存在感高まる住宅ローンの「がん団信」。選ぶメリットは高い?

近年、病気などで働けなくなる「就業不能リスク」が注目され、生保各社では、それカバーする保険商品の取扱いを続々と開始しています。

たしかに、働けず収入が減ってしまうと生活が苦しくなるのですが、実際、病気になって、数か月単位で治療が続くと、負担が重いと感じるようになるのが、医療費以上に、毎月の「住宅ローン返済」や「子どもの教育費」など。要するに、家計支出のなかの固定費です。

とくに、住宅ローン返済については、夫婦共働きや高収入で、頭金0円で多額な住宅ローンを組んだ人は要注意。

そこで、住宅ローンを組んでマイホームを購入した人にとって、がんに罹患した際の‘救世主’となるのが、がん保障付き団体信用生命保険(以下、「がん団信」)です。

これに関しては、いわゆる疾病保障付き団体信用生命保険(以下、「疾病団信」)と呼ばれる、がん以外の疾病を広く保障するタイプのラインナップも増えましたし、新しく取り扱う銀行や商品も広がりを見せ、徐々に存在感を増してきています。

新たな疾病保障特約付き団体信用生命保険を取り扱い開始

《要約》2018年6月25日から、長野銀行では、団体信用生命保険(以下、「団信」)に、「がん団信」、「生活習慣病団信<入院プラス>」、「連生がん団信」、「ワイド団信」の4種類のラインアップを新しく追加した。
団信保険料として金利の上乗せ分は、それぞれ種類によって異なり、住宅ローン金利+0.1~0.3%。長野県内の出張所を除く50店舗で取り扱うという。

また、同年7月17日、ソニー銀行でも、団信の新商品の販売および既存商品のリニューアルを発表。
2018年8月1日から取り扱いを開始する「がん50%保障特約付き団信」は、通常の団信の保障に加え、がんと診断確定された場合、住宅ローン残高の50%相当額を保障。金利の上乗せ等はなく無料で付帯できる。
続いて10月には、がんと診断確定された場合に住宅ローン残高の100%相当額を保障する「がん100%保障特約付き団信」および、がんと診断確定された場合や所定の生活習慣病による入院が180日以上継続した場合に住宅ローン残高の100%相当額を保障する「生活習慣病入院保障特約付き団信」の取り扱い開始を予定している。
こちらは、団信保険料として、住宅ローン金利+0.1~0.3%が上乗せされる。
さらに、既存商品である「3大疾病保障特約付き団信」についても、付帯サービスの追加や利用条件のリニューアルを行う見込みだ(図表参照)。

なお、上記2行とも引受保険会社は、クレディ・アグリコル生命保険。 同行は、バンカシュアランス専門の保険会社で、同社が提供する団信には、付帯サービスとして、ティーペック株式会社が業務委託を行う「セカンドオピニオンサービス」や「24時間電話健康相談サービス」が受けられる。

*出所:ソニー銀行リリース資料より

*出所:ソニー銀行リリース資料より


特定疾病団信が住宅ローン選びのポイントの一つに

元々、日本で初めて「がんの診断確定による残高保障」を団信のがん保障特約として開発・提供を開始したのは、カーディフ生命です。2001年のことでした。

今では「がん」以外に、「三大疾病」、「五大重度慢性疾患」、「八大疾病」、「全疾病」など、対象となる疾病の範囲も広がり、金利の上乗せなしの無料で付帯できるものや病気・ケガの際の保障や失業時の保障、配偶者の保障がついたものなど、さまざまな団信が選択できるのが一般的になりました。

長期療養が必要な疾病に罹患した場合、住宅ローンの支払いが相殺された方が、家計にとって安心と考えるご家庭が増えたこと。そして、金融機関の中には、特定疾病団信加入で、住宅ローン金利の優遇措置が受けられることなどが追い風となって、新規借入れや借り換えの際に、特定疾病団信が住宅ローンを選びの一つのポイントにもなってきています。

がん団信の保障タイプは大きく2つ

それぞれの商品比較については、さまざまなサイトで紹介されているので、そちらをご参照いただくとして、ここでは「がん」に注目して選ぶときのポイントを考えてみましょう。

疾病が多いと多種多様に見えますが、がん保障だけを見ると、意外にシンプルです。

まず重要なのは、保障の条件で、いつ保険金がおりるのかということ。大別して、「診断給付金型」と「月額返済補償後債務繰上返済型」の2つがあります。

前者は、責任開始後に、がんと診断確定した時点で住宅ローンの残債が消滅するというもの。

りそな銀行の「特定状態保障特約付【団信革命】」(+0.3%上乗せ)や「三大疾病保障特約」(+0.25%上乗せ)、イオン銀行の「8疾病保障付住宅ローン」(+0.3%上乗せ)や「ガン保障特約付住宅ローン」(+0.1%上乗せ)など。

そして、2017年10月1日から団信付住宅ローンになった「フラット35」の新3大疾病付機構団信なども、このタイプです。

また、前述のソニー銀行の新商品と同様に、クレディ・アグリコル生命が引受保険会社となっているじぶん銀行など、金融機関が提供する保障プランによって、50%、100%全額など残債の保障割合にバリエーションをつけたものもあります。

後者は、責任開始後に、がんなど所定の状態になり一定期間(15日、30日など)を経過した場合に、住宅ローン返済額相当が毎月、保険金として支払われます。その後、所定の状況が1年(12ヵ月)を超えて継続した場合、債務残高相当が保険金として充当され、結果として残債が消滅するというものです。

住信SBIネット銀行の「全疾病保障」や楽天銀行の「全疾病特約付き」はこのタイプ。

さらに、金利の上乗せもありません。住信SBIネット銀行には、ローン契約者が女性の場合、「がん診断給付金」もプラスされます。

2つのタイプを選択できる金融機関も

また、金融機関によって、上記2つのタイプを選択できる場合もあります。

三菱UFJ銀行の「7大疾病保障付住宅ローンビッグ&セブン」は、保険料が金利に上乗せされる「3大疾病充実保障タイプ」と、保険料が金利に上乗せされない「安心の保険料タイプ」の2つから選択可。

前者は診断給付型、後者は月額返済補償後債務繰上返済型で、先進医療特約も付加できます。

また、三井住友銀行の「8大疾病保障付住宅ローン」も、それぞれのタイプが用意されており、契約者の借入時の年齢が、20歳以上46歳未満のときと46歳以上56歳未満のときで、保障内容が異なります。

そして、みずほ銀行の「8大疾病補償プラス・8大疾病補償」と「がん団信」もそれぞれ条件が選択できるようになっています。さらに、前者の対象となるがんとして、「上皮内がん」も含まれる点も特徴的でしょう。

上皮内がん・皮膚がんについては、定額(30万円など)の診断給付金が支払われる特約が付加できる商品はありますが、住宅ローンの残高保障・残債保障については、保障対象外としている商品がほとんどです。

疾病団信の多様化でがん保障の選択肢は広まったが・・・

こうしてみてみると、商品によって保障内容がさまざまで、住宅ローンを選ぶ際に、好条件の金融機関から選んだら良いのか、ニーズに合ったがん団信から選んだら良いのか、悩む方も少なくないでしょう。

お客さまの中には、住宅ローンを一般の団信付きとがん団信付きといったように、複数に分けている方もいらっしゃいます。

そして、気になるのは、実際にがん団信でどれくらいの額が保障されているのかどうか?

「がん団信」のパイオニアともいうべきカーディフ生命によると、創業以来支払った保険金は、死亡・高度障害によるものが792億円、三大疾病によるものが1,292億円と、三大疾病の方が1.6倍も多いそうです(2000年~2018年3月までの生保・損保の合算値)。

これを契約件数から計算すると、三大疾病の場合、約1,500万円となります。

仮に、この金額をがん保険などでカバーしようとすると、保険料は相当な額になりますし、無料で付帯できる商品を選べば、がん団信の方が断然オトクということになるでしょう。

実際、がん(悪性新生物)に罹患した方の中には、「早期発見だったのですぐに仕事にも戻れて収入もほとんど減らなかった。しかも、がん団信で年間150万円の住宅ローン負担がなくなり、本当に生活がラクになった」という声も聞きます。

がん経験者へのアンケートによると、がんに罹患後、年収は2割減少し、「無収入になった」という患者も2割近くいます(*出所:「がん経験者572名へのアンケート調査」(2017年8月)ライフネット生命)

その一方で、住宅ローンは、基本的に、収入が減少する定年退職前までに繰上げ返済などを利用して完済しておくのがベストです。

となると、がんの罹患率が高まる、50代後半から60代以降に、保障がなくなってしまうことになりかねません。

多額な住宅ローンを組み、収入減少した場合のリスクが大きい現役世代にとって、がん団信は強いミカタではありますが、万能ではないことを理解しておく必要があります。

つまり、がん保障が必要な時期と住宅ローン返済の時期、保障額と合致かどうかの見極めが重要であり、がん団信を付加したことで、浮いたお金を貯蓄や投資で上手に運用し、がん団信による保障が終了した後は、「医療貯蓄」として備えておくなどのひと工夫も忘れてはいけないということです。

参考

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