先日、「日経平均株価2万円超え、15年ぶりの高値」という大見出しが紙面を飾りました。
日経平均大引け、3日続伸 53円高で15年ぶり高値、業績期待で
4月23日の東京株式市場で日経平均株価は3日続伸して終値は2万187円となった。企業業績は拡大基調で、まだ上昇傾向との読みが優位を占めたようだ。また日銀による金融緩和の追加があるとの思惑も相場を押し上げたと見られる。
そしてこの日、夕方のTVニュースでは市場関係者の明るい笑顔とか、証券会社の前でインタビューに応じる個人投資家らしき人たちなどの画像が多く流れておりました。 こういうニュースに触れていつも私が思うのは『株価上昇を歓迎し小躍りしているのは、投資家自身よりも、株価上昇をネタにして売上増大を目論む営業マンたちだろう』というものです。
一般に賢い消費者は安い時にまとめ買いをし、高い時には買い物を控えるのが普通ですが、株式投資という特殊な世界での消費者は、どういうわけか値段の高い時に買いに行ってしまう傾向があります。人間の経済行動は合理性の追求を第一に決定されているわけではないことの一つの現れです。不思議な経済行動については別稿に譲りますが、とにかく株価上昇局面は「投資」という商品を販売する人たちにとっての大チャンスであることは間違いないわけなのです。
投資の世界の原理原則は「分散」と「長期運用」
ライフプラン相談で「資産運用や投資についてのアドバイス」を求められることがありますが、その際に特に強調することが2点あります。
一つ目は、変動資産に投資することも、反対に一切投資をしないことも、どちらにもリスクがあることです。
例えば現在のように超低金利時代に金利固定の積立商品のみで運用していれば、将来的に物価上昇について行けず、お金の実質価値が目減りするリスクがあります。 将来に向けてより良い資産運用をしたいのなら、少なくとも投資についての「検討」はするべきだということです。
二つ目は、投資する金融商品の資産価値や市場価格の将来予測は基本的に不可能であることです。
仮に予測が当たったとしてもそれは結果論であり、予測が当たり続けることはあり得ないということです。 ある程度の予測は可能である、ということにしておかないと商売にならない人たちが少なからず存在するため「市場を読むための技術指南」的な情報は多数出回っています。しかし、私はやはり、市場予測は不可能であるという大前提に立って投資をスタートさせるのが良いと考えています。
さて将来価値が予測できないリスク商品に、プロではない消費者が、可能な限り安全性を保って投資するにはどうすればよいかというと、次のような手段が挙げられます。 どんな投資入門書にも書かれているはずの投資リスク軽減策のキーワードは「分散」と「長期運用」です。
- 投資対象を分散する・・同じ種類の投資商品ではなく複数の(性格の異なる)対象に分けて投資することで、市場下落時の損失を少なくします。(例えば株式と債券、など)
- 投資金額を分散(少額に)する・・多額の資金を一度に投資せず、細かく分けて少額ずつ投資することで、市場下落時の損失を少なくします。
- 投資のタイミングを分散する・・ある時に一度にドンと投資するのではなく、定期的に時期をずらして投資します。投資すべき絶好のタイミングを探すという至難の技を使わなくて済みます。
- そして、運用成果を短期的に追うのではなく、ある程度の長期間(少なくとも5年以上場合により20年超)の運用で、コツコツ投資して、ジワジワと資金が増大するのを気長に待つのです。
上記のように、分散された対象に、一定期間に一定金額を、市場動向に右往左往することなく、地道にコツコツ投資を続ければ、お祭り騒ぎに乗せられることは無いので、割高な買い物をしたり、下降局面で慌てて売ってしまったりすることがなくなります。そして毎月の予算が決まっているのですから、価格が高い時には買い控え、低い時には多く仕入れるという結果にもなります。
投資手段としての変額保険という選択
さてこのへんで、テーマである変額保険に目を向けましょう。ここで取り上げるのは変額保険の中でも、保障が一生涯継続する「変額終身保険」です。
【変額保険とは?】
資産を株式や債券を中心に運用し、運用の実績によって保険金や解約返戻金が増減する保険のことです。大きく分けて、保険期間が一定の「有期型」と一生涯保障が継続する「終身型」の2タイプあり、 死亡したときには、基本保険金+変動保険金を受け取ることができます。基本保険金額は運用実績にかかわらず最低保証されるため、変動保険金がマイナスに なった場合でも基本保険金額は受け取ることができます。解約時に受け取る解約返戻金には、最低保証はありません。出典:生命保険文化センター
変額終身保険の、投資初心者の入門用商品としての価値を確認してみましょう。変額終身保険の保険料払い込みの期間は例えば20年とします。
死亡時および高度障害時の保険金額には最低保証があり、保険料は20年で支払いが終わりますが保障は一生涯継続します。この保険の積立金(解約返戻金が元になる)は運用成果に応じて増えてゆく可能性がありますが、変額なので最低保証はありません。積立金は随時、死亡保障額を減らすことで一部を受け取ることができます。例えば子供が独立し、保障を減らしても良い時期になったら死亡保障を減額し、減額分に応じた積立金を受け取れば、それまで払いこんできた保険料が、結果的に老後資金原資として活用できるということでもあります。
変額保険では一般の保険とは別の「特別勘定」で資金運用されますが、保険料から経費や保障のための準備金など一定の金額を差し引いた資金がこの特別勘定に投入されます。保険会社によっては「世界株式」「日本株式」「世界債券」「国内債券」など数種類の運用勘定を有していて、契約者がそれを選んだり組み合わせたりできるものがあるのです。
さて、この保険を生命保険であると同時に「資金運用手段でもある」という視点から特長を述べると次のように説明できます。
- 毎月定額を20年間にわたって保険料として支払うのだから、長期間の少額のコツコツ投資である。
- 運用手段(投資対象)を自分の方針に合わせて分散し、組み合わせることが可能(分散割合は途中で変更できるものもある)。
- 運用成果については随時確認できるので、資金の状態を把握できる。
- もしも運用が長期間低迷し、積立金が期待よりも大きく下回る結果となってしまった場合でも、死亡保険金は保証されているのだから保険として継続すればよい(ついに生きているうちに好転しなくても、最終的には保険金として次世代に渡せる) 。
変額保険と投資信託の比較については「資金運用が目的なら、運用以外のコストが高い変額保険よりも投資信託を直接購入すべき」というのが教科書的な解説です。 しかしながら、長期間安定して運用できそうな投資信託を探し出し、しかも複数種類を選び、その分散割合とタイミング分散のルールを冷徹に守り、市場の動向に左右されずにコツコツと投資し続けるという行為が長期間実行出来るのかと言えば、私などには到底出来そうにもありません。
そんな投資の初心者が、この保険を投資入門商品として、教材として活用するのであれば、悪い選択ではないと思います。 但し「自分には終身保障の生命保険の必要性は全くないしその意義も理解できない」と仰る方と、「株式投資はするなというのが我が家の家訓です」という方には、お勧めしない方が無難ですね。
《追記》
「3日連続2万円超え」というニュースから8日後の30日の日経平均終値は、今年最大下げ幅を記録しました。しかし前記のようなコツコツ長期投資を実行中の地道な個人投資家なら、このような上がった下がったという短期的な変動情報に右往左往する必要はないのです。
参考
- 日経平均大引け、3日続伸 53円高で15年ぶり高値、業績期待で
//www.nikkei.com/markets/kabu/summary.aspx?g=DGXLAS3LTSEC1_23042015000000