ロボット保険アドバイザーは、今までの保険加入プロセスを変える存在になるか?

保険(Insurance)とIT(Technology)を組み合わせた「Ins Tech」という造語を目にすることが増えてきました。その中で、資産運用のロボットアドバイザーならぬ、ロボット保険アドバイザーというサービス「Donuts(ドーナツ)」がスタートしました。

運営会社はSasuke Financial Lab(株)。ちょうど2018年3月に総額5000万円の資金調達を完了し、先日、そのサービス説明会がFP向けになされたので、今回は、ロボット保険アドバイザーが、そもそもどんなサービスなのか、私たちユーザーにどのような影響があるのか、以下整理しました。

Sasuke Financial Lab(株)は、保険(Insurance)とテクノロジー(Technology)を融合させた“インシュアテック(InsurTech)”分野のパイオニア企業として、次世代の保険サービスである、ロボット保険アドバイザー「Donuts(ドーナツ)」を開発している。
そのための資金として、既に3月にKLab Venture Partners、Global Catalyst Partners Japan、マネックスベンチャーズを引受先とする第三者割当による新株予約権の発行により、総額5000万円の資金調達を完了した。

ロボット保険アドバイザーは、ありそうでなかったネット(ダイレクト)保険専用の乗り合い代理店だった

ロボット保険アドバイザーというと、ロボットが保険のアドバイスをするという印象を持ちがちですが、同社のサービス「Donuts(ドーナツ)」は、私たち個人の生命保険・医療保険選びのプロセスを自動化するというものです。運営会社のSasuke Financial Lab(株)は、その目的を「生命保険の『煩雑な』購入手続きを『瞬時』に解決したい」という想いで表現しています。

「Donuts(ドーナツ)」のステップは次の3つ。

  • Step1:7つの質問に答える
  • Step2:分析結果(死亡・がん・医療・就業不能の4種類の保障の必要性と提案商品)を確認
  • Step3:加入申込み手続をする

最初の7つの質問の回答を通して、Donuts独自のアルゴリズムでカスタマイズされた保険のベストな組み合わせプランが提案され、1分で最適な保険選びができると謳っています。

ここで重要なのは、「Step2:分析結果」に関して、死亡・就業不能・がん・医療の4分野について必要性の有無が明示される点、そして、提案する商品は、インターネット等で手続きが完結する保険商品だけという点です。
つまり、ネット(ダイレクト)保険専用の乗り合い代理店としてのサービスということがわかります。

取り扱いは、2018年4月現在、AFLAC、アクサダイレクト生命、東京海上日動あんしん生命、ライフネット生命の4社のネット(ダイレクト)保険。2018年内には8社~9社へ増やし、20から30商品からベストな商品を選べるようにしたいとのことです。

今まで、ネット(ダイレクト)保険は、比較サイトなどで見かけることが多いのですが、いわゆる対面販売も含めた多くの保険会社や商品のランキングの一部として扱われていたにすぎません。そうしたプロセスでは、どうしても、ユーザー自ら、まず保険種類をクリックすることから入り、一定条件での保険料などの比較ランキングを見て、絞り込むという作業にならざるを得ないと思います。

それではどうしても煩雑さから解放されない、ということから編み出されたのが、ネット(ダイレクト)保険専用の募集代理店としての、7つの質問から入る簡単診断と提案だったというわけです。

提案内容は必要な保障種類に絞り、「〇〇保障は不要」という分析結果も明示

募集代理店なので、ビジネスモデルとしては当然、保険契約が成立することに伴う手数料が収入源と言えます。しかし、自動で提示される提案内容については、次のような特徴があります。

  1. 質問の回答によっては、「保険は不要」とハッキリ明示される
  2. 質問内容も、関心あることを確認してできるだけポジティブに
    (今の保障内容や不安をあおる質問はしない)
  3. 比較して買うのが当然な若年層・ミレニアル世代向けに、提案理由などをわかりやすく提示

1の点から、このサービスは、本来、保障が必要な人にだけ提案をし、皆が皆、保険入るのが目的ではないという姿勢がわかります。死亡・がん・医療・就業不能の4種類の保障ごとに、必要がない人には、ハッキリと「オススメ:なし」と提示され、私自身も、医療保障は「オススメ:なし」の一方、就業不能保障などは「オススメする保険の組み合わせ」が提示されました。

質問内容から導き出す保障の必要性のロジックには、中立的なファイナンシャルプランナーも関わって、20代30代スマホユーザー向けに、イラストなどで可愛らしくわかりやすくつくられていると言えます。

具体的には、性別や年齢、払っている保険料水準の他、

  • 「万一の際に経済的に困る人がいるか?」
  • 「入院した際に心配なことは何か?」
  • 「病気やケガの治療費や入院費として、50万円程度の備えがあるか?」
  • 「保険を選ぶときに優先したいポイントは何か?(保険料、付帯サービス、手厚くしたい保障)」

といった質問内容で、あくまで必要な保障の種類を絞り込むことに徹しています。

つまり、保険の提案でよくある必要保障額に関する詳細までは踏み込んでいません。なお、必要性についての診断が適切かどうかは意見が分かれるところでしょう。例えば「病気やケガへの備えとして50万円程度」が「ある」と答えると、医療保障「オススメなし」と出てくるあたりは、それで良いのか気になる方もいるのではないでしょうか?(健康保険が適用される治療の自己負担から導き出されていますが、小さな子どもがいる家庭などその他の支出も気になる方もいるでしょうから。)

保障の種類を絞り込んだ後、具体的な保障額などについては、各保険会社のWebサイトで再計算してもらうそうで、シンプルにするためにある意味、割り切っていると言えます。同社の松井社長いわく、「現時点では、きめ細かい対応はできないが、将来的には、Webチャットやコールセンターも検討している」とのことです。

なぜ「ドーナツ」?保険の加入プロセスの変革になる?

実際に使ってみて、このサイトのUI(User Interface)が画期的なのは明らかと思います。ただ、なぜ20代30代層の男女、スマホユーザー向けに「ドーナツ」なのだろうか?という漠然とした疑問がありました。

社長にお伺いしたところ、ご自身もドーナツが好きで、ウィンドウを前に何を選ぼうかなとワクワクする感覚を保険選びでも表現したいと思ったからだそうです。「ドーナツを選ぶように保険を選ぶ」というコピーがそこから来ているとわかると、運営会社のお茶目な社長さんの人柄が見えてくるのではないでしょうか?

ただし、「ドーナツを選ぶような」保険選びで、若い世代の保険加入プロセスのイノベーションとなりうるかどうか?まだまだ検証や考察が必要です。

米国では、対面ではないダイレクト型の生命保険のシェアは、直近で約7%だそうで、これは日本の自動車保険のダイレクト型のシェア約8%に近いとのこと。

一方、日本の生保はまだまだ対面が98%も占め、ダイレクト型は2%程度にすぎないと言われています。まずは、生保分野でも、自動車保険くらいにシェアを高めたいと意識しているようですが、CMなどでかなり普及しているダイレクト型自動車保険でさえ、シェアではまだ1桁台と聞いてビックリしました。

実際、同社はこのサービス構築にあたり、約3か月にわたり、20代~50代の男女500人にインタビューしたそうですが、対面相談を好むユーザーがいることも十分認識したそうです。よって、対面を希望する人は、従来のプロセスを推奨する一方で、面談の煩わしさや数回にわたる時間に抵抗がある人やスマホで簡単に完結させたい人をターゲットとし、1年後は月500契約を目標にしているとのことです。

非常に面白いUIであることは確かですが、若い層に認知してもらうには、様々な仕掛けが必要でしょう。事業会社との提携などを進めることは考えているようですが、若い人たちが良く見るゲームとの連携など、ありそうでなった導線を見つけて張り巡らせていくことが大きな課題と思いました。

なお、加入後のフォローについても、一般の募集代理店と同様、取扱保険会社に確認しつつ、人的サービスとして行っていくそうです。

以前、紹介した米国のレモネード社は、日本の従来の保険の仕組みとは違うP2P保険(peer-to-peer保険、シャアリングエコノミーから生まれたもの)であるのに対し、この「ドーナツ」は、あくまで既存の保険の媒介サービスです。各画面のページ構成一つをとっても、保険会社の確認のもとで進めているとのことで、独自路線でいきなり画期的な打ち出しをするのはハードルがあるようです。

また、米国でもWebやスマホをベースとした乗り合い代理店(Policygenius)がありますが、そこでは、他との違いやビジネスモデルの説明などもしっかりなされています。FAQでは、保険契約によるコミッションが収入源だが、アドバイザーは給料制なので、顧客にはベストなアドバイスをしているといった情報も明示されています。

「ドーナツ」の画面でも、ユーザーからみた疑問などのFAQなどを一層充実させて、今後は、SNSなどを通じたコミュニティを持って、請求のしやすさなどを遡及したり、ユーザーの声や質問の回答などをもとに、データ分析を活かしたAIによるサービス展開なども期待したいと思います。

参考

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