現在30代の男ですが、老後の貯蓄として個人年金保険を検討しています。
個人年金保険は老後の積み立て手段としておすすめでしょうか?
また、民間の個人年金保険以外で、老後の積み立て手段として適しているものがあれば教えてください。(35歳 男性)
CFPR、1級ファイナンシャル・プランニング技能士 STコンサルティング㈲代表 吹田朝子
20代30代の方から、「老後が心配で何で準備したらいいですか?」と聞かれることがよくあります。そんなとき私は、笑顔で首をヨコに振りながら「老後の生活は、今の生活の延長にありますよね!若いうちは、まず今の人生を謳歌できるようにお金を使っていただくのが一番だと思いますよ」とお伝えしています。
世間の平均データや他人との比較をしていては、お金を貯めても不安がつきず、キリがありません。そうではなく、「自分のやりたいことを追及していったら、自然と老後の生活イメージがわいて、自分サイズでお金があれば大丈夫と思えるようになった」という方を私は何人も拝見しています。
ですから、若いうちから不安感にかられて老後用にお金を貯めるのではなく、30代くらいまでは、結婚・子育て・仕事・趣味などの行動や投資も含めて、様々なことにチャレンジされることをまずオススメしています。そして、ひと通り経験して、ご自身の好みなどがわかり、人生のステージも一段落したら、今度はセカンドステージへ向けて、具体的にお金をシフトさせるほうが、納得して準備に集中できるのではないかと思っています。
民間の個人年金保険を考える方もいらっしゃいますよね。バブル期のように、保険会社が設定する運用の予定利率が4%前後なら、利用しても良いと思いますが、残念ながら、この低金利時代に2014年2月現在、多くの個人年金保険の運用利率は、正味1%前後のようです。
もし、日本経済の景気が良くなって、他に条件が良い金融商品が出てきた際に、お金を移動しようと思っても、保険商品は、途中解約するとペナルティが発生し、戻ってくるお金が更に減ってしまうというデメリットもあります。
ですから、低金利のうちは、あまり長期間、お金を固定させずに、流動性を保っていくことが一つのポイントと言えるでしょう。運用商品を選ぶなら、今は、割安で将来性のある株式や上場不動産投資信託(REIT)などで、興味のある銘柄を見つけて、積立をされるのが良いのではないかと個人的に思っています。
そうはいっても、何か安定しているもので準備していないと不安という方もいるでしょう。その際は、まず、公的な制度が使えるかチェックしてみてください。
働き方に応じて利用できる制度が異なりますが、現在、利用のメリットがあるものを○で表しています。長期的にみて働き方が変わる人、制度にしばられたくない場合に、民間の個人年金が候補になってくるのがわかるのではないでしょうか?
従業員で厚生年金に加入している人 | 会社役員で厚生年金に加入している方 | 国民年金に加入している方 | 家族の扶養に入っている方 | |
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確定拠出年金個人型 | ○ ・会社で企業型がない場合、個人型が利用でき、一定拠出額の範囲内で運用商品を品揃えの中から選べる。 ・拠出額は全額所得控除で節税効果 |
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選択制確定拠出年金 | ○ ・会社で導入され、給与から一定拠出額の範囲内で、個人が拠出額を決め、運用商品も品揃えの中から選べる。 ・拠出額は全額所得控除で節税効果 |
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財形年金 | △ 会社が契約している保険や預金で給与天引き。 ・今は利率が低く、利息非課税のメリットは薄い |
- | - | |
小規模企業共済 | - | ○ ・予定利率は現在1%だが、運用状況に応じて付加共済金あり。 ・掛け金は全額所得控除で節税効果 |
- | - |
国民年金基金 | - | - | ○ ・予定利率は1.75%で受取額は加入時に確定。 ・掛け金は全額所得控除で節税効果 |
- |
個人年金 | △商品は各社ごと。現在、利率は低いが、一部節税効果あり |
※2014年2月現在の情報
制度については、こちらの個人年金保険の比較と老後の貯蓄制度一覧もご参照
私自身は、自営業時代に国民年金基金を利用し、今は法人化して厚生年金になったので運用のみ継続しています。現在の積立は無理ないペースで、確定拠出年金個人型と小規模企業共済を行っています。これらの制度で縛られたくないけれども、何らかの約束された年金が欲しいと思うのなら、無理のない積立予算で、個人年金を考えるといいでしょう。
安全着実が好きで、冒険は苦手、昔からある商品がいいという慎重派の方が向いているというのが、今の個人年金だと思います。
最後に、老後をより明るく元気にお金の不安を解消しながら過ごす鍵として、番外編をお伝えしましょう。これは、私も目指していることの一つです。若い頃にいろいろ経験したことをもとに、趣味を極めて生きがいとともに、お小遣いなどお金を生むという方法です。
「そんなの簡単には~」と言う人もいらっしゃるでしょう。しかし、手芸が好きで、頼まれて作って譲っているうちに、口コミでお客さんが広がったという方、友達が多く、自宅の一部をコミュニティサロンとして貸し出している方、切手収集が趣味で、相続で発生した遺品の切手を整理・売却することがサイドビジネスになっている人など、実は様々な方法で年齢関係なくお金が入ってくる方法はあるのです。そんなことも、若いうちにどれだけ経験を詰めたかなどで、変わってくるのではないでしょうか?
やみくもに「老後老後」と不安になる前に、ご自身の人生を楽しむことを優先にしていただき、元気なセカンドライフをイメージできるようにしていただくのが、お金の準備でも大きなポイントだと思います。
1989年一橋大学商学部卒業後、国内保険会社で企画・調査、予算管理部門を経て1994年よりFPとして独立。3000件以上の家計を拝見し、各種セミナーや新聞などの連載、独立したいFPのための研修なども実施。
<主な著書>
「自動的にお金が貯まる習慣」(洋泉社)
「2人の貯蓄生活術」(ナガオカ書店)
「改訂版 住宅ローン 賢い人はこう借りる!」(PHP研究所)
<雑誌・TV等>
サンケイリビング新聞「家計ナビ」の連載(2013年まで8年間)、 日経新聞、朝日新聞、読売新聞 家計知恵検定連載のほか、日経ヴェリタスなどの取材多数。
結論から言えば、個人年金保険は老後資金準備に適した商品だと思われます。
30代40代は、その人のライフスタイルがはっきりしてくる時期です。
「向いている人」もいるし、「向いていない人」もいるのではないかと思っています。
30~40代のみなさんは、「老後」に漠然とした不安を抱いているでしょう。
個人年金保険の最大の弱点は、超長期固定金利の商品だということ。
個人年金保険は有力な選択肢のひとつといえます。
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