最新テクノロジーを活用した保険商品の開発や販売と世界のFintech事情

以前、Fintechの例として、大手保険会社がコールセンターで導入するAIに触れましたが(ご参考;人工知能(AI)の導入でどう変わる? 保険の支払い査定やコールセンター対応)、最近は、あらゆるモノがネットとつながるIoT化、技術の進歩と消費者のビッグデータ分析によるデジタル化が日本の保険会社や代理店でも導入されつつあります。

住友生命・ソフトバンク、保険開発で提携発表

《要約》住友生命保険はソフトバンクと提携し、IoTを活用した健康増進型の保険を2018年に商品化する。ソフトバンクの情報通信技術で歩数などのデータを集めて健康への取り組みを点数化し、その数に応じて翌年の保険料を最大3割安くしたり、割高にしたりする。保険料の算出では、南アフリカの保険会社ディスカバリーから国内の独占使用権を獲得。通常の死亡保険や医療保険に上乗せする内容で、販売は住友生命の営業職員が行う。

これらの動きは、私たちにどんな影響があるのでしょうか? また、日本と世界の動きには違いがあるのでしょうか? ちょっと気になる情報を元に以下、整理してみました。

※略語や横文字も増えてきたので、以下、ご参考ください。

  • IoT・・・Internet of Thingsの略。コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、あらゆるモノがインターネットとつながって、大量の情報データのやり取りが可能になること。
  • デジタル化・・・従来はペーパーレス化、ネット販売、データ分析が断片的に進められてきたが、最近はセンサー技術の進歩などから、すべての個人の行動をデータ分析することが可能になっていること。デジタル化がビジネス戦略に大きく影響すると言われている。
  • Fintech ・・・Finance(ファイナンス)とTechnology(テクノロジー)が組み合わせられた造語。

IoT活用に関する2つの傾向 

(1)契約後の保険料も契約者の行動と密接につながる商品

健康を反映した保険商品というのは、上記のニュースが初ではありません。従来から、タバコを吸わない人向けの非喫煙割引や健康優良体割引などがあり、私も活用していす。しかし、それらは契約時の審査でその後の保険料も決まってくるというものでした。

それが最近は、上記に挙げたように、IoTを活用して契約後の健康増進の行動まで把握し、翌年の保険料に影響する商品に進化しています。上記の内容は、健康増進意識を高めるという意味から「なるほど・・・」と思いましたが、販売する際に従来商品の上乗せになる点、従来のように営業職員が扱う点で、まだ既存の枠組みの延長のようです。IoTを活かすなら、契約時やその後の顧客との接点まで、トータルで活かせる仕組みを期待したいと思います。

なお、健康増進目的のIoT活用保険という意味では、他社でも以下のような動きがあります。

・健康年齢少額短期保険

(株)日本医療データセンターが蓄積する医療ビッグデータをもとに開発された健康年齢という指標で保険料が決まります。Web上で一般的な健康診断の12項目から保険料が算出でき、私(50歳)は健康診断で子宮などに要観察項目があるのですが、健康年齢は38歳でした。持病があっても健康年齢が算出できれば入れるのはわかりやすいが、保険料が毎年見直されるので、仮に予想以上の負担になると継続率が下がる問題が残るでしょう。

・ネオファースト生命の「健康年齢®」を使用した生命保険商品

(株)日本医療データセンターと「健康年齢®」を使用した生命保険商品を共同検討。医療保険「ネオdeいりょう健康プロモート」は5年間健康状態を維持した場合、以後の保険料を割り引く仕組み。

(2)データを集めて保険料以外のサービスへ

また、IoTの活用として、保険商品の保険料に直結する形ではないものの、以下もあげられます。これはあくまで、保険契約者へのサポートとしてのサービスの位置づけでしょう。

  • 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命は、保険契約者の健康増進を支援する事業として、米Fitbit社製のウエアラブル端末を貸与することを検討。
  • 日本生命は、健康増進に取り組む保険契約者に商品交換などに使える独自のポイントを検討。買収する豪ナショナル・オーストラリア銀行の保険事業のノウハウを生かす予定。

今うかがえるFintechの3つの傾向

モノがネットとつながるIoT化にとどまらず、広く最新テクノロジーのFintechを活かした動きも見られます。現時点で大きく分けて、「コミュニケーション補完型」「スマホユーザーから窓口拡大型」「スマホの独自アプリから相談誘導型」が見られるようです。

(1)コミュニケーション補完型

既に報道発表があったコールセンターでのAI導入もこの分類に入りますが、最近では、以下の動きもあります。

・対面コミュニケーションの補完の「Pepper」(明治安田生命)

営業職員等によるコミュニケーションを補完する新たな仕組みとして、人型ロボット「Pepper」を全国すべての支社等のべ100台配置。新商品や各種サービスの情報提供のほか、利用者の職場等の出張による情報提供や各種イベントへの参加、地域貢献などをイメージしているとのこと。最近はセキュリティ上「職場」に入りにくくなっているので、職場出張「Pepper」は面白いと思いますが、生活者の次なる行動へつながるように活かすことが大事でしょう。

(2)スマホユーザーから窓口拡大型

既にKDDIがライフネット生命の代理店として保険販売をしていますが、最近では、以下のように、携帯ショップのスペースを活かした乗合代理店としての来店型保険ショップも登場しています。

・NTTドコモの来店型「ドコモでほけん相談」

日本生命などの生保8社と、損保として東京海上日動と計9社と代理店契約を締結し、ドコモショップで来店型「ドコモでほけん相談」を開始。まずはお金や保険に関する「ほけん無料セミナー」を開催し、個別相談へ促す流れで、一見、従来の保険ショップと同じやり方のようです。個人的には、むしろ、「ワンタイム保険」などのように携帯から入れる保険で独自商品開発を進めたほうが、よりオリジナリティや顧客の利便性が高まるのではないかと思っています。

(3)スマホの独自アプリから保険相談の誘導型

・保険乗合代理店が開発したアプリ「保デジ」

保険をデジタル化というコンセプトで、スマホユーザーが自分に合った生命保険を比較して見直すことができるアプリ。入り口としては手軽で便利ですが、結局、商品比較をして資料請求や相談に誘導する流れなので、トータルで顧客の行動をデジタル化して利便性を高めるまでは至っていないようです。

世界のFintechは、さらに先を行っている

以上、日本の保険業界も技術を活かして熾烈な競争をしていますが、世界のFintechはどのような動きをしているのでしょうか? 実は、世界の金融サービス業界において最も有利にテクノロジーを活用し、既成概念を変革した実績のある企業100社が選ばれる「Fintech100」で、2014年は保険会社がゼロだったのに対し、2015年はなんと中国の保険会社が堂々1位となったのです。

1位となった衆安保険(Zhong An)は、2013年に設立された中国初のネット専業の損害保険会社ですが、一体どのようなビジネス展開をしていたのでしょうか?

衆安保険は、通販最大手のアリババ、SNSに強みを持つテンセント、大手旅行サイト(携程)など、既存の保険ノウハウだけでなく、ITベンチャーや異業種ともうまく組んで、小規模企業や個人顧客のネット情報、オンライン決済機能などを融合させて、今やリーディングカンパニーになっています。ネット上の商品数は200を超え、既契約情報のみでなく、オンライン決済口座やネット通販にかかるビックデータを分析・活用して、新たな商品を毎年100種ほど出しているとのことです。

もちろん、その国の規制などの影響も大きいでしょうが、世界ではこのくらい動いているということを目の当たりにすると、私たちも従来の見方や考え方のままでは、いつ浦島太郎のようになってしまうかもわかりません。

今後、更にGoogleが積極的に保険に参入するなど、様々なビジネス展開が予想される中、大事なことは、私たちが情報に振り回されないように、しっかりと自分の考えや意思決定の軸を持つことだと思います。その際、提携などによって便利になることに目を奪われることなく、その保険会社が、「どんなビジョンで何を目指して私たちの情報を活用していくのか」という姿勢を確認することを忘れてはならないと思います。

参考

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