自然災害の増加で火災保険料の値上げ傾向は続く?

台風なみに発達したいわゆる「爆弾」低気圧が日本列島を襲い、各地に暴風雨の被害をもたらしました。トラックが横倒しになり、民家の屋根が吹き飛び、電信柱が倒れ、河川が氾濫しました。またその3週間前には茨城県で鬼怒川の堤防が決壊し、多くの犠牲者が出てしまいました。そしてまだしばらくは台風の発生に注意すべき季節が続きます。

ここ数年の日本では台風や突風や集中豪雨などの自然災害の威力が増し、被害も大きくなっていると感じる人も多いことでしょう。
風水害の被害が大きく膨らめば、その損害を補償している損害保険会社の保険金支払いも膨らむことになります。そうした事情から、この10月1日に火災保険の保険料が値上げとなりました。

風水害損害保険:15年度1000億円超「火災」引き上げ(毎日新聞)

台風などによる被害が相次いだことで2015年度の風水害の保険金支払額が1000億円を超える見通しになり損保各社は10月から火災保険料を一斉に引き上げる方針だ。

地震保険、基準料率まず5.1%上げ 全国平均 17年1月に改定(日本経済新聞)

損害保険料率算出機構が家庭向け地震保険の基準料率を2017年1月に全国平均で5.1%引き上げると発表した。21年まで残り2回の引き上げを予定しており、合計の上げ幅は計19.0%となる見込み。

今後も自然災害の増大を背景にさらなる値上げもあるかもしれませんし、地震保険の保険料が2017年1月から値上げの予定であることが既に発表されています。
このタイミングで、火災保険コストアップの現状と補償の基本について触れてみようと思います。

目次

火災保険の補償対象は「火事」だけではありません

火災保険が補償するのは「火災」、つまり火事の被害だけではありません。落雷・破裂・爆発・風災・ひょう災・雪災・水災に加えて、近年では盗難や突発的な破損・汚損なども補償の対象です(保険会社によって、また保険種類によってこの範囲が狭いものもあります)。

先日あるお客様が契約中の火災保険をチェックしたところ、風水害などの補償上限額が火災の場合の10分の1に設定されていたことが分かりましたが、そのことには気づいておられませんでした。

また、突風で自宅の屋根が大破して大金をかけて修理したお客様がおられましたが、その方は風による被害が火災保険の対象とは知らず、私がお声掛けするまで請求をしなかったという事例もありました。
自然災害などでお家や家財が被害にあったら、とりあえずは保険会社や代理店に相談してみると良いですね。また日頃から(少なくとも更新手続きの際には)補償内容を確認することが大切です。

実は地域によって異なる値上げの実態

さて、先頃の火災保険の値上げの実態を少し見てみましょう。

自然災害の発生する頻度、確率は日本国内どこも同じではなく、したがって保険料は各地域で異なります。今回の保険料見直しで大幅にアップした地域もあれば、反対にダウンした例もあるのです。
実際にどのように異なるのか見てみようと、47都道府県について一般的な木造住宅の建物の火災保険(基本保障のみ)で試算してみたところ、やはりかなりのばらつきがあると分かりました。(保険会社や保険種類によっても異なります)

例えば東北方面の中で秋田県は約30%の値上げでしたが、福島県は20%強の値下げでした。徳島県は21%アップでしたが、同じ四国でも香川県は15%ダウンです。
これらの違いは台風被害や河川の氾濫、洪水、雪害などの発生頻度が、地域ごとに大きく異なっていることを反映したものと考えられます。
また、一般的な木造住宅(非・耐火構造)の保険料が20%以上値下げとなったのに、マンションの場合の保険料は若干値上げという福島県や香川県のように、建物の構造によっても値上げの状況が異なっています。

また、値上げ幅ではなく保険料額自体を比べてみると、北海道から東北、関東、北陸、近畿地方にかけてはほとんどが全国平均値より低いか若干高め程度なのですが、和歌山、高知などは平均より20%程度高めであり、更に九州に至ると平均保険料の50%ほど高めの県がほとんどとなっています。
これらは、この地域が毎年「台風の通り道」となっていることが主たる原因であろうと思われます。特に九州各県と沖縄の保険料はもともと高かったものが、今回の改定でも最も大きな値上げ幅(概ね35%以上のアップ)となっていました。

火災保険料を節約するには・・

さて、今回値上げとなった地域に限らず、自然災害の増加が予想される日本列島に住む私たちとしては、少しでも火災保険のコストアップを抑えることを考えたいところです。

最近の火災保険は、補償対象を広げたり狭めたりと、ある程度のオーダーメイド化が可能な商品が増えてきています。ご自宅周辺地域の危険性に合わせて、出来るだけ合理的な保険にすることはコストダウンにつながります。
まず、お住まいの地域のハザードマップをチェックしたり、地盤の性質など周辺環境を調べてリスクの大小を把握します。 そのうえで実情に合わせてカスタマイズする方向で保険会社や代理店に相談すると良いでしょう。

また、一般に火災保険は長期契約になるほど保険料総額が安くなります。
1年契約の場合の保険料を10,000円と仮定してして試算すると、5年契約の場合の1年分保険料は9,500円で5%割安になります。
更に5年契約で保険料を一括支払いすれば8,700円、10年一括払いの場合には8,200円となるのです。期間中に引っ越しなど何かの都合で変更や中途解約をする場合にも、基本的には残りの期間分の保険料は戻ってきますので、多くの方にとってこの削減策は検討の余地があるでしょう。(低金利の預金口座に置いておくよりも価値があるという考え方もあります。)

地震保険料の値上げはどうでしょう?

最後に2017年1月以降に値上げ予定の地震保険について少し触れておきます。

地震保険の保険期間は最長で5年までですので、値上げ前に5年契約をすることで数年間のコストアップを回避できることになります。
ただし、ほとんどの地域で値上げ予定の地震保険ですが、手元資料で調べた範囲では11の地域で若干の値下げもあり、また、建物の構造や建築年などによっても事情が異なりますから、個々のケース毎に実情を確認したうえで判断して下さい。

ご興味のある方は、保険会社の保険料決定の根拠となるデータを算出している損害保険料率算出機構のニュースリリースなどを参照してみて下さい。

2015年9月30日 損害保険料率算出機構ニュースリリース
//www.giroj.or.jp/news/2015/150930_2.pdf

参考

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この記事を書いた人

博多生まれの東京育ち。国立市在住30年。老舗機械商社営業マンから突然!脱サラ。当時外資系だった生命保険会社の営業マンとなり、独立自営へのステップとして成果報酬の保険営業を9年間経験。その後ファイナンシャルプランナー(FP)として独立し、現在は保険相談を中心に独立系FP事務所&総合保険代理店を経営している。
本当に必要で本当に役に立つ保障システムの構築と、資産の安定化の実現をサポート。誠実と向上心をモットーに顧客の利益最大化を目指す。

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