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自転車保険は必要?

趣味で、スポーツサイクルと通勤に自転車を使っています。
自転車保険加入の必要性を感じているのですが、自動車保険の特約で付帯していれば大丈夫という意見もあります(自動車保険には加入しています)

自転車保険単独での加入は必要でしょうか?また加入する場合、どういった内容の商品がいいのでしょうか。

(30代 男性)

積極的には推奨しない

自転車事故で発生するリスクに応じた準備方法を考えよう

CFPR、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローンアドバイザー、証券外務員2種 エフピースマイル代表 中山 弘恵

日頃の交通手段が自転車だからといって自転車保険に入っておく必要があるかというと、決してそうではありません。
自転車事故で発生するリスクに対し、すでに加入している保険で準備できている、預貯金で事足りる、ということもあるからです。

まず、自転車事故への備え方を考える前に、自転車事故で発生するリスクを整理しましょう

<自転車事故で発生する3つのリスク>

  1. 他人をケガさせたり、死亡させたりする
  2. 他人の物を壊してしまう
  3. 自分がケガをしたり、死亡したりする

自転車事故とはいえ、被害の大きさによっては高額の損害賠償金を支払わなくてはならないこともあります(下表)。損害賠償金の支払いの目途が立たなければ自己破産する可能性もあります。自分自身がケガを負っていれば、治療費や通院費、入院費などもかかります。

<自転車での加害事故例>
賠償額
(※)
事 故 の 概 要
9,521万円 男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。(神戸地方裁判所、平成25年7月4日判決)
9,266万円 男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った。(東京地方裁判所、平成20年6月5日判決)
6,779万円 男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。
(東京地方裁判所、平成15年9月30日判決)
5,438万円 男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。女性は頭蓋内損傷等で11日後に死亡した。
(東京地方裁判所、平成19年4月11日判決)
4,043万円 男子高校生が朝、赤信号で交差点の横断歩道を走行中、旋盤工(62歳)の男性が運転するオートバイと衝突。旋盤工は頭蓋内損傷で13日後に死亡した。
(東京地方裁判所、平成17年9月14日判決)

(※)賠償額とは、判決文で加害者が支払いを命じられた金額です(上記金額は概算額)。 日本損害保険協会調べ

少ない自己負担で大きな補償を得たいときは保険の利用が適しているので、1.と2.の損害賠償リスクは保険(個人賠償責任保険)で準備することをお勧めします。3.の自分自身にかかる費用は、加入している保険(医療保険や傷害保険など)や預貯金との組み合わせで対応できるかを考えます。そのうえで自転車保険の特徴を理解し加入を検討しましょう

人や人の物への損害は個人賠償責任保険で備えを

個人賠償責任保険は、日常生活における偶然な事故により、他人にケガをさせたり他人の物を壊したりしたことで、法律上の賠償責任を負った場合に保険金が受け取れます。自動車保険や火災保険、傷害保険、共済に特約として付帯し加入する方法と、クレジットカード会社が提供する会員専用の保険に加入する方法があります。

ただし、特約で付帯している場合は、主契約となっている保険を解約すると、個人賠償責任保険もなくなってしまうことに注意が必要です。

掛金や補償額は保険会社や共済、クレジットカード会社によって異なります。保険が適用される人の範囲が本人のみなのか家族も対象になるのかによりますが、毎月の保険料は数百円程度のものが多いです。補償額は、加害事故の賠償額例から考えると1億円以上が望ましいです。また、事故の相手の方と話し合いを行ってくれる示談交渉代行サービスがついていると安心です。

自分自身のケガへの備えは経済的余裕に応じて預貯金や保険、その組み合わせで

多くの方が医療保険や医療共済に加入していると思います。これらには、病気やケガを問わず入院保障や手術保障が付いています。傷害保険に加入していれば、ケガに限られますが通院補償や入院補償があります。

どれにも加入していなくても、公的医療保険における制度の1つで、医療機関や薬局の窓口で支払った額が暦月(月の初めから終わりまで)で一定額を超えた場合に、その超えた金額を支給する高額療養費制度があります。高額療養費制度では、年齢や所得に応じて、本人が支払う医療費の上限が定められており、またいくつかの条件を満たすことにより、さらに負担を軽減する仕組みも設けられています(※)。

つまり、自分のための備えは、すでに加入している医療保険や医療共済、預貯金を組み合わせることで対応できるといえるでしょう。

(※)厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

自転車保険が必要かしっかり見極める

自転車保険は、傷害保険あるいは交通事故傷害保険と個人賠償責任保険がセットになっているのが一般的です。これまでの話をまとめると、自転車保険が本当に必要な人は、自動車保険や火災保険、傷害保険、共済に特約として個人賠償責任保険を付帯していない人、クレジットカード会社が提供する会員専用の個人賠償責任保険にも加入していない人と考えられます。

自転車保険の商品を選ぶ時は、個人賠償責任保険の保険金額が1億円以上、示談交渉代行サービスが付いているもの、傷害保険や交通事故傷害保険の補償額は最少にするとよいでしょう。

自動車保険には加入しているとのことですので、まずは保険証券で個人賠償責任保険が付帯されているかどうかをご確認ください。そして、ご自身のケガを保障する医療保険や医療共済などに入っているかどうかをお調べになってください。保険は過不足のないよう賢く加入し活用しましょう。

CFPR、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローンアドバイザー、証券外務員2種 エフピースマイル代表 中山 弘恵

国内損害保険会社での代理店・お客様支援、都市銀行での資産運用アドバイス・住宅ローン審査業務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。現在は、相談業務を中心に講師、執筆業務に従事。「安心しながら気軽に話せる相談相手」「わかりやすいセミナー」として定評があり、相談者・セミナー受講者は20代~80代と幅広い。

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