公的年金保険料の運用悪化で年金が減額?!今から打てる手とは?

今年に入ってからの株価の乱高下で損失を被っている人もいるでしょう。私たちの公的年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も、その1人(1機関)です。運用損が生じた場合、安陪首相は、年金の減額もあり得るとの認識を示しました。

年金給付減額あり得る

《要約》2月15日の衆議院予算委員会で、民主党(3月23日現在)の玉木雄一郎氏が「株価が下落して、GPIFの運用が悪化したときは年金減額はあり得るのか」との質問に、安陪首相は「想定の利益が出ないなら当然支払いに影響する。給付に耐える状況にない場合は、給付で調整するしかない」と答弁。運用次第で、将来、年金減額もあり得ると認めた。ただ、首相は「運用は長いスパンで見るから、その時々の損益が直ちに年金額に反映されるわけではない」とも強調した。

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運用の損失を年金減で穴埋めするのは理不尽!

予算委員会で質問した玉木氏のブログによると、「新しいポートフォリオの下で想定される最大の損失額は約21.5兆円に拡大」しているそうです。この損失額の数字も驚きですが、損失を出しても誰も責任をとらないしくみになっていることも驚きです。

公的年金は、働いて収入が得られなくなる老後の生活費の柱となる重要な制度です。私たちから集めた保険料を運用した結果、損失が出たら、その穴を年金の減額で埋めるなんて、理不尽以外の何物でもないですね。危ない運用をしてくれなんて、国民の誰一人として頼んでいないのに。それに、少子超高齢化で年金が減っていくのは目に見えているのに、これ以上、年金が減るような要因は作らないで欲しいものです。

公的年金の将来に不安を抱いている若い人は多く、「私たちは保険料を取られる一方で、老後に年金はもらえないんですよね」と言う声をよく聞きます。それに対して、私は、「全くもらえないってことはないと思うけど、今の高齢者がもらっている年金水準よりは少なくなるでしょうね」と答えています。要は、若い人の老後資金作りは、ますます、自助努力と自己責任が求められるということです。

そのことは、若い人は感じていて、その手段として、民間保険会社の個人年金保険に注目する人が多いようです。

生命保険協会が提言する『長寿安心年金』とは?

日本人の平均寿命は延び続け、90歳超えは珍しくない時代になりました。何歳で死ぬのかは誰にも予想できないので、老後資金準備に個人年金保険を利用するならば、年金の給付タイプは公的年金と同じ終身型にすべきです。

しかし、平均寿命の延びと歴史的な低金利が続き、保険会社は終身型に高い利回りを設定できなくなっています。つまり、保険料を高くせざるを得ないということ。そのため、終身型の取り扱いをやめた保険会社や、取り扱っていても保険料が高すぎて選べないのが現状です。結果、5年・10年といった確定年金を選ぶ人がほとんどです。これでは、老後の一定期間の公的年金を補完することしかできません。

こんな時代背景を受けて、生命保険協会は、今年2月、「安心社会を実現するための社会保障制度の構築に向けて-公的年金を補完する『長寿安心年金』の創設-」と題した社会保障制度改革に関する提言をしました。

この提言の目玉は、『長寿安心年金』の創設です。

長寿安心年金は、公的年金を補完する位置づけで、個人年金保険とは趣を異にした年金です。商品の基本設計は、(1)保険料の払込は20歳~60歳まで、(2)支給開始は65歳から、(3)給付は終身、(4)一定額の年金給付を保証、(5)本人死亡で年金停止、(6)加入できるのは国民年金・厚生年金に入っている人(国民年金の未納者や免除者は加入不可)、(7)積立金の中途引き出し可、(8)加入を促すためのインセンティブとして国が保険料の一部を補助する、です。

国民年金と同じところは(1)~(5)、違うのは(7)と(8)です。決定的な違いは、公的年金は今の高齢者がもらっている年金は現役世代が払っている保険料ですが(賦課方式=世代間扶養)、長寿安心年金は自分の老後への仕送り(積立方式)であることでしょう。

長寿安心年金が導入されると、私たち国民には老後資金作りの一手段ができる、国は将来的に生活保護費を含めた公費負担が抑制できる、生命保険会社は保険料収入を増やせるという、三方まるく納まる制度になるとのこと。

果たして、実現するものやら、しないものやら…です。

生きていれば必ず訪れる老後のためにできる限りの手を打とう

仮に、長寿安心年金が導入されても、公的年金と合わせれば、老後資金は安心というわけではありません。公的年金の所得代替率(現役世代の平均手取り収入に対する年金受給額)は、将来的には、50%~40%程度、長寿安心年金は10%前後とのことなので、併せても現役時代の50%~60%です。老後は、現役時代に比べて生活費は少なくなりますが、ゆとり資金や介護・医療費を考えると、足りそうもありません。やはり、何らかの形で老後資金に備える必要があります。

老後資金は、介護・医療費用も含めて3000万円あれば大丈夫かもしれないし、5000万円あっても足りないかもしれない――という非常にやっかいな性質のお金です。その理由は、実際に死んでみないといくら必要だったか、わからないからです。

とはいえ、生きていれば必ず訪れる老後、そして、想像以上に長くなる可能性が高い老後ですから、できる限りの手を打っておきたいもの。その手には、いろいろあるでしょうけれど、とりあえず、以下の3つは心掛けて(覚悟して)いただいた方がよろしいかと思います。これは、すでに年金をもらっている人にも言えることです。

1.生涯現役で働く

今後、定年の年齢は徐々に延びていくでしょうけれど、定年で仕事とおさらばできるとは思わないで。生涯現役で働くつもりで、若いうちから、キャリアプランを考えておきましょう。

2.老後資金はコツコツ積み立てる

老後資金に限らず、お金を貯めるには、コツコツと積み立てるしかありません。まずは、元本割れのリスクのない安全な金融商品で積み立てを。個人年金保険を含む貯蓄性の保険は低金利の影響で魅力はなくなっているので、個人的にはおすすめしませんが、これらも選択肢に入れてもいいでしょう。

3.投資でお金を増やす

今とこれからは、普通に生活して、普通に積み立てをして老後資金を貯められる時代ではありません。老後資金の一部は投資することも必要です。ただ、リスクがつきものなので、その点を承知の上で臨んでください。

参考

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この記事を書いた人

1994年、ファイナンシャルプランナー資格取得。その後、独立系FPとして、長年にわたって携わってきた一般誌やムック、単行本などの編集・ライターの経験を活かし、マネー系記事の執筆・監修の他、セミナー講師として活動。最近は、終活や生前整理など、人生のしまい方にもフィールドを広げている。

複雑でわかりにくい保険や社会保障制度など、身の周りのお金に関する様々なコトを「わかりやすくひも解く」がモットー。

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