保険というのは、10年以上の長期の契約が多く、契約者から払い込まれた保険料は、経費や保険金の支払いに充てられるほか、将来の保険金支払のために運用されています。その運用先には国債の割合も多く(2013年度末の生保全社の国債の割合は42.7%)、最近の低金利の影響で、保険会社の運用収益もかなり厳しくなっているというのは想像がつくでしょう。

しかし、そこで、「保険料が値上がりしないうちに、加入しなくちゃ」などと安易に動いてしまうのは短絡的です。世の中の動きは早く、行動するならすぐに思う気持ちもわかりますが、目の前の数字やここ数か月の動きに踊らされてしまうと、保険は長い期間にわたる分、足かせになるリスクもあるのです。

ご自身の目線でじっくりと保険と付き合っていくために、次のように「循環」の視点を日常生活の中で取り入れてみてはいかがでしょうか。

目次

保険は世の中でお金が「循環」する一つの手段

保険は、自分の生死など万一に関してお金が動くように契約するものですよね。まず、保険商品を提供する保険会社をみて、「この保険会社に保険料を納めると、そのお金はどう使われていくのだろうか?」と想像します。

これが、お金の流れの先を読む「循環」の思考です。

お金の行き先を大きく3つに分類すると、

  1. 目の前で熱心に説明してくれる営業担当者への手数料や、保険会社の人件費や物件費
  2. 他の契約者の給付に回るお金、そして
  3. 保険会社が将来の保険金のために運用して殖やしてくれる部分があります。

この3番目の運用の部分が、最近の国債の利回り低下の影響で、今の前提のままでは、将来の保険金の財源を確保するのがなかなか大変な状況になっているわけです。この低金利問題は日本だけでなく、今や先進国国債の1/4がマイナス金利(日経ヴェリタス2/15~2/21 第362号)と言われているほど深い問題です。

日本だけではなく、世界中で今までの常識では考えられないような事態になっているのですから、ここで、私たちが目先の商品や保険料動向などで動いてしまうのが短絡的というのはおわかりいただけるのではないでしょうか?

将来の金利動向は、もはや誰も予想できません。資産運用の見通しはプロでも難しいといわれる時代になっています。ある意味、10年以上の契約で、払ったお金を当初の前提のまま固定させてしまうこと自体、これからの時代は慎重にすべきではないかと私は思います。

目先の数字などで商品が品薄になるから買いこむのではなく、自分の10年後20年後をイメージして、途中の変化に対応できるようにすることが大事です。貯蓄目的なら、保険に限定せず、幅広い金融商品から選んだり、保障目的なら、長期で組んで途中で減額したり、更新型でつないでいく方法もこれからはアリだと思っています。

参考

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この記事を書いた人

一般社団法人円流塾代表理事、STコンサルティング有限会社代表取締役。一橋大学卒業後、保険会社の企画部・主計部を経て1994年独立。CFP®、1 級ファイナンシャルプランニング技能士。約20年間、金融商品は扱わず、約3300件の家計を拝見してきた経験から、お客様の行動の癖や価値観に合わせた「美しいお金との付き合い方」を提供中。TV出演、著書多数。

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