学資保険の加入を検討していて、保険相談にいきました。
そうしたら、学資保険ではなく、終身保険を提案されました。
教育資金の積み立てだったら終身保険の方が良いのでしょうか?
(28歳 女性)
AFP FP事務所アイプランニング 代表 飯村久美
学資保険は、文字通り、子どもの教育資金を用意するための保険です。一定期間、保険料を払い、満期時に満期金を受け取ります。契約者(保険料を払い込む人)に万が一のことがあった場合はそれ以降の保険料の支払いが免除になって満期金を受け取れるため、教育資金を確実に確保することができます。(払い込み免除がオプションになっている保険もあります)保険商品の中には、生まれる前から入れるものや、兄弟で加入すると兄弟割引が適用されるユニークな商品もあります。
学資保険の中には、契約者が死亡した時に育英年金を受け取れるものや、子どもの医療保障や死亡保障がついているものがあります。貯蓄性を重視するのであれば、満期金を受け取るだけのシンプルなものにするとよいでしょう。ここでは、シンプルな学資保険に入ることを前提に話をすすめていきます。
低解約返戻金型終身保険(以下、低解約終身保険)は、終身保険(一生涯の死亡保障)です。被保険者(保険の対象者)に万が一のことがあった場合、死亡保険金が受け取れます。途中で解約することもできます。ただし、保険料の払込期間中に解約をすると、払い込んだ保険料に対し、受け取れる解約返戻金はかなり少なくなります。一方で、払込期間中に解約せずに払込期間が終了した後は、時間をおけばおくほど解約返戻金は増えていきます。上手に活用すれば貯蓄性の高い保険といえます。
このように、両方の保険にはそれぞれ特徴があり、加入目的も違ってきます。お子さんの教育費が必要となる時期に資金を引き出す用途であれば、私は学資保険の方をお奨めします。
次に学資保険のメリットを、特に低解約終身保険と比較して、詳しく見ていきたいと思います。
学資保険には満期があります。
「18歳時に300万円」「中学校進学時に60万円、高校進学時に60万円、大学進学時に200万円」など、受け取りの時期と金額があらかじめ決まっているので、生活設計が立てやすいメリットがあります。また、満期を迎える頃には、保険会社から満期の通知が届くので、請求を忘れることもありません。決まった時期に確実に受け取れる……これが学資保険のメリットです。
一方、低解約終身保険には満期がなく、解約する時期によって受け取れる金額が変わります。資金がほしい時に自ら解約の手続きをしますが、解約の時期によっては元本を割れることがあるので、その点は注意が必要です。
両者の保険商品の中で戻り率(払い込んだお金に対して、戻ってくるお金の割合)が高いものを下記にピックアップしてみました。条件が同じではないので完全な比較はできませんが、現時点では学資保険の戻り率が高いことがわかります。
【学資保険の例】
A社/契約者:30歳男性/被保険者:0歳男性/満期:22歳/受取り:18歳~22歳/
払込期間:10年
戻り率:約121%
B社/契約者:30歳男性/被保険者:0歳男性/満期:22歳/受取り:18歳~22歳/
払込期間:18年
戻り率:約114%
C社/契約者:30歳男性/被保険者:0歳男性/満期:18歳/受け取り:18歳/払込期間:18年
戻り率:約110%
【低解約返戻金型終身保険の例】
D社/契約者:30歳男性/被保険者:30歳男性/払込期間:15年/解約:18年目
戻り率:約107.6%
E社/契約者:30歳男性/被保険者:30歳男性/払込期間:17年/解約:18年目
戻り率:約104%
学資保険は、多くの場合、加入して6年~8年経過して解約をすると、払い込んだ保険料がまるまる返ってきます。不意な出費でお金が必要になったり、子どもの留学や進路変更など、早期にお金が必要になったりした場合、解約してお金を使うことが可能です。
一方、低解約終身保険は、払込期間中の解約は、解約返戻金が低く抑えられているため、大きく損をしてしまいます。払込期間は保険会社にもよりますが、最低でも10年や15年からという設定になっているところもあります。いざという時に解約しやすい点では学資保険に軍配があがりそうです。
学資保険は冒頭でもお伝えした通り、教育資金を貯めるための保険です。積み立て貯蓄に近い感覚です。現在のところは預金で積み立てるよりも戻り率が高く、契約者に万が一のことがあっても満期金を必ず受け取れる安心感があります。
一方、低解約終身保険は死亡保険です。例えば、18年後に300万円の解約返戻金を受け取るために、30歳男性が低解約終身保険に加入すると、保険金額は430万円のプランになります。
死亡保障は別建てでしっかりと備えているようであれば、その分、保障は重複しますので、低解約終身に加入すると無駄な保険料を払うことになってしまいます。
以上、これらのメリットをみても、18歳時などに教育資金を引き出す目的であれば、学資保険がよいと考えます。
なお、保険商品には制度改定や料率改定があります。現時点での比較ですので、必ず、最新の情報で比較検討してください。
一方で、学資保険にもリスクがありますので、そちらも見ていきましょう。
学資保険のリスクは、インフレのリスク、保険会社の破たんリスク、長期固定金利のリスクなどがあります。インフレリスクの対策については、インフレに強い金融資産に分散しておくのも方法の一つです。また、保険会社の破たんリスクについては、格付け会社による格付けが高い、財務状況がよい会社を選ぶようにしましょう。
長期固定金利のリスクというのは、契約時の金利がずっと適用されるので、低金利の時に加入すると不利になるというものです。金利の上昇が心配な場合は、「配当金」がついた学資保険を選ぶとよいでしょう。
例えば、「5年ごと利差配当付学資保険」であれば、保険会社の運用益が予定した運用益を超えた場合、契約して6年目から5年ごとに契約者配当金が支払われます。このほかに長期間継続した契約に対しては特別配当が支払われることがあります。(配当金は、確実に受け取れるものではないことは留意しておきましょう)
このように、学資保険のメリットやリスクをしっかりとおさえた上で、ご自身のニーズにあったプランやオプションを選んでいきましょう。
1972年埼玉県生まれ。学習院大学卒業後、金融機関に勤務。退職後、自らの経験から、マネーの正しい知識ライフプランを伝えていきたいと2006年よりFPとして独立。これまで手がけた家計診断は600件超。相談者の気持ちや夢に寄り添いながら、お金が貯まる家計にナビゲートするのを得意とする。マネーセミナーコンテスト「E-1グランプリ」第3回大会にてグランプリ受賞。企業や自治体、PTAから講師依頼やリピートも多い。2児の母。
<著書 >「子どもを持ったら知っておきたいお金の話」
学資保険と終身保険の大きな違いは、資金が手に入る時期が特定されているか否かということ。
使い方や教育プランによっては終身保険も選択肢として有効。
解約しない限り保障は一生続きますし、解約返戻金も増えていくので、長生きの女性には老後の安心材料のひとつ。
「学資保険」のほうが目的に合致している、内容や使い方がシンプルでわかりやすい、効率的に貯める商品がある。
学資保険を活用する事で、教育費の確保と他の使途で使うお金とを明確に区分けする事が可能になる。
従来の保険も途中で解約すれば損をするけれど、それ以上に損をするのがこの保険。
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