もはや他人事ではないガン治療の実態。自分に最適な選択をするためにできることとは?

歌舞伎役者・市川海老蔵さんの妻・小林麻央さんの死去は各マスコミで大きく報道されました。小林さんがガンであることを告白(公表)し、その後の闘病生活をあえてご自身のブログで公開し続けたことや、夫と2人の幼いお子さんと、母親や有名人であるお姉さんも含めた家族愛の様子を垣間見ることにもなって、特別なファンに限らず多くの人が関心を寄せたことでしょう。そして今、小林さんのガン治療の選択が正しかったのかどうかということまでもが話題となっています。

2人に1人がガンになるとも言われる時代に生きる私たちが、ガンとどのように向き合うのか、治療の実態はどうなのか、どんな情報が必要なのか、家族のサポートはいかにあるべきかなど、考えるべき問題は少なくありません。ガン治療の多様化とガン保険の進化については以前にも取り上げましたが、ガンを取りまく諸問題と、私たちが取り組むべきガンへの対応策について、もう一度検討します。

何を根拠に治療方法を選択するか

小林麻央さんが乳ガンと診断された時、ご夫婦は勧められた切除手術を行わなずに別の治療手段を選んだのだそうですが、その選択が後の病状の悪化に繋がってしまった可能性があると言われています。その是非はともかく、ガンの病状や進行度は人により様々です。同じ部位の同じステージのガンであっても、その性質は個々人の年齢・生活環境・体質等によって大いに異なるのです。個人個人で違うガンの性質に合わせた最適な治療方法の組み合わせを検討するのが最新のガン治療方法です。 

医療の進歩から治療手段は多岐にわたっており、加えて最近はそれらに関する情報がインターネットを含めて溢れています。ガンになったとき、素人である私たちにはどんな選択肢があるのか、何を根拠にして選択すべきなのか、医師の言うとおりにすればよいのか、目にした情報が適切なのかどうかなど判断するのは容易ではありません。

ある方がたまたま健康診断でガンの疑いを指摘され、近隣の医療機関を紹介されて受診すると、すぐにも摘出手術をと勧められて入院の予約をしました。その段階で、あまりにも一方的に進められることに違和感を抱いた父上が私にご相談をしてこられました。そこでお勧めしたのはその方が契約している医療保険の付帯サービスである電話医療相談の利用でした。

そこで得たアドバイスは「落ち着いて状況を整理して、他の意見も聞いたうえでご自身が納得する治療を模索したほうが良い」という主旨のものでした。その後、父上の知人である医師から専門医のいる病院を紹介されて再受診をして、結局は手術ではない選択をしたと聞きました。

患者の気持ちをあまり顧みずにどんどん治療を勧めようとした病院が少々おろそかにしたのが「インフォームド・コンセント」。そして、あらためて別の医師から受けた診断と意見が「セカンド・オピニオン」です。この二つの概念は今では常識と思われますが、必ずしもすべての医療現場に浸透している訳ではないようです。

最近の多くのガン保険や医療保険には「医療情報提供や医療相談」が出来る情報サービスが付帯していて、セカンド・オピニオンの相談や、専門医の紹介などを受けられる可能性もあります。ガンになったら受け取れる給付金ももちろん大事ですが、適切な医療を受けるための情報を整理してくれたり、患者の不安に寄り添って相談に乗ってくれるサービスも、今や欠かせない保障の一部であると言えそうです。

ガン保険・給付金受取人の問題

平成の初め(平成一桁時代)の頃は、ガン保険の入院・手術給付金の受取人を被保険者本人ではなく、その家族に指定することが一般的でした。これは、ガンであることを医師が「本人には告知せず、家族に告げる」ことがごく普通に行われていたことが背景にあると思われます。時代は変わり、今では本人への告知が当たり前になってきていますが、しかしそれも家族の状況次第、それぞれの事情によって変わってくるはずです。

若い頃に親が契約してくれたガン保険を結婚してからも継続していて、ご自身がガンと診断された。年老いた親に自分の病状を知らせて心配を掛けたくないと思ったが、給付金受取人が親のままになっていた、という不都合なケースを耳にしたことがあります。入院・手術の給付金と死亡保険金の受取人がそれぞれ正しく設定されているか、また、本人が手続きをすることが困難な状態を想定して、家族を代理請求人に指定しておくことなども含めて、受取人についてあらためて確認されては如何でしょうか。

ガン生存率の向上=治療の長期化

2017年2月16日に国立がん研究センターが発表した最新の統計によると、ガン患者の5年生存率は早期発見のステージⅠで93.1%、進行度の高いステージⅣで20.7%、すべてのガン、すべてのステージ全体の5年生存率は69.4%となっています。また10年生存率も少しづつ上昇していることが分かりました。今後も医療技術の発展を背景にガンを克服して生きる人が増えてゆくのでしょう。がん患者の生存率の向上はすなわち「ガン治療に関わる期間が長期化する」ということでもあります。これからのガン治療は長い期間にわたって継続される可能性が高いと考えられます。

また、完治ではなくともガンの進行が抑制され、症状が軽減された結果、職場にも復帰して日常生活を送りながら治療が継続されるケースも増えるでしょう。健康なときと同等の収入の確保は困難になるかも知れませんし、治療に関わる費用負担も長期にわたります。死亡保険金を遺族に年金支払いするタイプの収入保障保険(後述します)の中には、死亡保障に加えてガンになった場合に数年間限定で毎月療養給付金を支払う商品もありますが、このように働きながらの治療をサポートする保険商品は今後も増えてゆくでしょう。またそれぞれの職場が、社員のガン治療にどのような対応姿勢であるかを知っておくことも重要です。

治療の多様化に対応するガン保険

ガン治療にはどのような種類があるでしょう。大まかな分類ですがその実態とガン保険の対応を見てみます。

1)ガン標準治療

現時点でガン標準治療とは「手術」「放射線治療」「抗ガン剤治療」の3大治療を指しています。ガン保険の対象となる手術には一般に放射線治療が含まれており、一定量以上の放射線量となった場合に手術とみなされて支払われます。抗ガン剤治療についてはこれまでそのような規定は見当たりませんでしたが、最近はこれを対象とするガン保険や特約が登場しています。

また、一部の保険会社で「標準的治療のいずれか」を受けた場合に入院日数などを条件とせずに、まとまった金額を支払うガン保険が販売されています。

2)高度先進医療

厚労省の認めた先進的な医療であって健康保険適用外のために全額自己負担となるのが高度先進医療で、現在120種ほどの医療技術が定められています。一部のガンの治療で行われることのある「重粒子線治療」は有名で、自己負担額はおよそ300万円にもなると言われています。

近年発売された医療保険、ガン保険では「先進医療保障」の特約がつけられるようになっていますので、限度額の差はあるものの、最近の商品であれば多くの場合に実費保障を受けられるでしょう。

3)緩和ケア

痛みの緩和や精神的苦痛に対処する緩和ケアはガンの基本的治療と並行して行う場合と、積極的治療を断念した末期がんの方の痛みの緩和、生活維持として行う場合などがあります。一般の医療保険の給付対象はあくまでも「治療を目的とする入院や手術」なのですが、一部のガン保険には末期がんで積極的治療ではない緩和ケア目的での入院も支払い対象とするものもあります。

4)その他の様々な治療

標準治療とは別に、また標準治療と並行して行われる治療も多岐にわたります。

ホルモン剤治療、免疫療法、形成手術(乳房再建術など)、リハビリテーション、サプリメントや食事療法、そして、玉石混交でもある様々な民間療法などがあります。これらの様々な治療についてはガン保険の特約で対応できる商品もありますので、少々面倒でも保障対象の詳細は確認しておくべき重要項目です。

従来は対象外であった治療への給付を可能にする特約などが増えつつありますが、まだ、ガン保険の支払い対象になっていない治療を行う場合もあるでしょう。そうした場合の経済的負担を軽減するためには「ガン診断給付金」が効果を発揮します。診断給付の支払い要件は、ガンと確定診断されたことであったり診断確定して入院を開始したことなどがあり、また、初めてがんと診断された場合を保障するものと、再発時にも対応するものがあります。それほど高額な負担増でなければ再発対応型の方が安心と考えるなら、こう言った細かな保障内容の違いも含めて検討したほうが良いでしょう。

ガン保険ではないガンへの対策

ガン保険以外の手段によるガンへの備えについても触れておきます。

  • 医療保険に付帯するガンの特約など

一般の医療保険は「すべての病気やケガ」が対象ですので、当然ガンの入院や手術も保障対象です。ですからそれ以上コストを掛けたくなければ、既存の医療保険でもOKという考え方もあるでしょう。ただし前述のように入院や手術ではない治療、通院治療の長期化の可能性があるので「ガン診断給付特約」や「先進医療特約」を医療保険に追加しておくのも、合理的なガン対策のひとつと言えるでしょう。

  • 特定疾病保険

3大疾病の一時金保障で、ガン、脳卒中、心筋梗塞で一定要件に該当するとまとまった金額の保険金が支払われる保険です。定期型と終身型がありますが、多くの商品は死亡保険にもなっています。終身保障の特定疾病保険であれば、3大疾病の生前給付の保障であると同時に最終的な死亡時保障でもあり、解約返戻金もあるため、将来確実に何らかの形で機能が発揮される保険であるとも言えるでしょう。ただ、多くの商品で支払いは1回限定であり、脳卒中でこの保険金を受け取った後でガンにかかった場合には保障がなくなっていますので、その点は認識しておくべきです。

  • 特定疾病保険料免除特約

ガンになって治療をしながら働く人も多くなっています。ガン治療の費用負担に加えて以前と同等の収入確保が困難になるかも知れず、ガンになったらその後の保険料が免除されれば経済的負担の軽減につながります。保険料免除特約はガン保険に限らず付帯できる商品も多いので、これもガンへの備えと言えます。

  • 収入保障保険(生活保障保険)

死亡後に年金形式で毎月保険金を支払うタイプの死亡保険ですが、このバリエーションとして3大疾病になった場合にもこの保険金を生前に支払うものが販売されています。基本的な生活費保障としての死亡保険で、ガンの保障も兼ねるというやり方も選択肢のひとつです。

ガン治療の正しい選択をするために

ガンに関する情報源の確保

いざとなったらどのような項目について、どこの誰に相談をすればよいのかという情報源の整理を、健康なうちに把握しておくことは重要です。保険会社のガン周辺情報の資料を活用したり、医療情報サービスのある保険に加入したり、専門医療機関やがん研究センターの情報にも日ごろから触れておくことは、2人に1人がガンにかかる私達にとっては決して無駄なことではないでしょう。

また、ガン保険に限らず家族の保険の全体像を把握しておくこと、職場の対応の実態を知っておくこと、社会保障の内容や地域自治体などのサポート体制などについて理解しておくことも大切です。

ガンについて自分の考えを持つ

繰り返しますが、ガンの治療は多様化しており、また、様々な医療分野の専門家が協力してのチーム医療が増えてきているそうです。個々人の病状や生活環境、治療への意識などを個々に検討して、専門家と患者本人との間で治療方針なども検討されることになるのです。

ガンになったその時、自分自身はどのような考え方でどう対応するのか、ガンになってから慌てて考えるのでは遅い場合もあるかも知れませんし、適切な治療の最新情報を探すのは容易ではないでしょう。

ガンの手術はせずに放置するほうが良いという極端な意見もありますし、それも真っ向から否定する意見もあります。もし、自分が持っている情報や信じていることが一面しかとらえていない偏ったものだったとすれば、いざという時の判断を誤らせることになります。

ガン治療の実態把握や、経済的な変化の想定、生活人としてのガンとの関わり方、自分なりの考え方を整理できるように「ガンの勉強」をしておきたいものです。

家族がガンになったときへの備え

自分がもしガンになったとき、家族の支えは力強い味方となります。そして自分ではなくパートナーがガンになったら、どのようなサポートが必要になるだろうか、どんな姿勢で臨むべきだろうか、こうしたことについても、互いに意見交換をし家族の考え方、気持ちに寄り添うことが出来るように話し合っておくことはライフプランの重要な項目であると言えるでしょう。

参考

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