大手生命保険会社の増配相次ぐ!・・契約者配当に期待して保険に入る?!

2015年3月期決算で個人保険の契約者配当を増やす大手保険会社が相次いでいます。日本生命は7年ぶりの増配を発表し、第一生命、明治安田生命、住友生命なども契約者配当を増やす方針です。

近年の株価の上昇や円安の影響で保険会社の運用収益が改善していることを背景に、利益の一部を保険契約者に還元する動きが広がっています。

この「契約者配当金」はどんな仕組みになっているのでしょうか?また、株式投資のように配当収入を期待して保険に入る意味はあるのでしょうか?

目次

生命保険の配当は、株式の配当金とは仕組みが違う!

「利益の一部を還元する」ことは同じでも、生命保険の契約者配当と株式の配当金は、仕組みが大きく異なります。

株式の配当金は、企業が前期にあげた利益の中から「1株あたりの配当金○◯円」と決め、株主総会を経て株主に支払うものです。保有株数が多いほどたくさんの配当金を受け取ることができます。1年間で受け取れる配当金の総額は、「保有株数☓1株あたりの配当金の額」という簡単な計算式で求めることができるため、株主にとってはシンプルでわかりやすい仕組みだと言えるでしょう。

いっぽう、生命保険の契約者配当は、保険会社が契約時に契約者に約束した“予定”よりも利益(余剰金)が上がった場合にその利益(余剰金)の一部が払われるものです。

”予定”とは、「予定利率」、「予定事業費率」、「予定死亡率」の3つで、保険契約者が毎月支払う保険料は、この「予定率」をもとに決まります。

【予定率の概要と保険料の関係】

予定率概要保険料が高くなるケース
予定利率資産運用による予想収益率低いとき
予定事業費率保険の事業運営を行う上で想定される経費の比率高いとき
予定死亡率性別や年齢等によって予測される死亡者数の比率高いとき

保険会社が契約者から預かった保険料を、契約時の「予定利率」より高い利回りで運用できた場合や、事業運営経費が「予定事業費率」よりも低かった場合、また、「予定死亡率」が実際の死亡率が低かった場合には、利益(余剰金)が生じます。この利益の一部を契約者に分配するものが、契約者配当です。

近年、生命保険会社大手が増配する主な理由は、運用環境が改善し、予定利率を超えた運用実績が上がるようになったからです。ただ、保険契約者全員が、増配の恩恵にあずかれるわけではありません。というのも、予定利率は、契約時の経済環境によって異なります。また、予定死亡率も性別や年齢によって違います。また、終身保険や定期保険など、保険の種類によっても異なるからです。

つまり、生命保険の契約者配当は、株の配当金のようなシンプルな仕組みにはなっていないのです。

契約者配当を受け取ることで、株式投資や外貨など値動きのある資産への投資をしていない人も、間接的に株高、円安の恩恵を享受することになりますが、契約者配当を目的に生命保険に入るというのは、いかがなものでしょうか?生命保険の主要な目的はやはり、万が一のときのリスクに備える「保障」ではないでしょうか?

近年契約数を伸ばしてきた「無配当保険」

近年、主に外資系や損保系の生命保険会社が契約数を伸ばしてきた生命保険は、無配当にする代わりに保険料水準を割安にして、契約者の家計負担を抑えた商品、「無配当保険」です。長く続いた不景気の中で、少しでも家計を節約しつつ暮らしのリスクにも備えたいという生活者のニーズを捉えた保険です。

これから保険に入ろうとするときは、契約者配当が払われる「有配当保険」か、あるいは、配当を払わない「無配当保険」かを確認し、併せて保険料水準もしっかりとチェックして検討してほしいものです。

また、現在入っている「有配当保険」を見直す際には、残りの保険期間が何年あるかなどを確認するとよいでしょう。新しい保険に契約し直すよりも現在の保険を継続したほうが負担が少ない場合もあります。

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

FPオフィス ワーク・ワークス代表。大学卒業後、ベネッセ・コーポレーションを経て2003年にFPとして独立。CFP®、1級ファイナンシャルプランニング技能士。「暮らしの『お金』の不安の解消!」、「いまも満足でき、将来も安心できる家計づくり」の方法をお客様にアドバイス。個人相談の件数は1,500件超。他に、雑誌やWebへのコラム執筆、取材協力、セミナー講師などの活動をしている。一般の生活者に向けてメルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。

目次
閉じる