2017年~2020年の生命保険料改定! 慌てない3つのポイントとは?

保険料競争が激しい生命保険業界。2013年4月に低金利に応じて全面的に保険料が改定されたのが、ついこの間のような気がしますが、2017年から2020年にかけて再び2段階の保険料改定がなされるとのことです。

生命保険料、全面改定へ…年齢で1割前後増減も

《要約》生命保険料の改定は、2017年4月以降に契約する新規加入者から順次スタートする予定だが、商品の特性に応じて価格への影響度は変わる。まず、低金利の影響から2017年に予定利率を下げる見通しで、それによって長期の運用収入を見込む貯蓄型の生命保険について保険料の値上げが予想される。更に早ければ2018年には長寿化に対応した改定で、死亡保障の生命保険は値下げ傾向、高齢化によるリスク増により医療保険は値上げ傾向が予測されている。

以下、その影響と私たちの心構えについて整理しました。

目次

保険料の改定直前は駆け込み契約が増えるが・・・

生命保険は、大数の法則に則って、統計を活用したリスク度に応じて商品設計されています。保険料を決める重要な要素は次の3つ。

  1. 生存率・死亡率の指標となる「生保標準生命表」(公益社団法人日本アクチュアリー協会)
  2. 運用利回り(=予定利率)の参考となる標準利率(金融庁)
  3. 人件費や物件費といった事業利率(各社)

「3」は各社の問題ですが、「1」と「2」は業界全体に作用することなので、改定のたびに大きな影響が出ます。最近では下表のような出来事がありました。

改定内容
2007「生保標準生命表」が改定。死亡率が引き下げられ、大々的に保険料が変更
2013金融庁より「標準利率」が引き下げ。主に貯蓄機能のある生命保険商品が値上げ
2015新たな方法による「標準利率」が適用。一部の一時払保険の保険料が値上げ

改定といっても、対象になるのは新規契約からなので、その直前には、必ずといっていいほど、ギリギリ滑り込みで契約を締結するという「駆け込み契約」をする方がいます。その動機や行動パターンとしては、

  • たまたまニーズがあって相談したら「今なら間に合う!」からと超特急で手続き
  • 特に必要性はなかったが「負担が上がるのなら今のうちに…!」と衝動的に手続き

などが考えられますが、本当にそれでいいのでしょうか?

外の情報に振り回されず自分自身の必要性を行動の主軸に!

駆け込みに関する注意点として、私は「満足度・納得感」という視点から、以下の傾向があることを先にお伝えしておきます。

制度的な変化に振り回されて駆け込みで行動した人よりも、しっかりと自分のプランに合ったタイミングで契約した人のほうが、仮に一番安い選択肢でなくても、その契約後何年も満足度・納得感が持続している

自分の意志ではなく外の情報に振り回されて行動した人は、その後も外の情報に一喜一憂する傾向があるのです。保険商品によっては、加入時期による違いを是正し、公平性を保つために、配当で保険料を調整するものもあり、目先の保険料だけで行動しても、トータルではあまり変わらないというケースもあります。

よって、今回の保険料改定についても、まずはその変化の影響を大きく捉えて、慌てて判断が鈍らないようにすることが大事だと思います。

以上を踏まえて私なりに予想してみると、

◯2017年の動き

2017年予定の「標準利率」低下によって、保険会社は資産運用について収入が減る前提で商品設計することになるので、契約者が払う保険料は値上げ傾向が強く出ます。特にそれが顕著に出るのは、資産運用による貯蓄機能がある商品(終身保険や養老保険、個人年金保険など)でしょう。また、「標準利率」の改定頻度も既に年4回に増えていますので、運用環境の変化に応じた改定が今後もなされることが予想されます。

〇2018年~2020年の動き

2018年~2020年4月までに予定されている「標準生命表」の改定は、長寿化に伴い死亡率の低下が反映されるでしょうから、掛け捨ての死亡保障商品(定期保険や収入保障保険など)は、保険料が下がると言われています。一方、長寿化による医療や介護リスクから、医療保険や介護保険などは値上げが予想されています。

商品ごとに年齢による保険料差が出てきますし、中には各社の判断によって、保険料を据置きにするところもあるでしょう。

変化の中、落ち着いて自分軸で判断するための3つのポイント

このように大きな変化の流れを見つつも、目先の損得勘定で判断を鈍らせず、しっかりと満足度・納得感の高い意思決定をするために、次の3点を意識されるといいでしょう。

(1)長寿化の流れから、死亡保険はリーズナブルになるので慌てないで良い

慌てずに目的からしっかり考えることが大事です。保険の見直しも、価格からではなく、家庭のライフステージの変化や目的に合わせて、必要な内容へと積極的に見直しをするいい時期に来ているといえます。

(2)貯蓄型の保険は、保険料だけを見るのではなく、バランスのある商品や気に入った保険会社を選ぶ

貯蓄型の保険は、低金利の影響で保険料が上がる傾向にありますが、価格だけに目を奪われてはいけません。配当も含めたトータルの視点で選び、気に入った商品や長く付き合いたい保険会社を選んだほうが満足度・納得感が高くなるといえます。

(3)駆け込み契約はセールストークなどで判断の目が狂いがち。数か月は検討する

制度の変更という外の情報からではなく、主体的に動きましょう。家族がいれば必ず相談し、2~3か月は検討すること。そうしておくと、仮に保険料改定時にぶつかったとしても、落ち着いて手続きできるでしょう。

 

「保険は何のため?」という原点に立ち返って、目先の価格比較でぶれない選択眼をもっていると、今後の判断にも役立つと思います。

参考

  • 保険業法第百十六条第二項の規定に基づく長期の保険契約で内閣府令で定めるものについての責任準備金の積立方式及び予定死亡率その他の責任準備金の計算の基礎となるべき係数の水準(平成八年大蔵省告示第四十八号)の一部を改正する件(案)」の公表について
    //www.fsa.go.jp/news/25/hoken/20140401-3.html
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この記事を書いた人

一般社団法人円流塾代表理事、STコンサルティング有限会社代表取締役。一橋大学卒業後、保険会社の企画部・主計部を経て1994年独立。CFP®、1 級ファイナンシャルプランニング技能士。約20年間、金融商品は扱わず、約3300件の家計を拝見してきた経験から、お客様の行動の癖や価値観に合わせた「美しいお金との付き合い方」を提供中。TV出演、著書多数。

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