オンライン診療がじわじわ広がっているようです。オンライン診療とはどのようなもので、希望する患者は誰でもオンライン診療を受けることができるのでしょうか。オンライン診療で何がどう変わるのか、考えてみましょう。
オンライン診療とはどんなもの?
最近、耳にする機会が増えた「オンライン診療」。厚生労働省が2018年3月に発表した「オンライン診療の適切な実施に関する指針(案)」というガイドラインには、次のように説明されています。
「オンライン診療とは、遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して患者の診察及び診断を行い、診断結果を伝達する等の診療行為をリアルタイムで行う行為」
わかりやすく言えば、スマホやタブレット端末でビデオチャットしながら診療を受ける、遠隔医療の1つです。
今の日本は、団塊の世代が後期高齢者となり、医療も介護もまかないきれない「2025年問題」に直面しています。病院も介護施設も不足すると予想されている中、今後は在宅介護が主流になり、医療についても病院に通えない患者のもとへ医師や看護師が来る、訪問医療が増えるとみられています。しかし、医師不足も深刻化すると予想され、その解消方法の1つとして推進されているのがオンライン診療でもあります。
患者にとってのメリットを挙げてみるとたくさんあります。
<オンライン診療のメリット>
- 要介護状態などで診療所まで通えない患者には助かる
- 近くに病院がなくても利用できる
- 待ち時間が無くなる
- 自宅に居ながら医師の診療を受けることができる
- 問診や血圧・体温などは自分で測って入力で回答
- 患者は診察時に症状を説明する手間が省ける
- 通院回数が減る
一方、不安な点も挙げてみましょう。
<不安>
- 画面を見ながら話すことに違和感をもつ人もいる
通信機器になじめない人は一定数はいるでしょうから、解消するには時間がかかるかもしれません。
私も持病があって内科に月1回、通ってはいるものの、診察までと診察後に会計と処方箋発行を待つ間の待ち時間が1時間強あり、人生を無駄にしているように感じています。あの時間が無くなるだけでもありがたいことです。
2015年解禁、2018年から健康保険の適用
当初、遠隔医療の対象は医師のいない離島やへき地などが対象とされていたようです。それは1997年12月の厚生労働省の通達に基づくものでした。しかしその後、2015年の通達で、
- 遠隔診療の対象を離島やへき地の患者に限る必要がない。
- 別表の「遠隔診療の対象と内容」は例示であり、他の疾患や示された内容以外も対象となりうる。
など、遠隔医療をより広く認める方針が出されました。この変化を実質的な解禁とみる向きもあります。
遠隔診療の対象 | 内容 |
---|---|
在宅酸素療法を行っている患者 | 在宅酸素療法を行っている患者に対して、テレビ電話等情報通信機器を通して、心電図、血圧、脈 拍、呼吸数等の観察を行い、在宅酸素療法に関する継続的助言・指導を行うこと。 |
在宅難病患者 | 在宅難病患者に対して、テレビ電話等情報通信機器を通して、心電図、血圧、脈拍、呼吸数等の観 察を行い、難病の療養上必要な継続的助言・指導を行うこと。 |
在宅糖尿病患者 | 在宅糖尿病患者に対して、テレビ電話等情報通信機器を通して、血糖値等の観察を行い、糖尿病の 療養上必要な継続的助言・指導を行うこと。 |
在宅喘息患者 | 在宅喘息患者に対して、テレビ電話等情報通信機器を通して、呼吸機能等の観察を行い、喘息の療 養上必要な継続的助言・指導を行うこと。 |
在宅高血圧患者 | 在宅高血圧患者に対して、テレビ電話等情報通信機器を通して、血圧、脈拍等の観察を行い、高血 圧の療養上必要な継続的助言・指導を行うこと。 |
在宅アトピー性皮膚炎患者 | 在宅アトピー性皮膚炎患者に対して、テレビ電話等情報通信機器を通して、アトピー性皮膚炎等の 観察を行い、アトピー性皮膚炎の療養上必要な継続的助言・指導を行うこと。 |
褥瘡のある在宅療養患者 | 在宅療養患者に対して、テレビ電話等情報通信機器を通して、褥瘡等の観察を行い、褥瘡の療養上 必要な継続的助言・指導を行うこと |
在宅脳血管障害療養患者 | 在宅脳血管障害療養患者に対して、テレビ電話等情報通信機器を通して、運動機能、血圧、脈拍等 の観察を行い、脳血管障害の療養上必要な継続的助言・指導を行うこと。 |
在宅がん患者 | 在宅がん患者に対して、テレビ電話等情報通信機器を通して、血圧、脈拍、呼吸数等の観察を行い、 がんの療養上必要な継続的助言・指導を行うこと。 |
(厚生労働省サイトより)
2018年4月からは、オンライン診療に健康保険が適用されるようになり、一気に広がる機運が高まっています。すでに専用アプリも続々と開発されています。
また、同時期に厚生労働省はオンライン診療に関するガイドラインを策定・発表しました。ガイドラインの主な内容としては、
- 初診は原則対面で行う
- 症状が安定している患者のみオンライン診療ができる
- 患者が実施を希望する場合のみ
- ただし、必要な場合は対面に切り換える
- 医師のパソコンなどに情報セキュリティ対策をとる
といったことなどが含まれています。
オンライン診療アプリが続々登場
オンライン診療が可能な病院と希望する患者を結ぶ専用アプリも、次々と開発されています。オンライン診療を希望する場合は、まずはアプリを選んでダウンロードするところから始めます。
もし、特定の病院で受診したい場合は、その病院がオンライン診療を行っていることを確認する必要があります。その病院がオンライン診療を行っていない場合は、対応しているほかの病院に変えるか、オンライン診療を諦めるしかありません。また、病院を切り替える場合は、当初一定期間は対面診療を受ける必要があるため、通院可能な場所にある病院を探す必要があります。
オンライン診療の流れ
・アプリをダウンロード
↓
・登録されている病院を選んで予約する
↓
・問診にオンラインで回答
↓
・ビデオ通話による診察
↓
・クレジット決済
↓
・自宅に処方箋が届く
↓
(・データ管理)
ただし、初回の受診をはじめ、次のような場合はオンライン診療は受けられません。
- 急性症状がでている場合
- 検査や手術を受ける場合
- その他、医師からオンライン診療での受診を許可されていない場合
費用は、診察費のほか内容によっては予約料と処方箋の費用がかかります。また、処方箋薬局で薬を買うことで薬代もかかります。これらをクレジットカードで支払うこともできます。
オンライン診療は広がる?
環境的な問題から考ええてもオンライン診療は今後広がるだろうと容易に想像ができます。2018年4月からオンライン診療が保険診療となったことで、私たちの生活から「待ち時間」が消えてラクになりそう!と期待した人も多いことでしょう。
ところが実際には、オンライン診療の算定対象になるのは、所定の疾患で長期の通院が必要な患者に限られるようです。厳密にいうなら、病院が加算できる「オンライン診療料」(月70点)は、初診から6カ月以上経過した患者に対して算定できることになっていて、言い換えれば、6カ月以上経過しないと算定できないのです。その間は対面になるわけです。この辺りがネックになるといわれています。
個人的には、時短はもちろんしたいものの、今の担当医(かかりつけ医)との関係が良好な場合には替えることを躊躇するのではないかと思います。そのため、オンライン診療が一気に広がるのは難しいのでは?と予想します。実際にはどうなるか、今後の動向を見ていきたいものです。
参考
- オンライン診療の適切な実施に関する指針(案)
www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku…/0000197016.pdf
- スマホで医師とつながれば何が変わるのか
https://www.businessinsider.jp/post-165213
- 「遠隔診療」のより広い解釈、厚労省が明確化
//tech.nikkeibp.co.jp/dm/article/NEWS/20150818/432088/?ST=health
- 厚生労働省平成27年8月10日事務連絡 「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」
//www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000094452.pdf