医療保険の加入を考えています。
ご相談している担当のFPさんから、30~40代は女性特有の病気にかかる可能性が上がるので、女性保険の方がいいのではないか?と提案されています。
確かに、女性特有の病気になった際、上乗せして保障されるのは有り難いですが、そのために保険料が上がるのはちょっと・・と思ってしまいます。
女性保険と医療保険だったら、女性保険を選ぶ必要性はありますか?
(30代 女性)
AFP、2級ファイナンシャル・プランニング技能士 株式会社ライフマーク&ギフト 代表取締役 井川倫士
私の答えは、医療保険は購入しない、もしくは必要最低限の購入であれば良いというもの。「お守り」として、上乗せの保険給付である女性保険(女性疾病特約など)を検討するのであれば、生活習慣病特約の購入をより勧めたいです。
「女性は長生きだから医療保険に入っておいた方が良い」という議論があります。でも本当にそうでしょうか?厚生労働省が発表している簡易生命表によれば、平成25年の女性の平均寿命は、86.61歳と確かに長生きです。
また女性保険に限らず、「医療保険は必要なのか?」という問いもあります。
日本には、公的な健康保険制度があり、高額療養費もある…という議論です。
一般的なデータも重要ですが、お金に関する選択は一般的な答えよりも「保険商品の購入を検討しているあなたにとって、どれがマッチするのか?」という視点から考えて頂きたいです。ですから、ライフプランや資金計画表(キャッシュフロー表)の作成をお勧めします。この件は、この文章の後半で詳しくお話していきます。
なぜ女性保険(女性疾病特約)よりも生活習慣病特約をお勧めするのでしょうか。女性特有の病気が発症すると精神的には大きなショックを受けるものの、自分の財布は余り痛みません。なぜなら治療費としての自己負担額は50万円以下に収まることが多いからです。
もちろん妊娠に関連した症状(子宮外妊娠や切迫流産等)になる辛さは、男性である私にはよく分かりません。更に、乳房や子宮の手術をすることや摘出することが女性にとってどんな意味を持つのか、想像も付かないことです。けれどもFPとしてお金のアドバイスをする私にとっては、支出の大きくなるものに目を向けて頂きたいのです。
この視点で考えると「がん」による出費には検討の余地があります。
治療の出費が大きくなる「乳がん」「子宮がん」などの女性特有のがんについては、生活習慣病特約の上乗せ給付に該当する場合が多いです。ですから上乗せの給付を考えるのであれば、女性疾病特約よりも生活習慣病特約をお勧めしたいです。
「がん」を含めた生活習慣病やその他の病気の原因については、遺伝的要因よりも、生活習慣の方が重要な因子であると最新の研究結果は示しています。例えば親と似た病気になるのも、子供の頃から取っていた食べ物の嗜好が大人になっても余り変わらないことが大きいです。ですからどのような習慣があるのかによって、保険購入の選択は影響されるべきでしょう。
また医学的にはまだ証明されていないものの、「女性特有の乳房や子宮系の病気には、女性ホルモンのバランス(特に生理の回数)が大きな影響を与えている」と指摘するお医者さんもいます。今より栄養のある食事を取れなかったことや子供を産む人数も多かったことから、昔の女性は生理の回数が今よりも少なかったそうです。これによって、女性疾病になりにくかったのではないかというのです。この傾向は、女性特有の病気が、妊娠や出産をした女性について罹患率が下がることや、場合によっては妊娠によって病気が治ることからも見て取れます。
実際に病気のデータでは40歳代前半までは生活習慣病よりも女性特有疾病の発症の方が多くなっています。そして、40歳代を境にして、今度は生活習慣病(がんや脳卒中、心筋梗塞など)に掛かり易くなる傾向があります。これらの治療には比較的お金が掛かります。
一方、保険商品を提供する保険会社が決める保険料もリスクに対して決まっていきますから、40代を境に女性疾病特約と生活習慣病特約の保険料が逆転する場合が多いです。つまり50代では、生活習慣病特約の保険料の方が高くなります。
よって、自分の生活習慣や自分の年齢を考えて、保険を買うのか買わないのか。どの保険商品を購入するのかを考えて頂きたいのです。
女性保険に限らず、保険全般を考えるときに重要なことはライフプランを作って計画を立てることです。住宅の次に大きな買い物。人生で2番目に大きな買い物と言われる保険購入ですが、「ライフプラン=自分の人生のプラン」と保険を関連付けて考える方は余り多くないかもしれません。
保険商品の購入はあくまでお金の使い方の1つ。自分がどのような人生を送りたいと思っているのか。人生の資金計画はどうなっていくのかを考えた上で、購入を決めるべきです。そしてメインのシナリオは「元気に人生を送るプラン」でしょう。
例えば、今お金はあるが退職後に貯蓄を取り崩して生活が苦しくなる見通しの人がいたとします。こういった可能性があるのであれば、保険料の安いとき、若いときに医療保険を手当てするのも1つの選択肢でしょう。しかしその結果、目前の生活が苦しかったり、貯蓄が溜まらず自分がしたい旅行に行けないということが―――普通は無いでしょうが―――あっては本末転倒です。人によっては、老後に両親からの相続資金が入ってくるので資金が潤沢になる方もいるでしょう。
また自分の貯蓄が充分にあれば、保険は本来必要ないはずです。一方貯蓄があっても、万一のときに自分の財布を傷めない人にとっては、保険加入が合っているのかもしれません。
「お金の常識は時代によって変わります。」
これは私がいつもクライアントへ伝えるメッセージの1つです。「結局、自分はどうすれば良いのか?」を何年かに一度は見直すことが大事なのです。
私も含めて人は、目の前のことだけに囚われがちです。お金のことを考えるのであれば、前提となる日本や世界の経済、金利や為替、株式の動向も気にしなければなりません。投資可能な方にとっては保険を購入することより、投資して増えた資金で賄っていく手もあるでしょう。一昔前のバブルの頃は、株式で損したけれど10年で定期が倍になるから、定期が一番だった時代。今はほとんど利子が付かない時代。今後、インフレにより物価が上がる時代とくれば、自分の戦略も見直す必要に迫られるかもしれません。
木を見て森を見ずにならないよう、部分最適ではなくて、全体最適で考えたいものです。
繰り返しになりますがお金に関する選択は、やはり一般的な答えよりも「保険商品の購入を検討している“あなたにとって”どれがマッチするのか?」で考えてみてください。
ちなみに私と私の妻の保険戦略は、最低限プラスアルファで考えていて、夫婦二人とも生活習慣病特約を購入しています。理由は食生活があまり良くないからです。情けない話ですが私こそ、ここを改善して貯蓄や運用に回せるお金を増やすべきです…。
最後にメッセージを1つ。保険について調べる時間をたくさん使ったから、保険に入るであるとか、逆に保険は複雑で考えることがメンドウだから「エイヤァ」で入る。もしくは入らない(見直さない)といったことを決してしないようにしてください。
趣味で使うお金も子供の教育資金も保険料も全て同じ1万円の価値がありますし、手取り給料が1万円上がることも同じですから。
分かってはいても……なかなか出来ないモノですが。
慶應義塾大学 商学部でマーケティング論(消費者行動論)を学び、卒業後は一旦家業の経理を担当。その後、塾の講師としてコミュニケーション、プレゼンテーション・スキルを磨いた。
2009年より三井生命株式会社のPMM事業部(FP専門の部署)にて現在の仕事であるファイナンシャル・プランナーとして仕事を開始。個人や中小企業のオーナー向けコンサルティング、相続相談を実践。
2013年に「人生の目標や日々の生活をプロットして、自分の才能を活かしながら、充実した暮らしを送ることをお手伝いすること」をミッションとした株式会社ライフマーク&ギフトを設立し独立開業。現在は、
■1、将来の資金計画を具体化し、見える化する。
■2、目標を達成していくために資産の効率化を考える。
■3、実行に移していただくお手伝いをする。
以上3つをサービスの中心にコンサルティング業務を行う。
FP活動以外に、地域貢献活動多数。
【主なTV出演】
2013年1月 フジテレビ「お台場政経塾 」
など
【所属団体】
首都圏ファイナンシャル・プランニング技能士会 準会員、ファン・ジャパン中小企業退職給付制度アドバイザー、エンディングメッセージ普及協会 認定会員、NPO法人 一新塾31期・33期、地方で仕事を創る塾 11期、ほこた塾 運営委員
女性特有の病気も一般的な病気も同じと考えている方には必要無いといえる。
保障とコストのバランスに納得できるなら、女性にとっての「安心料」と考えて、女性保険を選んでみては。
ある程度の資産ができたら、医療保険は卒業してもいいともいえる。
病気に備えるお金は、医療保険と女性保険という二つの選択肢だけではない。
女性疾病の保障自体は女性保険だけでなく、一般の医療保険でももちろんカバーされるので、女性保険でなくても大丈夫。
例: 「老後」「医療保険」などお悩みで検索
※ただいま新規のご質問を制限しております。