このたび、新築の分譲マンションを購入します。
火災保険の加入は決定していますが、地震保険には加入するかどうか迷っています。
迷っている理由としては、木造の一戸建などに比べれば被害はさほど大きくないだろうと思っている事。マンションは共有部分が多いので、持ち家ほど負担も大きくないと考えているからです。
地震保険は必要でしょうか?また、もし地震保険に加入する場合、注意点はおすすめの選び方などありますでしょうか?
(28歳 女性)
CFPR認定者、1級FP技能士 かな・えるFP相談室代表 太矢 香苗
分譲マンションの地震保険は共用部分と専有部分に分かれますが、まずは各世帯で加入を判断できる専有部分の火災保険は加入しておいたほうがよいと考えます。
マンションの地震災害で怖いのは、建物自体にそれほど被害はなくても専有部分の室内で家具転倒やガラスの飛散、停電、断水などにより住めなくなる状態が長く続くことです。
地震保険に加入していなければ、散乱した室内を片付けて再び住めるようになるまでの間、貯蓄でまかなうか、公的援助を待つよりほかありません。
また、地震災害復旧時の通電火災(例:停電が復旧した際、スイッチが入ったままの家電、ガス器具等から発火して燃え広がる。通電時に避難中で不在の住戸で起こりやすい。)は、地震に起因するものなので、火災保険は支払い対象外。地震保険に加入していれば支払い対象となります。
さらにもう一つ、地震災害時のマンションの火災は消防の助けが届きにくい、ということがあります。同時多発的な火災発生の場合、類焼の可能性の高い非耐火建物の消火が耐火建物の消火よりも急がれることが多く、マンションの高層階に届くはしご車は各自治体1台~数台しか保有していないのが実情です。
地震災害時に必要なのは「自助」「共助」「公助」ですが、マンションには耐震性、耐火性ゆえに公助が届きにくいことを考えると、「自助」としての専有部分の地震保険加入のほかに「共助」としての共用部分の地震保険加入も必要であると考えます。
通常、マンションの管理組合では共用部分の火災保険には加入しています。地震保険の加入については管理組合の合意が必要となります。「地震保険料を管理組合が負担する(修繕積立金がその分アップすることもある。)」「マンションの主要構造部分の被害は限定的だろう。」という考え方もあり、共用部分も地震保険に加入しているマンション管理組合は約35%(2012年日本損害保険協会調べ)ほどです。
区分 | 契約者 | 加入していないで損害が出たらどうなる? | その他 |
---|---|---|---|
専有部分 | 所有者・居住者 | 貯蓄を取り崩して充てる 公的支援(得られるとは限らない)に頼る |
地震保険料控除あり 所得税5万円、住民税2.5万円(最大) 耐震構造による保険料割引あり |
共用部分 | 管理組合 | 共用部分の修復、再建のために一時金を出し合う | 共用部分の地震保険に加入している管理組合は約35%(2012年) |
地震保険には火災保険とセットで加入します。単体では加入できません。仕組みや保険料は専有部分も共用部分も同じです。保険金額は火災保険金額の30%~50%の範囲内、耐震等級割引、建築年割引等の保険料割引制度があります。
全損 | 半損 | 一部損 | |
---|---|---|---|
支払われる金額 | 保険金額の100% | 保険金額の50% | 保険金額の5% |
主要構造部の損害額 | 建物の時価の50%以上 | 建物の時価の20%以上~50%未満 | 建物の時価の3%以上~20%未満 |
地震保険に加入していても、地震災害による損害額が全額カバーされるわけではありません。あくまでも地震災害による損害の支出を補い、生活の再建を助けるための保険です。
地震災害時の支出が貯蓄で十分賄える家計や管理組合であれば、地震保険の加入の必要性は低いのですが、もともと購入価格に対する住宅ローン比率が高い、住宅ローンの返済が始まったばかりなど、購入したマンションの住宅ローン残高が多い人や収入に占めるローン返済比率の高い人、貯蓄の少ない人は、地震災害時の損害の想定外の支出で、たちまち家計が立ち行かなくなる危険をはらんでいます。
耐震構造だから大丈夫、免震構造だから安心と思っても、東日本大震災クラスの地震に見舞われたら、どういう壊れ方や傷み方をするのかは想像がつきません。
また、特殊な構造のマンション(ベイエリアに建つタワーマンションなど)は、設計計算上安全とされていますが、年が経って被害や損害が出てみて初めてわかる壮大な「実験」の様相も呈しています。
何よりも大切なのは、分譲マンション住む人たちの暮らしと暮らしの安全です。
地震災害による被害 ⇒ 想定外の損害支出 ⇒ 家計の破たん とならないように滅多に起こることではないけれど、起こってしまったら家計では支えきれないという場合には地震保険に加入されることをおすすめします。
地方銀行勤務を経て、出産・育児の傍らFP資格を取得し、2010年独立。八王子市内で定期的に子育て世代母親向け・女性向けセミナーの企画、運営、講師として取り組み、「わかりやすいお金と金融の知識、働き方や貯蓄の方法」「女性が知りたい相続と手続き」が好評を得ている。コラム等の執筆やFP相談も積極的に行っている。2014年9月「スッキリわかる証券外務員二種」(TAC出版)執筆協力。
入りたがらない方が多いは事実だが、私自身は加入をお勧めしたい。
私のお勧めは、家財までしっかり地震保険に加入しておくこと。
地震保険だけで安心とはいえないが、加入しているとしていないとでは大違い。
立地条件のリスクが高いと思えば、保険の加入を検討しましょう。
地震の起こる確率は、火災の起こる確率よりずっと高いことを認識して下さい。
例: 「老後」「医療保険」などお悩みで検索
※ただいま新規のご質問を制限しております。