平成28年12月8日、与党が平成29年度税制改正大綱を発表しました。
平成29年度税制改正大綱
https://www.jimin.jp/news/policy/133810.html
この中で、「財形貯蓄」の利子の非課税制度について、勤労者やその家族の災害・傷病、配偶者の死亡、障害、失業で一定の要件を満たせば、これらを事由とする払い出しにも適用される予定となりました。
給与控除で計画的に資産形成できる財形貯蓄
財形貯蓄とは、「勤労者財産形成促進法」にもとづいて、事業所で行われている勤労者のための福利厚生制度です。事業主が、銀行・信託銀行・生命保険会社・証券会社等と契約して、勤労者の給与・賞与から任意の一定額を控除して積み立てていきます。この制度が導入されていない事業所の勤労者は、利用することができません。
活用する金融商品は、預貯金・積立保険・公社債投資信託など、元本が保証されている、または元本の安全性が高い商品です。昨今の低金利で、利子等は非常に低いのですが、給与・賞与から控除して積み立てられるので、浪費しがちな人も計画的に資産形成ができます。
利子に課税されない住宅財形・年金財形
財形貯蓄は、「一般財形」「住宅財形」「年金財形」の3種類に分類されます。
一般財形はその資産の使い道が自由である反面、発生した利子に20.315%の課税が行われます(所得税15.315%、住民税5%)。これは他の貯蓄系の金融商品と同じです。
住宅財形は、その資産を一定の住宅の購入・建設のために払い出す場合には、利子に課税されないというメリットがあります(元利合計550万円などの上限があります)。住宅の購入の目的外で払い出すことも可能ですが、その時点の利子課税と、その前5年間に発生した利子にさかのぼって課税が行われます。
年金財形は、その資産を60歳以降年金で払い出す場合には、利子に課税されないというメリットがあります(元利合計550万円などの上限があります)。それ以外の目的で払い出す場合には、住宅財形と同様にその時点の利子課税と、その前5年間に発生した利子にさかのぼって課税が行われます。
本稿では、前述の住宅財形、年金財形を「財形非課税貯蓄」と呼ぶこととします。
税制改正で非課税払い出しの要件が拡大される
平成29年度税制改正大綱で、財形非課税貯蓄について以下のようなケースが発生してから1年以内に払い出しを行う場合は、その時点の利子課税や、5年間さかのぼって利子課税が行われないことが明記されました。
- 勤労者が居住する住宅(所有者は生計を一にする親族も可)が、災害により全壊・流出・半壊・床上浸水などによる一定損害を受けた。
- 勤労者本人または本人と生計を一にする親族のために支払った医療費が200万円を超えた。
- 勤労者が配偶者と死別して、所得税法の寡婦(扶養親族である子がいる場合に限る)または寡夫に該当することとなった。
- 勤労者が特別障害者に該当することとなった。
- 勤労者が雇用保険法の特定受給資格者(倒産・解雇などによる離職者)または特定理由離職者(雇い止め、傷病などによる正当事由による離職者)に該当することとなった。
改正の時期は平成29年4月1日以後です。また、平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間に生じた1~5までの事由により財形非課税貯蓄の払い出しを行った勤労者で、その払い出しの際に利子に課税された人は、平成30年3月31日までに、徴収された所得税・住民税の還付を請求することができます。これは、平成28年に発生した熊本を中心とする大地震に関連する施策です。
新しいマネープランの可能性が出てきた
今回の税制改正大綱の内容については、今後国会に法案が提出され、平成29年3月下旬に可決・成立して正式に施行されることになります。その後詳細な取扱いに関する規定などが定められることになるでしょう。
事業所によっては、財形非課税貯蓄に「奨励金」を付加して、勤労者の資産形成を促進する福利厚生施策を導入しているところもあります。そのような事業所では、目的外の払い出しの場合は、利子課税だけでなく奨励金も没収されている事業所が多いかもしれません。今後は、目的外の払い出しの場合でも、前述のような一定の状況となったときであれば、奨励金を没収されることなく、利子非課税で払い出しができる施策を導入することが予想されます。奨励金を導入している事業所に勤務する人は、今後の動向に注意しておきたいところです。
財形非課税貯蓄の活用方法が増え、マネープラン新しい選択肢ができたと言えるのではないでしょうか。
参考
- 平成29年度税制改正大綱
https://www.jimin.jp/news/policy/133810.html