今年、家を購入いたしました。(30歳前半です)
それにあたり、医療保険の加入を考えているのですが、ふと「医療保険は本当に必要なのか?」と疑問に思いました。
社会保険があるので、負担は3割だし、高額医療制度で月9万ぐらいまでの支払いで済む。それより、その保険料を貯蓄に回した方が賢いのではないかと思います。(現在貯蓄はあまりありません)
ただ、ガンとかになった場合、保険の対象外の医療行為が行われる可能性もあり、その場合、高額な医療費がかかると聞きました。
また、少しの間なら、傷病手当でなんとか出来るかもしれませんが、寝たきりとかになったら、仕事もできなくローンの支払いが滞ってしまいます。
それを考えると、医療保険よりもがん保険の方が重要な気がするのですが、医療保険とがん保険だったら、がん保険の方がおすすめでしょうか?
(33歳 男性)
AFP 2級ファイナンシャル・プランニング技能士 office FITPlus 代表 木村由香里
まだ保険に加入していない若い世代の方から「医療保険とガン保険のどちらを先に加入すべきか」というご相談をよくされます。基本は、ガンも含めた病気やケガに対して、給付金が受け取れるカバー範囲の大きい医療保険を優先することが正解でしょう。がん保険は、がんになった時にしか頼りにはならないからです。
ただし、がん保険を優先すべきケースがあります。それは、家計に余裕のないご家庭の場合。次の3つのチェック項目で、あなたの家計の余裕度を診断してみてください。
チェック1 月々6万円、年間100万円以上のペースで貯蓄ができている
チェック2 月収の6ヶ月分の緊急資金の他に、使い道の決まっていない100万円以上の貯蓄がある
チェック3 困った時は親や親族の経済的支援が受けられる
チェック1から3のいずれにも該当しないなら、まずはがん保険に加入することを考えてみてはいかがでしょうか。その理由は、ガン治療の次の特徴に備えるためです。
がんの治療には、まとまった治療費が継続的にかかってきます。若い貯蓄の少ない世代なら、がん保険に加入することで、がん発症リスクにすぐに備えることができます。もしもに備える貯蓄が100万円を超えたら、がん保険を辞めてしまってもいいのです。
がん保険と同時に、毎年の健康診断も必ず習慣化しておきましょう。自営業の方や専業主婦の方でも、年に1度は必ず受けましょう。女性の方は、乳がんと子宮がん検診を追加しておくと安心ですね。女性特有のがんは、20代から発症ケースが急増している点に気をつけておきましょう。
早期発見によって、治療費は大幅に削減できます。がん保険だけに頼るのではなく、健康診断、運動、食事、睡眠とトータルで備えることが大切なのです。
みんなはどうしているのか気になりませんか。生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」によると、何らかの生命保険に加入している世帯は90.5%で、そのうち特約も含め医療保険に加入しているご家庭は、92.4%と9割を超えていました。ほとんどの世帯が医療保険を優先しているという結果でした。まずは医療保険と考えている方が多いのでしょう。
ここまで、がん保険を優先するべきだとお話してきましたが、がんという病気について一緒に深堀りしてみましょう。
公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計’13」によると、男性58%、女性43%が生涯のうちにがんと診断され、男性は4人に1人、女性は6人に1人の割合でガンによる死亡リスクがあると推定されています。がん罹患率は、男女ともに50代から増加し、高齢になるほど上昇します。30代後半から40代までは、女性の方が高いのですが、50代で男性が逆転し、60代以降は顕著に男性の罹患率が高くなっています。
「男女ともにおおよそ2人に1人はがんにかかる」と聞くと、とても不安になってしまいますが、がんという病気を大雑把に表現すると細胞のコピーエラーですから、高齢者の病気であり、老化現象の1つとも言えるでしょう。データからも、現在30歳の方が30年後までにがんで死亡する確率は男女ともに2%という数値が出されています。必要以上に不安にならずに「いつかは自分もがんになる」ぐらいに心構えしておいた方がいいのかもしれません。
保険の対象となる治療を受けるだけなら、3割の自己負担で済みます。さらに、高額療養費制度で、平均的な収入のご家庭なら月約9万円が自己負担の上限額になります。多数回該当という「直近の12ヶ月間に既に3回以上高額療養費制度を受けている場合には、その月の負担の上限額がさらに引き下がる」仕組みもありますので、月々6万円程度の支出が1年年続いても耐えられる家計であれば、がん保険に加入する必要はないのかもしれません。ただ、最近のがん治療が大きく変わってきているので、高額医療費制度だけでは、ご自身の思い通りの治療を選択できない恐れがあります。先進医療部分や自由診療は、保険の対象外で自費負担となり、高額医療費制度も利用できないのです。
がんと診断されたら、あなたはどんな生活を送りたいと思い描きますか。
例えば、1か月は入院と自宅療養で仕事を休んだとしても、1か月後からは時短勤務や在宅勤務制度を利用し、働きながら治療を続けたいと望んだ場合、先進医療の重粒子線治療(約300万円)や、樹状細胞ワクチン療法(約150?200万円)などの自由診療、未承認の分子標的薬なら、思いが叶うかもしれません。
完全オーダーメイドでの自由診療を行っているクリニックの方に、会社経営者や政治家といった方々が、通院しながらがん治療と仕事を両立しているお話を伺う機会がありました。
現在の貯蓄が少なくても、生活の質(QOL)を下げたくない、一番だと思われる選択肢を選んでいきたいという方なら、保険でカバーすることを検討する価値はあるでしょう。
がんと診断された時、あなたはどう生きたいか、暮らしたいか、じっくり考えてから、保険を選んでみてください。
ファイナンシャルプランナー/ITアドバイザー/ワークライフバランスコンサルタント
『IT?FPで人生をプラスに』をモットーに、人生を豊かにしてくれるお金とITの知識を広める活動中。得意分野は、女性のプチ起業支援、フリーランスのお金の貯め方など。
毎月子連れで参加できるアロマ&マネーレッスンを開催中!ほっこり癒される内容が好評。
<Webメディア、雑誌など>
「パピマミ」「Women. Exciteママ」「ウレぴあ総研」専属ライター。
「すてきな奥さん」「CHANTO」など主婦向け雑誌で取材協力。
別冊宝島「資産5000万円からの相続」の執筆協力
まず何が不安で保険でどうカバーしたいのかをしっかり把握したいもの。
自分がどのような治療を受けたいかを考え、保険に加入するべき。
経済的リスクと保障の大きさから判断して、迷わず『ガン保険』に軍配。
医療保険とがん保険でどちらの優先度が高いかはケースにもよります。
まずは医療保険を優先的に検討しましょう、と私はお答えしたいと思います。
広く、浅くカバーする医療保険のほうがご家族も安心なのでは?
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