8月から高所得高齢者の医療・介護の負担が増加。介護は3割負担に!

いよいよ医療・介護サービスの受益者負担が目に見えて増えてきました。8月からは、高所得の高齢者は、医療費の「高額療養費」の負担が増えるほか、介護サービスも3割負担にアップします。詳しく見ておきましょう。

目次

2025年問題はスタートにすぎない!?

団塊世代が後期高齢者になり、「大介護時代」に突入するとされる2025年。厚生労働省によると、日本人の5人に1人が75歳以上の「後期高齢者」となると予想されています。

しかし、高齢者人口がピークを迎えるのは2040年頃と推計されています。2025年はあくまでもスタートにすぎず、私たち生活者も75歳以上の人口が増加することに伴うさまざまな問題に直面するという覚悟が必要なようです。

図表1は医療・介護給付費の将来見通しです[経済財政諮問会議資料(2018年5月21日)]。現状の受療率や利用率を基にしたデータですが、2040年度には、このデータよりも、医療は▲1.6兆円、介護は+1.2兆円になることが予想されています。その理由は次のように説明されています。

<医療>2040年度に▲1.6兆円

「病床機能の分化・連携が進むとともに、後発医薬品の普及など適正化の取組みで、入院患者数の減少や医療費の適正化が行われる」

<介護>2040年度に+1.2兆円

「地域のニーズに応じたサービス基盤の充実が行われる」

介護は比較的新しいサービスでもあるためか、いまより充実の傾向はあるものの、医療については引き締めがかかるようです。いずれにしても、社会保障費の増大を抑えるために、サービスの縮小や受益者負担(特に高所得者)が増えることは避けられないでしょう。

図表1 医療・介護給付費の見通し

図表1 医療・介護給付費の見通し

出典:経済財政諮問会議資料(2018年5月21日)

70歳以上の高額療養費制度が一部負担増!

医療費の自己負担は、70~74歳は2割または3割、75歳以上は、1割または3割の自己負担です。75歳以上は後期高齢者医療制度の対象です。世帯に1人でも住民税の課税所得145万円以上の人がいる場合は、3割負担になります。

医療費で重要なのは、負担割合以上に、月負担の上限額のラインである「高額療養費制度」です。1カ月間(1日から末日まで)に同じ医療機関で受診し、自己負担限度額を超えた場合に、超えた分が支給されて軽減される仕組みです。過去1年間に3回以上、高額療養費の支給を受けた人・世帯は、4回目以降は「多数該当」となり上限額が下がる仕組みもあります。

70歳以上の高額療養費制度が、2018年8月から一部負担増になります。特に所得が高い人ほど負担は大きくなります。現役並み所得の区分でも、年収約370万円~約770万円の人はこれまでと変わらず<80,100円+(医療費-267,000円)×1%>のままですが、それ以上の年収だと負担増になります。特に年収が1,160万円以上の方は、<252,600円+(医療費-842,000円)×1%>と3倍超になります。また、一般区分の通院も、14,000円→18,000円へと負担が増えました。

図表2 高額療養費制度(70歳以上)
区分~2018年7月2018年8月~
通院
(個人)
入院と通院
(世帯)
通院(個人)入院と通院
(世帯)
現役並み年収約1,160万円~57,600円80,100円+(医療費-267,000円)×1%
<44,400円>
252,600円+(医療費-842,000円)×1% <140,100円>
年収約770万円~1,160万円167,400円+(医療費-558,000円)×1% <93,000円>
年収約370万円~約770万円80,100円+(医療費-267,000円)×1% <44,400円>
一般年収約156万~約370万円14,000円(年間上限14.4万円)57,600円
<44,400円>
18,000円(年間上限14.4万円)57,600円
<44,400円>
住民税非課税等住民税非課税8,000円24,600円8,000円24,600円
住民税非課税(年金収入80万円以下など)15,000円15,000円
<>の金額は過去12ヶ月に3回以上高額療養費の支給を受けた場合の4回目以降の限度額(多数回該当) 

介護サービスの負担も高所得者は3割へ

介護保険の負担も増えます。2018年8月より「現役世代並みの所得がある人」の利用者負担割合が見直され、特に所得の高い層の負担割合が3割にアップします。これまでは、「現役世代並みの所得がある」=2割負担で、そうでない人=1割負担、と2区分だったものが、3区分に増えます。

3割負担になるのは、「合計所得220万円以上」です。単身世帯で年金+他の所得が340万円以上、65歳以上の2人以上世帯であれば、年金+他の所得が463万円以上。厚生労働省の予想では、3割負担になるのは、介護保険利用者のうちの3%程度とのこと。

図表3 居宅サービスの支給限度額と自己負担額
要介護度利用限度額(月)限度額まで利用したときの自己負担額(月)
合計所得160万円未満合計所得160万円以上合計所得220万円以上
1割負担2割負担3割負担
要支援150,0305,00310,00615,009
要支援2104,73010,47320,94631,419
要介護1166,92016,69233,38450,076
要介護2196,16019,61639,23258,848
要介護3269,31026,93153,86280,793
要介護4308,06030,80661,61292,418
要介護5360,65036,06572,130108,195

※大都市は利用料が高く、支給限度額は上記よりも高くなる。

介護にも「高額介護サービス費」がある!

医療保険に「高額療養費制度」があるように、介護サービスにも同じ位置づけの「高額介護サービス費」があります。自己負担額を超えると払い戻される仕組みです。対象となるのは、介護サービスを受ける際の自己負担額(1~3割)で、住宅改修費の自己負担分や、全額自己負担で利用する分、施設サービスの居住費や食費などは対象にはなりません。

この高額介護サービス費も、じわじわと上がってきています。2017年の見直しで、一般区分は37,200円→44,400円へとアップしました(2020年までの3年間は、年間上限446,400円という暫定措置あり)。この高額介護サービス費、2018年は特に変更がないため、表2で見てきたように、高所得で3割負担になっても月の上限額は44,400円。これを超えた分が戻ります。

そのため、3割負担になっても特段の負担増にはなりません。実質的な負担は月44,400円で変わらないわけですから。

ただし、これはあくまでも現状の話です。医療保険で同じことが起きたように、じわじわと高額介護サービス費の上限額が上がる可能性は大いにありえるでしょう。特に所得の高い層は将来的に、介護の負担ももっと増える覚悟をしておく必要がありそうです。

図表4 高額介護サービス費
区分負担上限額(月)
現役並み所得者に相当する人がいる世帯44,400円(世帯)
本人または世帯員が住民税を課税されている44,400円(世帯)
*1割負担者のみの世帯は年間上限額が446,400円(2020年まで)

世帯全員が住民税非課税

・被保険者本人の合計所得金額と課税年金収入額の合計額が80万円以下24,600円(世帯)
15,000円(個人)
・上記以外24,600円(世帯)
生活保護受給者15,000円(個人)

参考

  • 経済財政諮問会議資料(2018年5月21日)

 //www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2018/0521/agenda.html

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この記事を書いた人

経済誌・経営誌などのライターを経て、1994年より独立系ファイナンシャル・プランナー。FPラウンジ 代表。個人相談やセミナー講師の他、書籍・雑誌の記事や記事監修などを行っている。95年、保険商品の全社比較を企画・実行して話題に。「保険と人生のほどよい距離感」をモットーに保険相談に臨んでいる。ライフワークとして大人や子どもの金銭教育にも携わっている。座右の銘は「今日も未来もハッピーに」。

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