近年日本では少子化などを背景に空き家が増え続けており、平成25年住宅・土地統計調査 特別集計によれば、全国の空き家の総数は820万戸、総戸数に占める割合は13.5%だそうです。820万戸のうち318万戸が「長期間にわたって住民不在の住宅」や「建て替えのために取り壊すことになっている住宅」であり、この中には老巧化して近隣住民のリスクとなり得る建物が相当数含まれていると考えられます。
所有者不明空き家、初めて特措法適用し市が撤去
高齢化や人口減で空き家は増え続け、総務省の2013年調査によると、全国の全住宅の14%にあたる約820万戸に上る。今回撤去対象の住宅は、住民から市に「屋根や外壁が通学路に落下する可能性がある」と苦情が寄せられていたもの。 費用150万円は市が負担する。
先般ニュース報道されたのは長年にわたって所有者が不明の建物で、屋根が落ちてきそうだ、建物が崩壊しそうで怖いといった周辺住民の訴えを受けて、横須賀市が特別措置法に基づいて強制的に取り壊したのです。
人が住まないと住宅は荒れると言われますが、放置された空き家の周囲には雑草がはびこり、害虫、動物などが増えて衛生上問題となります。不審者の隠れ場所となったり、犯罪に利用されたりという保安面の心配もあり、更に老巧化が進めば屋根や外壁が落ちたり、塀が倒れる、家屋自体が崩壊するなど不安いっぱいとなってしまいます。
育て「空き家管理士」、実地研修でレベル向上 民間資格創設
倒壊の恐れや不衛生などの空き家問題が全国的に関心を集め、先頃全国初の行政による取り壊しがニュースとなったばかり。これを背景に所有者の代わりに適正に管理できる専門家を育成する動きが始まっている。一般社団法人「空き家管理士協会」(東京)は、民間資格「空き家管理士」を創設し、合格者を対象とした実地研修などを通じて管理士のレベルアップにも力を注いでいる。
自宅あるいは実家の住宅がこのように人々に不安や不快をもたらすことの無いように、空き家対策としての保険の可能性を考えてみました。
損害保険による対策
親御さんが住んでいた住宅を相続したものの生活拠点は別の場所にあり、そのままになっているという空き家も少なくないようです。また、介護施設や療養施設に入所して実質的に空き家状態となった住宅もあるでしょう。そんな空き家が火災や自然災害の被害にあった場合に備えて、ご自身が住んでいない住宅の火災保険もきちんと把握しておくべきですね。
自分の生活拠点でないからと言って、台風の被害などにあった建物をそのままにしておいては、近隣に不安を与えたり実際に倒壊などで二次被害を与えてしまうことも考えられます。火災保険の保険金は、住宅の損害(所有者がうけた価値の損失)に対して支払うものですから、保険金をその修理に使うかどうかは問われません。何に使うのも自由なのですから、損害保険金をその建物の取り壊しや整地などの費用に充てても何の問題もないのです。
建物自体の修復と近隣への配慮も考えて、火災保険に加えて、損害賠償請求に備えるための個人賠償責任保険の加入も是非検討して下さい。(火災保険に賠償責任補償特約をプラスする方法もあります)
自宅を新築した時や住宅ローンを組んだ時に加入したまま、火災保険のことは忘れている人も少なくないようです。増築したのに床面積が契約当初のままであったり、家族構成が変わり家財が大幅に減ったのに内容変更していないなども時折見られます。
空き家対策という観点も加味して、火災保険の契約内容を再確認してみては如何でしょうか。
生命保険による対策
自分が死亡した後に我が家が空き家となる可能性のある人は、その対策としての生命保険加入を検討すべきかもしれません。生命保険の死亡保険金が空き家の処分などに必要な遺族の費用負担を軽減することが出来るでしょう。また、病気や事故で寝たきり状態となって意識回復が望めない状態となった場合などにも「高度障害保険金」が家族の負担の軽減に寄与するでしょう。
ご高齢であったり病気がちで一般の生命保険の加入が困難な場合は、健康上の加入要件が緩和されている「引き受け条件緩和型の終身保険」や、告知が不要で高齢者でも加入できる「一時払い終身保険」が検討対象となります。これらの終身保険は一般的な終身保険と比べると支払い保険料が高いのですが、相続税法上の非課税枠や、受取人の指定・変更が可能であること、他の相続財産とは別に管理できることなどのメリットがあります。
また仮に、空き家懸念が生前に解消して死亡保険金が不要になった際には、保険を取り崩して(解約や減額で)積立金を自分のために使うこともできるのです。
広い意味での老後対策として機能する終身保険は、長生きの可能性が高い奥さまの加入も含めて検討すると良いでしょう。
家を持つなら空き家対策を
ライフプランでいう「死亡後の整理資金」はお葬式費用だけなのではなく、また「相続対策資金」も納税資金だけに限らず、「老後対策」は医療・介護対策だけではないというわけですね。ご自身の自宅やご実家が「特定空き家」と化して周りの不安要因とならないために、損害保険や生命保険も一役買うかもしれません。
私ごとですが高齢の両親が住む私の実家でも、隣家が空き家となって1年以上が経過しています。庭のみならず玄関前にも背の高い雑草が蔓延って、人が住んでいないことが一目瞭然です。両親の依頼を受けてご子息の家族に連絡をしたところ、雑草の始末などをしてもらえました。たまたま連絡先がわかったから良かったのですが、そうでなければ不安な状態がもっと続いたかもしれません。
日本の空き家問題は、我々にとって益々身近なリスクとなってゆきそうです。
参考
- 平成25年住宅・土地統計調査 特別集計|総務省統計局
//www.stat.go.jp/data/jyutaku/2013/tokubetu_2.htm
- 所有者不明空き家、初めて特措法適用し市が撤去。
//www.yomiuri.co.jp/national/20151026-OYT1T50037.html
- 育て「空き家管理士」、実地研修でレベル向上 民間資格創設
//www.nikkei.com/article/DGXLASDG02H0P_S5A101C1000000/
- 災保険の適切な補償と選び方を考える|火災保険の教科書
https://hokensc.jp/kasai/
- 生命保険の教科書 | 生命保険を合理的に選ぶための3ステップ
https://hokensc.jp/seimei/