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老後資金の積み立てに個人年金保険は向いている?

現在30代の男ですが、老後の貯蓄として個人年金保険を検討しています。
個人年金保険は老後の積み立て手段としておすすめでしょうか?

また、民間の個人年金保険以外で、老後の積み立て手段として適しているものがあれば教えてください。(35歳 男性)

積極的には推奨しない

3つのメリットがある個人年金保険は老後の積み立てとして有力な選択肢

CFPR、1級ファイナンシャル・プランニング技能士村岡里香

老後資金づくりのコツは「自動的に貯まる」「引き出しにくい」「税金メリットがある」制度を利用すること。その点で個人年金保険は有力な選択肢のひとつといえます。

ただし、今の利回りに魅力を感じない人には投資信託の自動積立がおすすめ。可能であれば、DC(確定拠出年金)を活用し税メリットを享受しながら増やしましょう。

個人年金保険の三つのメリット

「老後の生活が心配で……これに入ったほうが良いですか?」
相談者が差し出して見せてくださるのは、たいてい個人年金保険の資料です。保険料の払込期間満了後に一定の年金を受け取れるイメージが描かれ、「返戻率〇〇%」の文字にはマーカーが引かれています。

某大手保険会社の個人年金保険では、現在35歳の人が月額1万5,000円弱の保険料を25年間支払うと、60歳から10年間、毎年50万円の年金を受け取れます。
保険料払込総額は433万円、受取総額は500万円なので返戻率は115%。この商品を魅力的と感じるかどうかは、人それぞれでしょう。

公的年金に頼れない今の時代、老後の生活に不安を持つ若い人が増えています。できるだけ早くから計画的に老後資金の準備を始めることで、その不安も解消できます。
とはいえ、先のことより今の生活を優先してしまいがちで、なかなか思うようにお金は貯められないものです。

個人年金保険は、次の3つの利点から、老後資金作りの手段として適しているといえます。
その利点とは、自動引き落としでお金を貯められること貯めたお金を引き出しにくいこと税金のメリットを受けられることです。 自動積立の方法としては、積立預金や財形貯蓄などもありますが、ついつい引き出して使っている人をよくみかけます。

個人年金保険の場合は、保険料払込期間中に解約すると元本割れするため、安易な解約はできなくなります。つまり自動的にお金を貯められ、さらにそれを引出しにくいので、確実に老後資金を準備しやすいしくみといえます。

加えて、「個人年金保険料控除」という税金面でのメリットも見逃がせません。

個人年金保険料を年間8万円以上払った場合、所得税、住民税をあわせた年間の節税効果は、課税所得196万円~330万円の人で6,800円、331万円~695万円の人で10,800円、696万円~900万円の人では1万2,000円になります(個人年金保険料を受けるためには、保険料払込期間が10年以上であること、年金受取人は被保険者と同一人であること、など複数の条件あり)。

たとえば、冒頭の例で、加入者が課税所得196万円~330万円の人であれば、年間保険料は実質的に6,800円安くなるということ。
個人年金保険料控除による節税メリットも加味した返戻率は、120%にアップします。中途解約すると元本割れするという点には注意が必要ですが、払込期間満了まで加入を継続でき、この返戻率に魅力を感じる人であれば、加入を検討しても良いでしょう。

ただし、現在は予定利率が史上最低水準を這っている状態です。
個人年金保険の利回りの魅力も大きく低下していることにはご留意ください。
さきほどから例で挙げている商品は、毎月の掛け金をおおむね0.7%(保険料控除を加味すると1%)の利回りで積立てたのち、その資金を10年間、約1%の利回りで運用しながら取り崩した場合と同じ成果です。
「返戻率」よりも、こうして「利回り」でみるといかに低いか実感できるのではないでしょうか。

資金を増やしたい人には投信積立がおすすめ

長期の積立期間があれば、自分で運用して個人年金保険よりももっと高い利回りで増やすことも十分に狙えます。

たとえば株式や債券、不動産などの資産で運用する投資信託は、少額資金から積立投資ができ、幅広い分散投資によって比較的安定的な運用ができる金融商品です。 当然、受取額は運用次第で変動することになりますが、将来の物価上昇に対抗できるという利点もあります。

個人年金保険の中には、変額年金といって、投資信託で運用し、その運用成果によって受取年金額が決まるタイプのものもあります。
しかし、コスト負担が重いので、自分で直接、インデックスファンド(代表的な株価指数などに運用成果が連動する投資信託)のような低コストの商品を購入する方が効率的です。

さらに、保険料は個人年金保険料控除の対象ではなく、「一般の生命保険料控除」の対象です。すでに他の保険で控除枠を使い切っている場合、保険料控除のメリットは受けられません。

自分で投資信託を購入する場合、利用できる人は確定拠出年金制度を使うのもオススメです。自分が払う掛け金は全額所得控除の対象、運用による収益は非課税、受取額には一定の控除が適用、という3段階での税制優遇をうけられます。
また一方で、運用資産は原則60歳まで引き出せないという制限があります。

確定拠出年金は、制度導入企業に勤めている人のほか、企業年金のない企業に勤めている人、自営業者も個人で加入することができます。確定拠出年金を利用できない人は、今年から始まったニーサ(少額投資非課税制度)を活用するのもよいでしょう。

老後資金を全額自分で運用するのは心配、という人は、年間8万円分は個人年金保険に加入し、残りは少額でも投資信託の積立にあててみる、という「ミックスプラン」も検討の価値ありです。
目標や資産状況、考え方にあわせて、自分に合った守りと攻めの組み合わせを考えてみてはいかがでしょう。

CFPR、1級ファイナンシャル・プランニング技能士村岡里香

コモディティ・FX会社、独立系FP事務所を経て独立。現在は企業や公的機関にて資産運用等マネーセミナーの講師活動を行いながら、子育て家計を中心に、家族の夢や価値観を大切にしたマネープランニングとその実行援助を行っている。

<コラム執筆>au-oneマネー「外貨コラム」、yahoo学習「受験生応援特集~知って得するお金の悩み相談室」、マネックス・ユニバーシティ「お金の相談室」、価格.com保険「シンプル設計でお手ごろな医療保険の選び方」<著書>「金融機関にだまされない! 「投資信託」で資産を3000万円貯める本 」

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