一部の粒子線治療が保険適用に。多様化するガン治療の現状にフィットするガン保険とは?

先日、厚生労働省が認める高度先進医療のひとつが、あらたに健康保険が適用されると報道されました。

小児がんや骨軟部腫瘍の粒子線治療に4月から保険適用(日本経済新聞)

《要約》厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会が「がん粒子線治療」のうち小児がんの陽子線治療と骨軟部腫瘍の重粒子線治療に公的医療保険を適用すると決めた。

このように、高度先進医療の内容は医療技術の進歩や有効性検証などの推移によって入れ替わって行きます。ただし要約したとおり、今回、保険適用になるのは「小児がんの陽子線治療」と「骨軟部腫瘍の重粒子線治療」のみであり、それ以外の大半のがんについての重粒子線治療は先進医療のまま継続されます。

現在、約110種類ほどある先進医療の自己負担額は10万円程度のものから100万円以上等様々ですが、特にがん治療法として話題に上ることの多い重粒子線治療などでは300万円前後ともなるのです。その費用負担分を担保するのが最近医療保険のCMなどでも目立つようになっている「先進医療保障(特約)」です。

先進医療は実際に受けられる医療機関の数はまだ限られていますし、必ずしも有効性が高いとも言い切れない面もあるようですが、もしも色々な条件が重なってそうした治療を受けることになった場合には、自己負担分が保障されるのは大いに価値があると思われます。

この先進医療保障に限らず、がん治療法の多様化に対応するべく保険各社は様々な保障内容のガン保険を販売するようになりました。

目次

ガン保障、新旧の違い

従来のガン保険は基本的に「入院日額1万円」とか「手術したら10万円・または20万円」などという保障が主流でしたが、多様化する医療の実態にそぐわなくなってきたため、入院しない(または非常に短期間の入院)で治療を行うケースへの対応が目立ちます。

ガンの入院なら保障日額が2倍になるとか、保障日数が無制限になるなどのガン保険特有のバリエーションが以前からありますが、入院しない治療のケースには対応できません。

新しいガン保障のラインナップ

入院保障や通院保障、手術保障以外の保障には次のようなものがあります(販売会社は生保、損保、少額短期保険会社なども含みます)。

  1. 放射線治療保障
  2. 抗がん剤治療保障
  3. ホルモン療法保障
  4. 乳房再建術保障
  5. 免疫療法保障
  6. 自由診療実費保障
  7. 先進医療実費保障
  8. ガン診断給付保障
  9. ガン治療給付保障
  10. ガンになった後の保険料免除
  11. セカンドオピニオン相談などのサービス

これらを選択し組み合わせて保障を充実させることが出来る訳ですが、では一体どれとどれを選ぶのが良いのか、これはなかなか難しい問題です。将来自分がどのような病気になり、どのような治療を受けることになるかは誰にも予測不可能なのです。そして、あらゆる可能性に対応すべくあれもこれもと保障を追加していけば保険料がどんどん高くなってしまいます。

これらの保障の支払いは日数に応じての支払いではなく、まとまった金額の一時金保障ですが、一時金と言っても100万、200万円の単位から5万円、10万円などと保障金額は様々です。また保険金(一時金)を1回だけ受け取れるものもあれば、1カ月に1回とか1年に1回、または通算5回までなどなど、受け取れる回数についても多くの選択肢があるのです。ガン保険の比較サイトで検証していた私自身も、どうすれば良いのか分からなくなってしまうほどなのです。

そこで、できるだけ合理的で経済的で安心感も得られるガン保険の考え方を整理します

なぜガン保険に加入するのかを再確認する

2人に1人がガンになるとも言われる時代ですから、備えあれば憂いなしです。ただし、もしあなたが既に「医療保険」あるいは生命保険の「入院保障特約」などに加入しているなら、その保険でもガンになった時の入院及び手術の保障が確保されているでしょう。(基本的にすべての病気とケガの保障のはずですから)その保障内容を再確認して、それで大丈夫と考えるなら必ずしもガン保険に新規加入する必要はないかも知れません。

しかし前段で触れたように、最近のガン治療は入院や手術ではない治療が増えつつあるので、その視点からガンの保障を確保したいと考えるなら、そうした事情を背景に開発されて来た新しいタイプのガン保険を検討してみましょう。

ガン治療の実態を把握する

前記のようにガン治療の方法は多様化していますから、現在どんな治療法があるのか、どのくらいの費用が掛かるのか、ガン治療と生活の両立をどうするのか、どんな心構えが必要か、などなどガンの基礎知識をある程度得た上で選ぶことは、自分に合ったガン保険選びに直結するでしょう。

例えば、国立がんセンターの「がん情報サービス」のサイトには多くの情報、資料が並んでいます。

■がん情報サービスサイト
//ganjoho.jp/public/dia_tre/knowledge/basic.html

ただし正直なところ、こういう情報量の多いサイトにアクセスしてじっくりと読む気になるのは、自分や家族がガンになったあとかも知れません。それではガン保険の選択には間に合いませんね。最近は保険会社が「がん情報パンフレット」などを作成しており無料で入手できるものも多いので、そういう小冊子なら要点が絞られていて忙しい人も読む気になるでしょう。ただしネットで依頼する場合などは、その後保険会社から売り込みの連絡があることは覚悟した方が良さそうです。

治療の種類を問われない保障(ガン治療給付など)

最新のガン保険には予めいくつかの保障がセットになっている商品だけではなく、基本保障のみ単独での加入もOK、必要に応じてオプションを追加しての加入もOKという商品もあります。選択に迷ったら、まずは基本的な保障を絞り込みましょう。

ガン治療において「標準的は治療」はやはり「手術(患部切除)」「抗がん剤治療」「放射性治療」の3大治療であり、およそ9割以上が受けているというのが実態のようです。

保険会社数社が販売しているガン治療保障では、これらの『いづれかの治療』を受けた場合に保険金(一時金)を支払います。そして、多くの商品で複数回の受取が可能となっています。ガン治療給付とは別にガン診断給付がありますが、こちらは、ガンと診断されて何らかの治療を開始した時(または入院開始時)に支払い対象となり、2年に1回などを限度に複数回支払うものがあります。

こうした、ガン治療保障やガン診断給付保障なら、どんな治療方法になるか分からない時点でも安心が得られると思います。その保障に加えて入院保障をプラスするとか、一般の入院保障型の医療保険で備えると考えるのは合理的な組み立て方ではないでしょうか?

また、文頭の「先進医療保障」は保険料も決して高額ではないので、有効な選択肢であると思います。

古い医療保険やガン保険の内容も再確認

新型ガン保険が合理的と言っても、従来型のガン保険が必ずしも有効性が低いとも言えません。入院・手術保障を基本とする旧来のガン保険の一部には退院後療養給付保障などがあり、1日でも入院すれば退院後に数十日分の退院療養給付が支払われる場合もあります。こういうガン保険なら、短期入院であってもある程度のまとまった保険金が受け取れるので、一時金支払い型に近い効果が得られます。

なおガン保険ではなく、以前からある医療保険や医療特約の手術保障の内容として、一定量以上の放射線治療を受けると、手術とみなして給付金が支払われる場合があることはあまり知られていないかもしれません。

保険見直しや保障追加の検討の際には売り言葉に乗るのではなく、家計環境と社会保障制度の把握、現状の保障内容の再確認を行った上で、無駄や無理のない選択をして頂きたいと思います。

参考

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この記事を書いた人

博多生まれの東京育ち。国立市在住30年。老舗機械商社営業マンから突然!脱サラ。当時外資系だった生命保険会社の営業マンとなり、独立自営へのステップとして成果報酬の保険営業を9年間経験。その後ファイナンシャルプランナー(FP)として独立し、現在は保険相談を中心に独立系FP事務所&総合保険代理店を経営している。
本当に必要で本当に役に立つ保障システムの構築と、資産の安定化の実現をサポート。誠実と向上心をモットーに顧客の利益最大化を目指す。

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