高齢者への保険金支払い漏れをなくす安否確認。第一生命では過疎地をヤマトに依頼

生命保険、特に終身型の保険に入っていると、保険会社との付き合いは時には数十年に及ぶこともあります。終身保険や医療保険、がん保険、介護保険など、せっかく入った保険なのに、高齢になって加入していたことをすっかり忘れてしまったり、認知症などでわからなくなったり、中には亡くなってしまって請求していない、といったことも起こりえます。

保険料の支払いが続いている間は、少なくとも加入していることを自覚できるかもしれませんが、払い込みが満了した保険では忘れがちになることもあるようです。転居の連絡をしていない場合は、保険会社からの通知も届かなくなります。あるいは、入院や介護施設への入所などで連絡がつかないケースもあるでしょう。

家族が保険の内容を把握しているか、少なくとも保険に加入している事実を知っていれば問題はないのですが、そうでないケースもあります。

生命保険は請求があって初めて支払われるもののため、亡くなった方が家族も知らない保険に入っていたとしても、請求がなされず、保険会社の立場で見ると「支払い漏れ」が起こります。一部の保険会社の実態調査で支払い漏れが認められたことから、昨年度、多くの保険会社が一斉に社内の高齢者の安否確認などを行いました。当初は90歳以上が対象で始まったもの、現在は70歳以上で行う会社も増えたようです。

結果が気になるところですが、生保協会に聞いたところ、「現在、高齢者への支払い漏れの実態を各社にアンケート調査中です。夏前にはとりまとめ、発表する予定」とのことでした。発表を待ちましょう。

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第一生命がヤマト配達網で安否確認

生保協会は、昨年11月、高齢者が保険に加入するときや契約を継続するとき、手続発生時などに適切な対応を行うための「高齢者向けの生命保険サービスに関するガイドライン」をまとめ、公表しました。

この中の「契約継続時の対応」では、『通知物等を通じて連絡先等のお客様の状況が変化していないか継続的な確認を実施する』ことが、また、「手続き発生時・手続時の対応」でも『通知物の不達状況や電話の受信・発信状況等を活用し、契約者等との連絡先や税損の状況をフォローする』ことが、『望ましい』とうたわれています。

保険会社によっては、営業職員や代理店が担当する契約を年1回は訪問することを目指してきた会社もありますが、中には、富国生命のように70歳以上の契約者については訪問を義務化する保険会社も出始めています。

しかし、現実問題として、70歳以上の契約者全員を訪問することが本当にできるのかという疑問は残っていました。そんな時にこんなニュースが飛び込んできました。

第一生命、保険金支払い確実に ヤマトが安否確認

第一生命には約4万人の営業職員がおり、契約者との連絡を担当している。しかし、営業拠点がない約20の離島に、高齢者を含め約7,000人の契約者がいて、契約者の安否確認を行う上で問題となっていた。そのためこの4月より、同社はヤマト運輸と提携し、宅配サービスを使った保険契約者の安否確認を行うことを発表した。

具体的には、第一生命はヤマト運輸の配達網を使って保険の案内書類等を配送し、ヤマトの配達員が契約者本人に手渡すことで本人の安否確認を行う。契約者が亡くなっていたり、入院や介護施設へ入所する等で長期に不在となる場合は、ヤマトの配達員の情報をもとに、第一生命が対応に動く、という流れになる。

ちなみに、ヤマト運輸では、一部の自治体と連携して独居高齢者の見守り支援などを行う「プロジェクトG(=Government)」に取り組んできましたが、民間企業との提携は初めのことだそうです。

営業職員のマンパワーで不足する部分を、得意とする企業にアウトソースして補うということは、非常に合理的な方法だと思われます。もしかすると、今後、過疎地の契約者の安否確認を補う形で、他の保険会社にも広がる可能性があるかもしれません。

契約者側にも自覚が必要

保険会社の中には、契約内容の詳細を契約者本人だけでなく家族にも伝えるサービスとして「家族登録制度」を始めた会社もあります。高齢期の保険の支払い漏れをなくす努力を今後もしていくでしょうし、それは当然のことだと思いますが、一方で、契約者側も自覚を持つことが大事です。請求する事由に該当したら請求できるように、自衛策もとっておきたいもの。

その方法としては、契約者や受取人に何かあった場合の代理人を指定しておく「指定代理請求人」を利用することや、家族に加入している保険を告げておくことが挙げられます。また、引越したら保険会社への手続きを忘れずに行いましょう。他にも、意思能力を失ったときでも保険金請求などの手続きができるよう、「成年後見制度」について知っておきましょう。

高齢の両親や祖母がいる方は、家族が加入している保険の概要を聞いておくと安心です。

参考

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この記事を書いた人

経済誌・経営誌などのライターを経て、1994年より独立系ファイナンシャル・プランナー。FPラウンジ 代表。個人相談やセミナー講師の他、書籍・雑誌の記事や記事監修などを行っている。95年、保険商品の全社比較を企画・実行して話題に。「保険と人生のほどよい距離感」をモットーに保険相談に臨んでいる。ライフワークとして大人や子どもの金銭教育にも携わっている。座右の銘は「今日も未来もハッピーに」。

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