進化を遂げる認知症保険!予防・MCIから保障する商品も登場。

「人生100年時代」に入り、長生きのお年寄りが増えています。それに伴って、認知症高齢者が確実に増えていくでしょうから、他人事とは思わず、一人ひとりが介助・介護費用の準備をしておいた方がいいかもしれません。

認知症でかかる費用もカバーできるくらい老後資金を貯められる見込みのある人はいいですが、そうではない人は、保険でカバーする手も。認知症に特化した保険が進化しています。どう進化したのか見てみましょう

認知症保険、予防に重点

《要約》認知症になったときの経済的な負担に備える「認知症保険」で、予防や早期発見に主眼を置く新商品が相次いで登場している。(略)

目次

進化系の認知症保険は給付条件が拡大している

2013年の厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、公的介護保険で要介護認定者(要介護1~5)になった原因の第1位は脳血管疾患(21.7%)、2位は認知症(21.4%)で拮抗していました。それが、2016年の同調査では、1位は認知症(24.8%)、2位は脳血管疾患(18.4%)と、わずか3年で逆転してしまいました。

こんな時代を反映してでしょう、2016年3月に太陽生命が認知症の保障にスポットを当てた初の認知症保険「ひまわり認知症治療保険」を発売して注目されました。同年4月に朝日生命が「あんしん介護 認知症保険」を、2017年7月にメットライフ生命が「終身認知症診断一時金特約」、2018年4月にフコクしんらい生命が「認知症診断給付金付 介護保障定期保険特約」と、認知症保険・特約が相次いで発売されました。これら保険・特約の保障対処となる認知症は主に器質性認知症です。

太陽生命と朝日生命の認知症保険の給付条件は、認知症と診断されただけでは条件を満たさず、「意識障害のない状態において見当識障害があると診断確定され、その状態が180日継続したとき」、「要介護1以上、かつ、所定の認知症と認定されたとき」の+αの状態要件がありますが、メットライフ生命とフコクしんらい生命の特約は180日や90日の免責期間はあるものの「診断確定」で給付されます。徐々に、給付条件が拡大されている、つまり、進化している様子が見てとれます。

そして、今年、2018年10月、その流れをくむ介護保険が2つ発売されました。太陽生命の「ひまわり認知症予防保険」、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命の「笑顔をまもる認知症保険」です。

「ひまわり認知症予防保険」の発売に伴って、「ひまわり認知症治療保険」は発売停止されました。治療保険から予防保険へと装いを新たにしたわけです。

では、2つの保険は、どのように進化したのか見てみましょう。

予防給付金をMCIスクリーニング検査に使える

「ひまわり認知症予防保険」は、引受基準を緩和した保険で、認知症予防・認知症・死亡の3つの保障をセットしたものです。

この保険の最大の特徴は、認知症予防の保障で、契約してから1年後、その後は2年ごとに「予防給付金」が受け取れることです。この給付金を、認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)の発症リスクを調べる「スクリーニング検査」の費用に使ってもらおうというもの(検査を受けるのは義務ではない)。定期的に検査を受けてもらうことで早期発見し、予防・改善の対策をとれます。

検査を受けた後、同社の認知症予防に関するアンケートに回答すると、検査結果がA・B判定(MCIリスクは低め)の人は5,000円、C・D判定(MCIリスクが中程度から高め)の人は、20,000円の謝礼がもらえます。これは、予防給付金とは別です。

認知症の保障には、認知症と診断されると認知症診断保険金が、その後、所定の状態が180日継続すると認知症治療給付金が受け取れます。

3つの保障以外に、入院給付金、入院一時金、手術・放射線治療、骨折の保障もつけられます。

これら給付金、死亡保険金は、契約後1年間は半額に削減されます(災害死亡保険金除く)。

MCIの診断で基準一時金額の5%が受け取れる

「笑顔をまもる認知症保険」は、主契約の災害死亡・骨折治療に、認知症一時金特約(軽度認知障害・認知症の保障あり)をセットした保険です。これも、引受基準を緩和した保険で、認知症一時金特約の保障がスタートするまで180日の免責期間があります。

この保険の特徴は、保障スタート後、MCIと診断確定されると基準一時金額(認知症一時金額)の5%が受け取れること。この一時金を、改善のために使ってもらおうということです。ただ、基準一時金額が100万円で、MCI診断確定で受け取れるのは5万円ですから、どの程度、役に立つかは微妙ですが。

その後、初めて認知症と診断確定されると残りの95%が、MCIを経ずにいきなり認知症と診断確定されると100%の認知症一時金が受け取れます。

他に、介護一時金特約、介護年金特約、保険料免除特約をつけられます。

発売してから2カ月ほどたちますが、加入者の約80%が50代以上、男女の構成比はほぼ半々だそうです。

2018年12月18日、第一生命が大手生保初の認知症保険「かんたん告知 認知症保険」を発売しました。この保険も、引受基準を緩和したタイプで、認知症と診断され、公的介護保険の要介護1以上認定が有効であるという2つの要件に該当すると一時金が受け取れるというものです。ただし、契約日から2年以内に2つの要件に該当しても、払い込んだ保険料が戻るだけです。

給付条件は、診断確定+要介護1以上なので、上記2つの認知症保険より、やや後戻りした印象です。

なお、認知症保険には、認知症に関する各種サービスが付帯していることが多いのですが、今回はサービスについては触れませんでした。

認知症保険・特約は数が増えて選択肢が広がってきましたが、心配になるのはおおむね50代以降なので、保険料は決して安くはありません。終身保障タイプは終身払いしかない保険もあり、その保険料を払い続けられるかで、加入するかどうか、加入するとしたら加入プラン(認知症以外の保障をつけるかなど)をどうするか考えるといいでしょう。

参考

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この記事を書いた人

1994年、ファイナンシャルプランナー資格取得。その後、独立系FPとして、長年にわたって携わってきた一般誌やムック、単行本などの編集・ライターの経験を活かし、マネー系記事の執筆・監修の他、セミナー講師として活動。最近は、終活や生前整理など、人生のしまい方にもフィールドを広げている。

複雑でわかりにくい保険や社会保障制度など、身の周りのお金に関する様々なコトを「わかりやすくひも解く」がモットー。

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