がん保険への加入を検討しています。保険の無料相談にいったところ、定期型のがん保険だと、年をとった時の更新で保険料がかなり上がる可能性があるので終身型の方が良いと薦められました。
ただ、私としては、将来の公的な医療保険制度やがん治療の状況もわからないため、終身がん保険に加入しても良いのだろうかという漠然とした不安があります。
がん保険は、終身型の方が良いのでしょうか?
選ぶポイントなどありましたら教えてください。
(28歳 男性)
AFP三島 芳史子
終身型のがん保険は保険料が変わらず、有期払込みにすれば保険料支払累計額を安く抑えられるのがメリット。医療の進歩による保障内容の陳腐化は避けられませんが、健康状態の悪化により、定期保険での乗り換えや終身型への切り替えができなくなるリスクを考えると終身型を選択するのが無難です。
保険には保障が一生続き、保険料の支払いが一定(支払期間は終身か有期かで選択ができる)の終身型と、保険期間が10年などの一定期間で、その期間は保険料の支払いが変わらないが、期間後更新を迎えると保険料が上がっていく定期型の二つのタイプがあります。
10年ほど前の「がん保険」と言われるものの多くは、診断給付金があり、入院給付金が無制限で入院日数分給付され、手術給付金がある…というのが基本形でした。最近のがん保険はどうでしょうか? 通院特約がついたものや、診断給付金の給付金額や給付条件を充実させたもの、診断給付金の給付頻度を高くしたものが増えてきているようです。
ご存知の通り、医療技術は日進月歩です。がんの治療に関しても例外ではなく、この保障内容の変化は、以前は入院がメインだったがんの治療が現在では通院治療も増えていることの表れと言えます。
例えばがんになってしまった時、「入院も手術もせず、通院による抗がん剤だけでした」ということも現在では珍しくありません。10年前に主流だったがん保険に加入していた場合、抗がん剤による治療だけだったとすると、受け取れる給付金は診断給付金のみです。がん保険に加入していたにもかかわらず、給付に該当する治療が少なく、万一のための保険なのに機能しなかったという結果になってしまう恐れがあります。そういったケースを避けるために、治療を開始した時、それなりの給付が受けられるように保険も進化します。
今回のご相談者は28歳です。28歳の方が加入したがん保険が、この先の10年、20年先も進化し続ける医療に合った形であり続けると考えるのは現実的に無理があります。「おそらく乗り換えていくだろう」という前提で定期型を選んだ場合を考えてみましょう。
気になるのは保険料です。(ここでは保険料の比較のため、同じ保障内容で更新し続けた場合の保険料の推移をご紹介します。)
例えば実在するある保険会社のがん保険の定期型で、保障内容は診断給付金100万円、入院1万円、通院1万円、手術10~40万円、死亡保険金10万円の場合の保険料は下記のようになります。
500円 | 6万円 | |
1,029円 | 18万3,480円 | |
2,573円 | 49万2,240円 | |
6,092円 | 121万5,720円 | |
1万885円 | 252万9,480円 |
どうしてここまで20代、30代の保険料は安く設定できるのでしょうか?それは保険料の決定要因の一つが、がんの発生率を基に計算されているからです。つまり28歳の男性の保険料の場合、28歳から38歳になるまでの10年間におけるがんになる発生率を基に計算されているのです。よって年齢を重ねる毎に保険料が上昇し続ける理由がご理解頂けると思います。
表からもお分かり頂けると思いますが、定期型は、若い時期に安くて充実した保障を持てる…というのが最大のメリットになります。そして更新をし続けた時は最もコストがかかる保険になる可能性があるというのがデメリットになります。
現実的に保険は10年だけでなく、継続することも多いです。定期型を選ばれる場合は更新をしていくこととなります。そして、その際に同じ保険を続けるよりもその時々の治療の形により合った他の保険を選ばれ乗り換えることも少なくないと思いますが、保険料はそれなりに上昇していく形にはなるでしょう。
また保険を乗り換えるためには、健康であるということが大前提であることも忘れてはいけません。乗り換えていくはずが、途中で健康状態が悪化したため乗り換えられず、やむを得ず同じ保障内容の定期型を続けていくこともあり得ます。この場合、最も高い累計保険料を払うことになる結果となり、これが定期型を選択した時の最大のリスクと考えられます。
もし乗り換えや解約をせず、同じ保険を生涯払い続けると仮定したら、終身型が圧倒的にお得です。前述と同じ保障内容で、28歳男性が65歳払い済みを選択し加入した場合、月の保険料は2,868円、累計支払保険料は1,273,392円となります。
終身型のメリットは保険料が一定であることと、ずっと保険を継続した場合の累計支払保険料が最も安く抑えられることでしょう。終身型の累計保険料は、定期型を78歳まで継続した場合の半分以下で済みます。そしてデメリットは、保障内容が陳腐化することなどを理由に、がんを患ったことが無い健康な人が保険を乗り換える場合、それまでの保険料が割高になってしまうことでしょう。(終身型の保険料は、一生涯におけるがんの発生率を基に計算されているため)
以上の点から考えると、終身型を選択することはベストな選択肢ではないかもしれません。
ただ、保険はあくまでも万一の備え。万が一、がんを若くして患ってしまうことも、誰にでも可能性のあることです。例え将来の乗り換えの時に少々割高な保険料を払う結果になる可能性があるとしても、万が一がんになってしまった場合は、定期型でなく、終身型を選んでいた方が良かったと思えることが多いのではないのでしょうか?
結論として、特に若い人にとって終身型はベストとは言えないかもしれませんが、定期型よりも無難な選択肢だと考えられます。
外資系保険会社で3年、生損保総合代理店で3年の勤務を経て、5年前より独立系FP事務所に在籍。
生命保険、資産運用をファイナンシャルプランニングの両輪とし、長期・継続的に顧客と共にファイナンシャルプランの実現を目指す。
ライフプランニング、保険、資産運用、住宅ローンを得意分野とし、個別相談やセミナーを行っている。2児の母。
著書「くらしの相続Q&A~もめない相続のために」(新日本法規 共著)
がんになるリスクは年齢とともに高くなるので、このことだけを考えてもがん保険は終身で準備するべき。
色々と特約の組み合わせを変更できる商品を選べば、終身型であっても保障の見直しの柔軟性は高くなる。
長寿社会の日本では長生きのリスクに備える意味でも、終身型に入っておいた方が安心。
いつ、自分に最後が訪れるのか誰もわかりません。がん保険を選ぶなら終身型が良いと思います。
若い世代には、何十年も先を想定するのが難しいため、見直すことを前提にがん保険を選ぶことをおすすめします。
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