こんなところにも発見! ダブってませんか個人賠償責任保険

近年、高額自転車事故が相次いだことで注目され、さらに、JR東海認知症事故の最高裁の判決が出て以来、多くの人に「世帯ごとに必ず入っておくべき保険」として認識された感のある個人賠償責任保険。必ず入っておきたい補償ではあるものの、一家で何本もダブって入ってもムダになります。意外なところで入っていることもある個人賠償責任保険を、1本に絞る際のポイントなどを整理してきましょう。

目次

個人賠償責任保険とは?

個人賠償責任保険(特約)については、過去の記事(「親の認知症事故に備えられる? 個人賠償責任保険の実力」https://hokensc.jp/news/20170127/)でも書きましたが、世帯ごとで必ず入っておきたい補償です。

念のためおさらいをしておきます。個人賠償責任保険は、誤って他人にケガをさせたり、他人のモノを壊したなど、事故による身体の障害や財物の損壊で法的な賠償請求を受けたときの補償です。洗濯機の排水ホースが外れて階下の部屋まで漏水した、飼い犬が人に噛みついてケガをさせた、自転車で人にぶつかってケガをさせた、子どもがキャッチボールしていて誤って人の家のガラスを割ったなど、様々なケースで補償されます。ただし、プライバシー侵害や名誉棄損などは該当しないため、法律上の損害賠償責任を負ったとしても補償対象外です。

個人賠償責任保険で補償される損害や費用は、被害者に対する損害賠償金(治療費、修理費、慰謝料など)だけでなく、弁護士費用や、訴訟等になったときにかかる費用なども対象です。いざというときに頼りになる補償であるのに、保険料は年千数百円~2千数百円程度でつけられるというのも大きな特徴です。

個人賠償責任保険で補償されない免責事項もあります。それは次のようなものです。

《免責事項》

  • 契約者や被保険者、またはその法定代理人による故意の事故
  • 戦争や内乱
  • 地震や噴火、津波
  • 核燃料による汚染、放射能汚染
  • 環境汚染に起因する事故 ほか

そのほかにも次のようなものは補償対象外です。

《補償されないもの》

  • 自分の所有する財物の損壊
  • 同居の親族に対する賠償責任
  • 使用人に対する損害賠償
  • 仕事中の賠償事故
  • 被保険者の心身喪失に起因する損害賠償
  • 同居の親族に対する損害賠償
  • 航空機、船舶、車両(船舶・航空機等も)、銃器の所有・使用・管理による損害賠償など

なお、1本の個人賠償責任保険で補償対象となる人は、次のいずれかに該当する人です。

  1. 本人(記名被保険者)
  2. 配偶者
  3. 本人または配偶者の同居の親族
  4. 本人または配偶者の別居の未婚の子(仕送りを受けている学生など) 
  5. 本人が未成年者または責任無能力者の場合、2~4に該当しない本人の親権者や法定監督義務者、および監督義務者に代わって本人を監督する者(親族に限る)。ただし、本人に関する事故に限る。
  6. 2~4のいずれかの人が責任無能力者である場合、いずれにも該当しない親権者、その他の法定監督義務者、および監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者(その責任無能力者の親族に限る)。ただし、その責任無能力者に関する事故に限る

強調した部分が、JR東海認知症事故の最高裁判決などを受けて、主な保険会社で約款を改定した部分です。このほか、東京海上日動火災保険では、同性パートナーを個人賠償責任保険の範囲に加えるなどの変化も見られます。

ただし、改定後の個人賠償責任保険の内容になるのは、改定後に更新した契約か、新規加入をして新しい特約を付けた場合に限られることに注意しましょう。

こんなところに個人賠償責任保険が!

個人的な話で恐縮ですが、今年の2月頃、個人賠償責任保険をどうにかしなくてはと思っていました。それまでは息子の大学在学中の団体傷害保険に1億円の個人賠償責任保険が付いていたので、火災保険には個人賠償責任保険を付けずに加入したようなのです(たぶん。後で見たら付いていませんでした)。車はないので自動車保険もなく、現在は傷害保険にも入っておらず、スポーツ系の保険や自転車保険にも入っていません。

そのため、息子が卒業するとわが家に個人賠償責任補償がなくなってしまう!と少々焦った時期もありました。付帯でついているか保険料を負担して入れるクレジットカードを新たに作るか、単体で入れる個人賠償責任保険を探すか。いろいろと調べているうちに、結果としては、元々わが家にはついていたことが確認できたのです。新しく加入して、補償をダブらせる前に気づいてよかったです。

これも確認ですが、個人賠償責任保険は特約として、様々な保険(損害保険)についています。ついている可能性があるものは次のような保険等です。こうしたものに入っていてダブりがないか、1度チェックをしてみてくださいね。

《個人賠償責任保険がついているかも》

  • 自動車保険
  • 火災保険(持ち家の人が自分で入るもの)
  • マンションの管理組合で加入している共有部分の火災保険
  • 賃借人向け火災保険
  • 傷害保険(学生の団体保険なども含む)
  • ゴルファー保険などスポーツ系の保険
  • ボランティア保険
  • 共済(都道府県民共済やCO・OP共済「たすけあい」など)
  • クレジットカードの任意加入サービス(有料)(三井住友VISAカード、JCB、イオンカード、エポスカード、セゾンカード)
  • 自転車保険
  • ヤフーWallet利用者専用ちょこっと保険「ご家族まるごと損害賠償プラン」(小口の傷害保険+個人賠償責任保険)

実は私が見落としていたのは、自分が住んでいるマンションの管理組合で加入している共有部分の火災保険でした。この保険に、持ち家の人の分も賃貸の人の分も、全員分の個人賠償責任保険が1億円ずつついていたのでした。何年もノーマークでした。

ということで、わが家では個人賠償責任保険に新たに入る必要はないことが判明しました。ただし、すべてのマンションの共有部分の火災保険が同じ扱いというわけではありません。あくまでも管理組合の考え方によるようですので、管理人さんなどに確認してみましょう。賃貸の世帯まで対象になっているのであれば、入居契約のときに当然のように入る賃貸用の保険の方の個人賠諸責任保険をはずして入ることもできるかもしれません。

世帯によっては、重複している場合もあるでしょう。保険料が安い反面、重要な補償でもあるため、ダブってでもつけ漏れがない方がいいと考えがちなのかもしれません。中には、自動車保険や火災保険だけでなく、共有部分の火災保険や、上の子が入っている学生の団体保険、ママが入っているボランティア保険や共済など、下の子が学校で入った自転車保険と、世帯でいくつもの個人賠償責任保険がついていた、なんてことも珍しくはありません。安くても無駄な補償はやはり削減したいものですね。

補償のダブりはムダなので外しましょう、とはよく言われるものの、損保などでは、途中で外すことができないことがほとんどです(念のため確認を)。外すのであれば更新の機会に外すことになりますので、あらかじめ代理店などに相談しておくといいでしょう。

どれを残す?個人賠償責任保険選びのポイント

もしも前述のように複数の個人賠償責任保険に入っていた場合、その中でどれを残せばいいでしょう。個人賠償責任保険選びのポイントを整理しておきましょう。

まず1つは補償額ですが、個人賠償責任保険には、数千万円から3億円、または無制限で入れる場合もあります。最近は高額補償の事例も増えているため、少なくとも1億円は入っておきましょう。自動車保険だと無制限で入ることが多いはずで、一番の候補となりそう。

2つ目は、示談交渉サービスがついているかどうかです。最近は示談交渉サービス付きが主流になりつつありますが、ついていないものもあります。できるだけついているものを選びましょう。

3つ目は、できるならですが、前述のように約款が変わっていますので、選べるのであれば新しい約款のタイプがいいでしょう。

4つ目は、個人賠償責任保険の多くが国内限定ですが、中には海外での賠償事故にも対応できるものもあります。もしも海外にも頻繁に行く方であれば、保険料は少し高めになりますが、国内とも補償される商品を選ぶといいでしょう(海外の示談交渉はなし)。イオンカード「日常生活賠償プランCコース」(有料)や、損保ジャパン日本興亜や東京海上日動の自動車保険ほかが該当します。

5つ目は保険料です。同程度の補償でも中にはやや高めのものがあります。最終的には、保険料も含めて比較しましょう。

最後に注意すべきことが1つ。家族を守る重要な保険ですから、補償の漏れを起こさないように気を付けましょう。入っていた保険で個人賠償責任保険をカバーしていたのに、うっかりその保険を辞めてしまい、補償が漏れてしまうようなことは避けたいもの。そうならないように、保険リストを作成してメモをするなど、注意しましょう。

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この記事を書いた人

経済誌・経営誌などのライターを経て、1994年より独立系ファイナンシャル・プランナー。FPラウンジ 代表。個人相談やセミナー講師の他、書籍・雑誌の記事や記事監修などを行っている。95年、保険商品の全社比較を企画・実行して話題に。「保険と人生のほどよい距離感」をモットーに保険相談に臨んでいる。ライフワークとして大人や子どもの金銭教育にも携わっている。座右の銘は「今日も未来もハッピーに」。

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