先日、子供が生まれ、将来の教育資金をどうしようか悩んでいます。
学資保険でも、元本割れするようなものだったら考えものですが、最近では利率の高いものも販売しているようですし、コツコツ貯金する自信もあまりありません。
自分なりに少し調べてみたのですが、学資保険で利率の良いものか、終身保険で学資のかわりにするかと考えています。
「学資保険や終身保険で教育資金の積み立てをするか?」「いやそもそも必要ない、もっと別の貯蓄手段がある」など、もし加入する場合は、かけ金なども含め、ご意見をお聞かせいただけたら幸いです。
参考までに子供は1人目なのですが、できれば2人欲しいと考えており、子育てがひと段落したら妻も働き共働きとなる予定です。
年収は現在、手取りで、約500万です。
また、住宅ローンをかかえており、その返済が月9万ほどとなっております。
それ以外のローンはありません。
(36歳 男性)
CFPR、証券外務員一種、DCアドバイザー資格保有 スキラージャパン株式会社 取締役 伊藤亮太
結論から言えば、教育資金をご自身で確保する自信のない方は「学資保険」や「終身保険」など何らかの積立商品でコツコツ貯めていくのがよいと思います。
ただし、保険ですべてまかなうというよりは、保険もうまく活用しながらその他の貯蓄手段も利用して教育資金を貯めることが無難と考えます。
教育資金の準備は、なんといっても子どもが生まれてからすぐ対処することがよいといえます。教育資金をどれぐらい貯めるべきかは、子供の進路によって異なるといえますが、どういったパターンで進路を決めた場合でも資金的に困らないようにすることが望ましいといえます。
文部科学省「子どもの学習費調査」からおおよそ1人の子どもにかかる教育費(学校教育費、給食費、塾や参考書代など)を算出すると、幼稚園から高校まで公立、大学も国立の場合でおおよそ1,021万円かかる見込みです。幼稚園から高校まで公立、大学が私立文系の場合には1,193万円、大学が私立理系であれば1,315万円ほどかかる見込みです。幼稚園から中学校まで公立、高校と大学は私立(大学は文系)であれば1,368万円ほどかかる見込みであり、すべて私立の場合(大学は私学理系)には、2,490万円かかる見込みです。
ここから推測すれば、子供1人あたり最低でも1,000万円、場合によっては2,500万円ほどかかる方もいるということです。大学院に進学や下宿するということがあれば更に費用はかかります。
区分 | 幼稚園 | 小学校 | 中学校 | 高校 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
すべて公立 | 69万300 (公立) |
183万4,842 (公立) |
135万1,020 (公立) |
115万9,317 (公立) |
503万5,479 |
幼稚園だけ私立 | 580万7,460 | ||||
高校だけ私立 | 677万6,610 | ||||
幼稚園と高校が私立 | 146万2,281 (私立) |
853万4,142 (私立) |
388万5,468 (私立) |
290万448 (私立) |
754万8,591 |
小学校だけ公立 | 1,008万3,039 | ||||
すべて私立 | 1,678万2,339 |
※学習費とは、学校教育費、給食費、学校外活動費(塾や参考書代など)を合計したものをさす。
(出所)文部科学省「平成24年度 子どもの学習費調査」
国立(4年) | 私立短大(2年) | 私立文系(4年) | 私立理系(4年) | |
---|---|---|---|---|
入学費用 | 79.6 | 81.8 | 94.0 | 103.3 |
在学費用 | 438.8 | 304.6 | 596.8 | 709.2 |
合計 | 518.4 | 386.4 | 690.8 | 812.5 |
※在学費用とは、授業料、通学費、教科書代などの学校教育費とおけいこごとなどの家庭教育費を合計したものをさす。
(出所)株式会社日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果(国の教育ローン利用勤務者世帯(平成25年度))」
こうして金額を見てしまうと、子供の教育費がいかにかかるかが分かると思います。しかしながら、これらの資金を一度に貯める必要はありません。一般的には中学校もしくは高校まで公立、高校や大学は私立というご家庭が多いと思われますので、一つの目標として、中学校卒業時までに高校と大学の教育費を、もしくは高校卒業時までに大学の教育費をある程度カバーできるようになっていれば問題ないといえます。公立に通う場合には、1年間あたりで見れば負担はそれほど大きくないといえますので、日々のやりくりで何とかなると思いますが、私立に通うとなるとある程度資金が必要になります。そのため、長期的に考えた場合、高校や大学に行くための教育資金を前もって準備しておくことができるかどうかがポイントといえます。
このように考えれば、事前にコツコツ貯めていくことが望ましいことが分かると思います。
それではどのように貯めていくのがよいのでしょうか。この点に関してはご自身にとって最も楽に貯めやすいと思われる方法を検討することがポイントといえます。
例えば、<事例>の方のように、「コツコツ貯金する自信がない」ため、学資保険の利率の良いものか、終身保険で学資の代わりになるものをお考えであれば、保険料品で貯めていく形でよいかと思います。
ただし、この場合に考えておきたいのは、今後金利が上がる可能性がある点です。子供が生まれてから15年、18年、20年といった期間積み立てていくため、15年後や18年後がどうなっているかは予測は難しいもの。その時に学資保険のように長期固定金利のものは、その時々の金利の情勢によっては不利となるケースも想定されます。そのため、利率の良いものを選ぶと同時に、先行きの金利動向にも目を配らせる必要があるといえます。
その他、保険は途中で解約すると支払った掛金よりも戻ってくるお金が少なくなることがある点もあらかじめ知っておく必要があります。
なお、学資保険など保険の良いところは、万が一親(契約者)が死亡した場合には学資保険は以後の保険料が免除になること、終身保険であれば保険金が支払われることでしょう。保険金が支払われたり、以後の保険料が免除になれば、親に万が一のことがあった場合でも子どもの教育費をある程度カバーすることができるといえます。保険のメリット、デメリットをあわせて考えると、学資保険など保険だけに頼るのではなく、保険と積立貯金などあわせた形で貯めることが無難といえるのではないでしょうか。
それでは、保険以外の貯め方には何があるのでしょうか。職場に財形貯蓄制度があるならば「財形住宅貯蓄」を活用されるとよいでしょう。え?なんで住宅?と思われるかもしれませんが、財形住宅貯蓄は積立てから5年経過した場合には住宅貯蓄目的以外での引き出しにおいても利子が非課税となります。一般財形では利子は非課税にはなりませんので、財形住宅貯蓄により給与天引きでコツコツ貯めていくのは理に適っているといえます。
銀行の「自動積立定期」や郵便局の「積立貯金」を使う方法もあります。職場に財形制度がない方や自営業者でも利用でき、毎月一定の日に一定額を定期預金等に振り替えます。こうすることで、自動的に積立てが行われることになりますので、貯金する自信のない方に都合がよいといえます。ただし、貯めたお金はなかったものと考え、引き出そうとはしないでくださいね。
さて、それではいくらぐらい積み立てていけばよいのでしょうか。仮に高校までは公立、大学を私立とした場合には、大学の教育資金を重点的に貯めていく必要があります。この場合には私立文系で700万円程度は最終的に必要と考えると、掛金は保険と積立貯蓄の合計で月3万円(例:保険1.5万円、積立貯蓄1.5万円)ぐらいはほしいです。なぜならば、月3万円でコツコツ貯めて行った場合、18年後には利息を含めずに考えても648万円貯まる計算になります。18年間の利息を考慮すればもう少し増えているといえ、ある程度大学の教育資金はカバーできるといえます。
もしこれが苦しければ、毎月2万円(例:保険1万円、積立貯蓄1万円)でもよいと思います。18年後には利息含めずに考えても432万円になっているといえ、不足分は奨学金や大学入学後の貯蓄でカバーできると思います。ただし、これはあくまでベターな考え方であり、できれば教育資金で困ることのないように、意志をもって毎月可能な金額を3万でも4万でも着実に貯めるべきです。
事例の方の場合、夫婦共働きで手取り500万円あります。住宅ローンの支払いを考慮しても、現状は教育資金を十分貯めることができる環境にあると思います。2人目のお子さんも希望されていますので、2人目のことも考慮しながら着実に貯めていきましょう。
なお、2人目の子どもができたときには、育児休業等で奥さんの収入が減ることになるかと思います。そのため、育児休業される際に問題がでてこないかどうかも検討すべきです。今の時期に生活資金(一般的には生活費用の6ヵ月分)とは別の余裕資金をどの程度貯めることができるかが大きなポイントです。余裕のある時期に、教育資金などとは別に貯めておくことも考えておいた方がよいでしょう。そうすれば何かあった場合においても対処可能となります。
慶應大学大学院商学研究科修了後、証券会社にて営業・経営企画部門、社長秘書等を行う。また、投資銀行業務にも携わる。
現在、独立系FPとして、資産運用と社会保障(特に年金)を主に、FP相談・執筆・講演・を行っている。金融庁、日本証券業協会、大阪証券取引所、SBI証券、スルガ銀行、紀陽銀行などで資産運用講演多数。東洋大学経営学部ファイナンス学科非常勤講師
■著書
金融入門 基本と常識(西東社)
2013年版FP技能検定3級過去問題集(近代セールス社)
FP2級AFP重要過去問スピード攻略’12→’13年版(成美堂出版)
FP3級重要過去問スピード攻略’12→’13年版(成美堂出版)
現役講師が教える証券外務員二種テキスト&問題集(成美堂出版)
円安で利益倍増!ウマイ投資法がわかる本(インターナショナル・ラグジュアリー・メディア、一部執筆)など
NISAの仕組みと活用法について(近代セールス社、FP継続教育テキストとして執筆)
■主な講演・研修実績
実務に使える年金計算トレーニング(ゆうちょ財団)
確定拠出年金の見直しとアドバイス(ビジネス教育出版社)
NISAの仕組みと現状の経済状況について(SG浦安、郵便局など)
日本株で短期収益も逆張りも狙える!日経平均レバレッジETF、日経平均インバース(ベア)ETF上場記念セミナー(大阪証券取引所・SBI証券共催)
初心者のための株式・為替運用 クラス- 今すぐ始められる超実践型!資産運用術(オールアバウト「じぶん学校」)
FPから見た住宅購入環境、長期金利動向・見通し、住宅購入について(SBIマネープラザ)
事業承継におけるM&Aの活用法(JAバンクさいたま)など多数
我が家では、子ども3人の教育資金のほとんどを、学資保険をはじめとする保険で準備しています。
学資保険は、教育資金準備の有力な手段になると思われます。
契約者(親等)が万一時の保障も付いており、教育資金の積み立て方法として、十分に選択肢の一つ。
ある程度の目的を達成できているという理由から、学資保険の利用は検討に値する。
今は予定利率が非常に低いので、将来、金利が上がっても学資保険は低い金利で運用されることに。
今の学資保険は利率が低いので、教育資金づくりには「貯蓄は貯蓄、保障は保障」として分けて考えることをお奨め。
例: 「老後」「医療保険」などお悩みで検索
※ただいま新規のご質問を制限しております。