保険での貯蓄を考えていますが、できるだけ利率の高いものを選びたくて変額保険での運用を考えています。
リスクもあるのでやめた方が良いでしょうか?
変額保険はおすすめできるかを教えてください。(39歳 男性)
CFPR、1級FP技能士、証券アナリスト検定会員補、認定テクニカルアナリスト FP提案書工房 中里邦宏
貯蓄をお考えとのことですが、変額保険は貯蓄というよりも投資という言葉があう商品です。リスクもあると認識された上でのご質問ですので、変額保険をオススメできないと考える理由についてお伝えしていきます。
変額保険は、“死亡保障(死亡・高度障害保険金)”と、特別勘定といわれる国内外の株式や債券を中心とした投資信託などによる“運用”が組み合わさった商品です。
運用する投資商品の選定は契約者自身が行なうのが一般的で、保険会社が指定した特別勘定のラインナップの中から投資割合とともに決定します。契約後も投資商品や割合の見直しは一定の回数の範囲内であれば無料で行えます。この運用成果によって、保険金・満期金・解約返戻金といった将来受け取る金額が増減することが、将来受け取る金額が契約時に決まることの多い学資保険や通常の終身保険などの商品との大きな違いです。
通常、投資では支払うお金から手数料や諸経費を差し引いた額がすべて投資元本となります。しかし変額保険を投資商品として見ると、支払う保険料累計額のうち一部を、運用成果に関係のない死亡保険金に備えるための保険料に相当するコストが占めていて、それが無駄になっています。また、例え運用成績がどんなに悪くても、死亡保険金は契約時に設定した基本保険金額を下回ることはないという特徴もあり、このような仕組みを組み込むコストもかかっています。
つまり、変額保険は、運用成果にマイナスの影響を与える本来不要なコストが存在する投資商品といえます。そしてこれらのコストの存在が、解約返戻金が他の貯蓄目的の保険商品に比べて低くなっている理由にもなっています。そのため契約にあたっては不本意な解約をせずに済むように、保険料や保険期間を設定することが大切になります。また、不測の事態やライフイベントの変更などがあったときには活用しづらい資産であることを認識しておきましょう。
保険商品で利率の高い貯蓄商品をお探しとのことですが、その目的は何でしょう?
貯蓄性のある代表的な保険商品には、学資保険、終身保険、年金保険などがありますが、どれも保険期間が長く、途中で解約すると元本割れすることも少なくありません。そのため変額保険も含め、保険で資産形成をするにあたっては途中で保険料の支払いが難しくなることのないように商品を選定し、契約にあたっては毎回の保険料や払い込み期間を設定する必要があります。
そこで大切になってくるのが、将来の収入、支出、金融資産残高を予測するためにライフプランを作ることです。
特別勘定での運用という仕組み含まれていることから、高利回りやインフレに強い商品と思われるかも知れません。
しかし変額保険の「利回り」は、契約者自身が契約時や見直し時に選択する特別勘定資産の構成割合、いわゆるポートフォリオで変わるため十人十色といえます。
例えば日経平均の史上最高値は1989年末の3万8,957円でしたが、その後約25年間ずっと超えていません。もし、保険料をある程度支払った頃に史上最高値を迎え、そのタイミングで日本株式に投資をする特別勘定の構成割合を高くしていたならば、みるみる損失が膨らんでいったことでしょう。
リスク商品への投資は、投資のタイミングによって勝ちも負けもするということです。つまり、過去の平均利回り実績がいくら高い特別勘定があったとしても、誰もがその利回りを得られているとは限らないといえます。
なお、日々価格が変動するリスク商品での運用ですので、現在、特別勘定の運用が上手くいっていたとしても、満期または資金が必要なタイミングに利益が出ているかが何よりも大切です。
資産形成目的であれば変額保険を基本的にオススメしませんと書きましたが、死亡保障を準備する必要性があり、投資信託での運用を勉強したいという方には適している一面もあります。運用で損失がでても死亡保障は基本保険金を下回ることがないという特徴を利用するわけです。その場合、年に一定の回数以内であれば特別勘定の割合を無料で見直しできることも投資信託の値動きを勉強するうえでメリットになります。もちろん、見直しをしなければ勉強にならず意味はありません。
ただ、そもそも投資信託での運用で高い運用利回りが期待できるとお考えであれば、証券会社で口座を開き投資信託を購入された方が、上記コストの低い分、運用利回りは更に高くなることは言うまでもありません。また、老後資金づくりが目的であれば掛け金が減額所得控除になる確定拠出年金も選択肢に入ってきます。
1975年、東京生まれ。大学卒業後、メーカーで設計とシステム開発を兼務。2004年にファイナンシャル・プランナーとして他のFP事務所で下積むのと並行してFP事務所を設立。マイホーム購入、早期退職、田舎暮らしなどの個人相談を中心に活動中。パルシステム 地域FP相談員、NPO法人日本FP協会東京支部副支部長を現任。
できるだけ高い利率を追求するという点で変額保険は適していると言えます。
変額保険は「保険+資産運用」なのではなく、「保険の一部が資産運用」なのです。
運用利率が保証されているものではないので、貯蓄目的としては不向き。
保障などにかかる費用もあるため、投資信託に比べるとコスト高になっています。
貯蓄の効率性を考えた場合には、「保険」は保障として掛け捨て、「貯蓄」は「貯蓄」とはっきり切り分けて考えるべきです。
一部の運用先が増えた結果を知ることで「あ、このタイプが今は上昇しやすいのだな」と学べる保険。
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