生命保険会社による高齢契約者「支払い漏れ対策」はどうなっている!?

急速な超高齢社会が進む中、2014年以降、保険業界の大きな問題としてクローズアップされているのが、「高齢契約者への支払い漏れ」です。長年、保険料を支払い続けてきた保険が、出口のところで役割が果たされていないのは大きな問題といえます。

目次

高齢契約者への「支払い漏れ問題」はなぜ起こるのか?

65歳以上の人口はすでに約3400万人となり、全人口の26.8%を占めています。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年には約3660万人(30.3%)に増える見込みで(平成27年高齢社会白書)、しかも65歳以上の1人暮らし率も34.8%と見込まれています。さらには、認知症高齢者は470万人に上るとみられています。

超高齢社会が急速に進む中、ある意味、起こるべくして起きてきたのが、高齢契約者への支払い漏れ問題です。

認知症になるなど意思能力を失うことで、請求できる契約があっても請求されないケースや、亡くなっても請求する人がいないケース、1人暮らしで家族が保険契約の存在を知らないケースなど、支払い漏れの原因にもさまざまなものがあるようです。引越しや介護施設への入居等で保険会社からの郵便物も届かなければ、家族が同居していても契約に気づかないかもしれません。

生保協会が昨年夏以降に各社に対して行った高齢契約者への支払い漏れの実態調査(アンケート)では、約20億円の未払いが確認されました(発覚した未払いはすでに支払われ、ほぼ解消)。その後、各社は『高齢者向けサービスに関するガイドライン』に従い、「請求を受けたら支払う」のではなく、「積極的に支払う」姿勢へと転換してきました。各社それぞれの工夫によって、保険金を確実に支払うための取り組みが徹底されています。

明治安田生命ではどう取り組んできたか

2015年12月に、明治安田生命のFP向け勉強会で、高齢契約者へのアフターフォローの取り組みについて話を聞く機会があったため、その時の話を整理してみます。

まず、2012年度から2013年度にかけて、段階的に90歳以上のすべての契約者への訪問・電話での「請求確認」を実施(約11,690件)。確認が取れた人、亡くなっていた人、介護施設や病院へ入院中、連絡が取れない人などに分類されました。

最終的には、提携金融機関の窓販による契約者も含め、全件で確認が終了。確認が取れなかった人に対して、3親等以内の親族を探して確認したり、住民票で確認するなども行い、最後までどうしても連絡が取れなかったのが20件残ったそうです。ちなみに、請求権の時効は3年ですが、明治安田生命では時効の適用はしないそうです。これは他社も同様のようです。

その後の明治安田生命の取り組みとして特筆すべきものとしては3つあります。

1.MY安心ファミリー登録制度(2014年10月~)

契約者以外の第二連絡先を登録してもらい、連絡が届かなかった場合などにはこの第二連絡先に確認する制度。

2.高齢者へのアフターフォロー態勢の高度化(2014年12月1日)

高齢契約者の保険金・給付金支払いに関わる能動的な「請求確認」の態勢を整備し、支社・営業所等に所属する約3.5万人の営業職員・役職員により万全のアフターフォローを実施。契約者が保険金や給付金を請求した際に、他にも請求可能な保険金・給付金がないか調査・確認し、必要に応じて積極的に「請求案内」をするだけでなく、契約者からまだ請求がない段階から請求の有無について確認をする、といったことが挙げられます。

3.MY長寿ご契約点検制度(2015年4月~)

長寿祝賀を迎えた契約者の方に「請求確認」と「連絡先確認」を実施する独自の点検制度。満年齢で77歳(喜寿)、90歳(卒寿)、99歳(白寿)、108歳(茶寿)、111歳(皇寿)を迎えると、明治安田生命から返信はがき付き契約点検制度のお知らせが送られます。はがきで聞いているのは、次の2点。

  • 郵便物のお届け先として、宛先の住所に変更はありますか
  • 保険金請求や契約者・受取人変更等が必要ですか

住所や名前の記入欄もありません。契約者本人が記入できない場合は、家族が所定のフリーダイヤルに連絡を入れる仕組みになっています。

はがきでの返信や電話がないと、保険会社側から電話をかけて確認する流れになっています。電話で確認できないときは、77歳の方のみはがきを再送し、それ以外の方は職員が訪問して確認を行うことになっています。

他の生命保険会社の取り組み

高齢契約者への支払い漏れ対策は業界全体の動きとなっています。そのため、各社それぞれが工夫を凝らして高齢契約者への支払い漏れをなくすべく、積極的に支払いを行う態勢を整えています。

日本生命は昨年10月より、70歳以上の保険契約者について、別居の家族にも契約内容の確認書を、毎年送付し始めています。

また、報道によると、太陽生命は2016年4月より、内勤職員が70歳以上の契約者を訪問するサービスをスタートする予定。朝日生命でも同じく4月より、要介護認定を受けた契約者の医療・介護の給付金の請求について医師の診断書を無料で取得代行するサービスを始める見込みです。

営業職員の多い国内社などでは人海戦術による高齢契約者の確認も可能ですが、代理店販売や通販を行う保険会社では、なかなかそうはいきません。代理店や保険ショップでの販売が主流のアフラックでは、2016年下期(7~12月の間)をメドに、郵便配達員がアフラックの案内を直接手渡しすることで安否確認を行う仕組みを導入予定です。「当初は70歳以上の契約者の一部(払済契約者などを中心に約10万人)でスタートする見込み」(広報部)だそうです。

なお、以前このコーナーで書いた「高齢者への保険金支払い漏れをなくす安否確認。第一生命では過疎地をヤマトに依頼」について現状を確認したところ、あくまでもスポットの利用で、現在はヤマト運輸の利用はないとのことでした。

契約者側にできること

終身保険に終身型の医療保険やがん保険、介護保険をはじめ、長期でお世話になる保険に入っている人も少なくないことでしょう。この機会に、まずは自分の利用している保険会社の高齢契約者へのアフターフォローについて確認しておくといいでしょう。

自分でも家族に保険に入っていることを告げておくなど、自衛策をとることも大事です。また、親が老いてきたら、入っている保険の有無や内容などについても話題に出して、把握しておきたいものですね。

参考

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この記事を書いた人

経済誌・経営誌などのライターを経て、1994年より独立系ファイナンシャル・プランナー。FPラウンジ 代表。個人相談やセミナー講師の他、書籍・雑誌の記事や記事監修などを行っている。95年、保険商品の全社比較を企画・実行して話題に。「保険と人生のほどよい距離感」をモットーに保険相談に臨んでいる。ライフワークとして大人や子どもの金銭教育にも携わっている。座右の銘は「今日も未来もハッピーに」。

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