就業不能保険が急増?! 現役時代の第三の保険になるか?!

生命保険の就業不能保険は、ジャンルとしては昔からありましたが、目ぼしい商品がない時期が長らく続いていました。2010年にライフネット生命が「働く人への保険」を販売開始してから、2012年に東京海上日動あんしん生命が「家計保障定期保険 就業不能保障プラン」を、2015年に住友生命が「Wステージ 未来デザイン 1UP」を発売と徐々に増え始め、2016年に太陽生命が「働けなくなったときの保険」、アフラックが「給与サポート保険」、チューリッヒ生命が「くらすプラス」を発売し、ようやく1つの商品ジャンルとしてかたまりつつあります。

今後も、同種の保険・特約が増えるかどうかはわかりませが、現在、発売されている6商品のスペックとチェックポイントをまとめました。

就業不能に備える保険広がる

《要約》重い病気やケガなどで働くことができず、長期にわたって収入が途絶えるリスクを保障する保険商品が増えてきた。(中略)死亡保険などに比べて商品設計は複雑で、保険金が出る具体的な条件などをよく確かめて契約する必要がある。

目次

傷病による収入減や身体障害には社会保障があるけれど…

死亡したり、死亡に準じるような重い障害が残ったときの備えは死亡保障の保険・特約で、入院・手術をした際の保障は医療保険・特約で準備できます。しかし、医療保険・特約の1入院の保障限度日数は60日が一般的で、これを超えて入院が長引いたり、退院しても仕事復帰できるまでに時間がかかることがあります。また、障害が残って仕事ができなくなることも。そうなると、短期間か長期間かは別にして、働いて収入を得られなくなります。

傷病による収入減や身体障害には、社会保障が存在します。会社員であれば、傷病で仕事を休んだ期間(自宅などでの療養含む)は、公的健康保険から傷病手当金が最長1年6か月まで出ます(休み始めてから3日間は待期期間)。1年6か月を過ぎても働けないときは無収入になります。自営・自由業者などが加入する国民健康保険には傷病手当金はないので、即、無収入です。一方、障害が残って公的年金の障害年金1・2級に該当すると障害年金がもらえるようになります。

いずれにしても、社会保障だけでは、それまでの生活を維持するのは難しいでしょう。貯蓄を取り崩して生活するにしても、貯蓄が底をついたらおしまいです。こんな状態は、死ぬよりリスクが高いかもしれません。

就業不能保険・特約は、そんな、これまでの生命保険の保障の隙間を埋めて社会保障の上乗せをしてくれる保険です。

免責期間・支払い条件・給付限度をチェック!

現在、就業不能保険・特約は6つです。a)単体で加入できる保険と、b)特約をセットしたプラン、c)他の保険とセットでなければ加入できない保険があります。

a)はライフネット生命とアフラック、b)は住友生命と東京海上日動あんしん生命、c)はチューリッヒ、太陽生命です。それぞれのスペックは下表を見てください。

■就業不能保険・特約のスペック一覧
 単体で加入できる特約・セットプラン
会社名ライフネット生命アフラック住友生命東京海上日動あんしん生命チューリッヒ生命太陽生命
商品名就業不能保険 
働く人への保険2
病気やケガで働けなくなったときの給与サポート保険Wステージ 未来デザイン 1UP
(生活障害収入保障特約)
家計保障定期保険
就業不能保障プラン
働けなくなったときの生活保障保険
くらすプラス
保険組曲Best
働けなくなったときの保険
保険期間55・60・65・70歳60・65歳64歳主契約の保障期間満了まで終身(ストレス性疾病保障付就業不能保障特約は60歳)10年(65歳満了)
免責期間60日・180日60日なし(介護は180日)60日(介護は180日)60日30日(介護は要介護2以上など)
支払条件入院または在宅療養入院または在宅療養a)就労不能・介護年金(基本年金額)=障害年金1・2級認定、所定の就労不能状態など
b)就労不能・介護保障充実給付金=所定の要介護状態
c)特定障害給付金=精神障害で障害年金1・2級認定、180日以上継続入院
がん・急性心筋梗塞・脳卒中・肝硬変・慢性腎不全で入院または就業不能状態、所定要介護状態180日超継続がん・急性心筋梗塞・脳卒中・肝硬変・慢性腎不全で60日超の入院、または、就業不能状態、所定のストレス性疾病で60日超の入院などがん・急性心筋梗塞・脳卒中・災害によるケガで入院または就業不能状態、要介護2以上認定など
給付金額月10万~50万円で5万円単位月5万~40万円(職業で異なる)、無事故支払金ありa)基本年金額×生存の限り(64歳まで)
b)基本年金額×20%(最高5回・通算10回分
c)基本年金額×3年分(1回のみ
月額で設定・入院61日目から180日目まで、入院給付金日額5000円(1入院120日
・通算1095日限度)
・月額10万円
月額で設定
給付限度額・年齢就業不能状態が継続する限り、保険期間が満了するまで支払い開始後、6か月間は職場復帰しても支払われる。7か月目以降は就労困難状態が継続する限り、保険期間満了まで生存の限り64歳まで(最低支払保証期間5年)5年間(最低支払保証2年・5年から選択)年金受取期間5年(受取総額600万円)・
10年(受取総額1200万円)から選択
65歳まで(最低支払保証期間5年・10年から選択)

※2016年8月28日現在の各社ホームページの情報をもとに筆者作成。
※情報は一部です。詳細は各社HPをご覧ください。

各商品のスペックをまとめてみて感じたことは、開発担当者がシンプルさを追求したという保険ですら、複雑だということでした。これまで、手つかずのリスクを埋める商品という点では評価しますが、とにかく、わかりにくい!

それはさておき、スペックの中でチェックポイントとなるところは、筆者は、免責期間・支払い条件・給付限度の3点と考えます。

免責期間は、「なし」「30日」「60日」「60日と180日から選択」がありますが、短ければいいというものではなさそうです。上表にまとめたようにけっこう厳しい条件がついているからです。医療保険・特約に加入していれば入院給付金は60日まで出ますから、60日免責で十分でしょう。

支払い条件は、この保険・特約のキモともいえる部分で、各社の個性といいますか、スタンスが表れているような気がします。

ライフネット生命とアフラックは免責期間を超えて入院または在宅療養を条件としています。ともに、傷病の種類は問いませんが、精神疾患は対象外です。妊娠・出産などはライフネット生命は保障対象で、アフラックは対象外と、対応が分かれています。住友生命も傷病は問わず、精神障害、要介護状態も保障対象です。

特定の病気や状態を給付条件にしているのはチューリッヒ生命、東京海上日動あんしん生命、太陽生命で、3大疾病や5大疾病、要介護などです。チューリッヒ生命はストレス性と断っていますが、精神疾患も保障対象です。

支払い条件については、当然ではありますが、どの商品もそう簡単には給付対象にしていません。就業不能が長引きそうな病気や状態がカバーされていればいいでしょう。

給付限度は、チューリッヒ生命以外は現役時代をカバーしているのでよしとできます。

なお、がんで働きながら通院治療を受けるというシーンは、就業不能状態とは言えないので、この種の保険・特約は機能しません。

保険料については、スペックがこれだけバラバラだと条件を揃えられないので比較はしませんでした。

就業不能保険・特約は、現役時代に必要な第三の保険(第一は死亡、第二は医療)になるかもしれないので、就業不能リスクが高いと考える人は加入を検討してもいいでしょう。ただし、追加負担できる保険料を見極めて商品を選んでください。

参考

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この記事を書いた人

1994年、ファイナンシャルプランナー資格取得。その後、独立系FPとして、長年にわたって携わってきた一般誌やムック、単行本などの編集・ライターの経験を活かし、マネー系記事の執筆・監修の他、セミナー講師として活動。最近は、終活や生前整理など、人生のしまい方にもフィールドを広げている。

複雑でわかりにくい保険や社会保障制度など、身の周りのお金に関する様々なコトを「わかりやすくひも解く」がモットー。

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