医療保険の加入を考えています。
ご相談している担当のFPさんから、30~40代は女性特有の病気にかかる可能性が上がるので、女性保険の方がいいのではないか?と提案されています。
確かに、女性特有の病気になった際、上乗せして保障されるのは有り難いですが、そのために保険料が上がるのはちょっと・・と思ってしまいます。
女性保険と医療保険だったら、女性保険を選ぶ必要性はありますか?
(30代 女性)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士 K&K FPオフィス代表 神田理絵
例えば、ご家族や親せきが女性特有の病気(女性に多い病気も含む)で亡くなった経験のある方は、他の病気よりもその病気が心配で医療保険を考えているケースも多いことでしょう。そういった方には、女性特有の病気に対して保障が手厚いこの保険がオススメです。
例えば入院すると一日5,000円の入院給付金をもらえる保険が、女性特有の病気で入院した場合には1万円にアップするケース。女性ということで選択肢が広がり、特定の病気への不安が減るなら、その方にとって月数百円の上乗せ保険料は安いものです。
反対にいうと、特にそういったこだわりがない、女性特有の病気も一般的な病気も同じと考えている方には必要無いといえます。ようはその方の病気に対する感度の違いで判断するもの。もう少し詳しく説明していきましょう。
女性保険とは一般的に、女性に多い病気や女性特有の病気に対して、入院給付金や手術給付金が上乗せされるなど保障を厚くした医療保険です。そしてその保障内容は保険会社によって違います。
女性保険不要論でよくいわれることに「女性特有の病気だからって、他の病気より費用が高くなるわけでも、入院が長くなるわけでもない」というのはその通りです。厚生労働省の統計調査から平均入院日数や平均医療費を計算してみると、男女共通の病気(上3つ)と女性に多い病気(下3つ)に大きな違いはありませんでした。
疾病分類名 | 平均入院日数 | 平均医療費 |
---|---|---|
胃の悪性新生物 | 13.9日 | 59万7,877円 |
気官、気管支及び肺の悪性新生物 | 13.6日 | 65万6,282円 |
骨折 | 17.8日 | 57万7,213円 |
子宮の悪性新生物 | 11.6日 | 59万816円 |
乳房及びその他女性生殖器の疾患 | 5.9日 | 28万9,049円 |
流産 | 2.3日 | 13万4,654円 |
※厚生労働省平成24年「医療給付実態調査」(制度計、入金、女性)より筆者計算
※平均入院日数=総日数÷総件数
※平均医療費=総医療費÷総件数
ではなぜこういった保険が存在するのでしょうか?それは保険会社にとって「女性ならではのお得感」をイメージできて売りやすいからです。
女性特有の病気に対する上乗せ保障部分はオマケでは無く、ちゃんとその分の保険料を払っています。したがって女性保険を検討する際には、映画館のレディーズデーや飲食店のレディースランチ、ホテルのレディースプランのように、女性ということで本来払う金額よりも安くなってラッキー・・・と同じに考えてはいけないのです。
某保険会社の場合で、普通の医療保険と女性保険の保険料を比べてみました。
35歳女性、通院プランあり、終身払いの保険料比較 | |
---|---|
普通の医療保険(入院給付金5千円) | 2,012円 |
女性保険(入院給付金5千円、女性特有の病気の場合は1万円) | 2,297円 |
二つの保険料の差額は月額285円(2,297円-2,012円)です。年間にすると3,420円(285円×12ヶ月)になります。この金額が高いか安いかは、その方の病気に対する考え方次第ではないでしょうか。
つまり「病気で入院した時の入院給付金は基本的に5千円で構わない。けれど常々不安を感じている女性特有の病気には倍の1万円の給付金が欲しい。その心強さや安心感が毎月300円弱の上乗せ保険料で得られるなら構わない」と考える方には向いているといえるでしょう。
では女性保険に加入する際の注意点は何でしょうか?それは主に以下の3つです。
1つは保険会社によって女性特有の病気の範囲が違うことです。例えば男性より女性の方がかかりやすいといわれる「甲状腺疾患」。この病気が対象になっている保険会社もあれば、なっていない保険会社もあります。保険約款をみれば病気の一覧が載っているので、自分の気になる病気が確実に入っているかどうかを確かめましょう。
もう1つは女性保険に入るタイミングです。「がんの統計‘13」に年齢階級別がん罹患率推移があります。これを見ると乳がんも子宮がんも卵巣がんも、30代から急増しているのです。また、女性保険は妊娠や出産関連での病気にも備えられることから、20代又は30代のなるべく若いうちに入る方が良いということ。30~40代の病気にかかりやすい年代で役立つ可能性があるのです。
最後は病気保障以外のオプションを付けないことです。例えば3年や5年後に生存給付金や健康祝金などのボーナスが出るオプション(特約)です。なんとなくお得な気がして目が行くかもしれませんが、これはその分の保険料を払っているので、決して得するわけではありません。ただでさえ特定の病気へのこだわりから少しだけ割高な保険に入るのですから、それ以外の保険料は節約したいところ。シンプルに病気保障だけを考えるといいでしょう。
総合商社、会計事務所、社会保険労務士事務所を経て2006年にファイナンシャル・プランナーとして独立。企業、自治体、大学でライフプランやキャリアデザイン、資産運用や日経新聞の読み方などの講師を務める。サイトや雑誌にも生活に関わるお金のコラムを執筆、2014年8月には初著書も出版。「ココロとフトコロを元気にできるFP」として活動中。
<著書>
「わたしと夫の失業日記~失業夫を立て直す妻の最愛&最強マネジメント」(同友館)
<執筆・取材>
日経BP、All About、日経マネー、 au one マネー、共同通信、ヤフー学習、価格.com、日本経済新聞 朝日新聞 サンデー毎日 週刊エコノミストなど
保障とコストのバランスに納得できるなら、女性にとっての「安心料」と考えて、女性保険を選んでみては。
ある程度の資産ができたら、医療保険は卒業してもいいともいえる。
病気に備えるお金は、医療保険と女性保険という二つの選択肢だけではない。
女性保険(女性疾病特約など)を検討するのであれば、生活習慣病特約の購入をより勧めたい。
女性疾病の保障自体は女性保険だけでなく、一般の医療保険でももちろんカバーされるので、女性保険でなくても大丈夫。
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