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教育資金の積み立てに終身保険を提案された…。

学資保険の加入を検討していて、保険相談にいきました。

そうしたら、学資保険ではなく、終身保険を提案されました。
教育資金の積み立てだったら終身保険の方が良いのでしょうか?

(28歳 女性)

積極的には推奨しない

目的と時期が明確な学資保険

CFPR、ITコンサルタント、俳優 DONAKUMACOMMIT代表 松山智彦(ドナルド松山)

親の万一の時を考慮しながら、子供の教育費を確保する方法。
私は学資保険を選択します。その理由は大きく3つあります。

  • 1つ目は教育費の確保という目標が明確になっている事。
  • 2つ目は必要とする時期が大学入学前と明確になっている事。
  • 3つ目は親に万一な時でも積立が継続できる事です。

1、教育費の確保に特化している学資保険

教育費や住宅購入の頭金など、将来のあるイベントに向けて資金を準備する場合、もっとも大切な事は、使途、金額、時期などの目標を明確にする事だと考えています。そこから逆算して、毎月の積立額や、運用利回り、運用する金融商品を選定していきます。一方人生には、予想外の出来事が起きる事があったり、考え方が変わったりする事もあります。教育費として積立しているつもりでも、別の用途に使ってしまう事も考えられます。

学資保険は契約者が親、被保険者を子供とし、子供が大学入学前に到来する満期時に満期保険金を受取る事ができます。学資保険のポイントは、契約者である親に万一の事がったとしても、保険料の払込が免除になって保険契約が継続します(※1)。学資保険は、目標とする時期と目的、金額が明確になっている数少ない金融商品のひとつで、大学入学前に満期を向かえる事で大学入学に掛かる資金の確保に最適な商品とも言えます。もちろん満期保険金の使途は教育費に限定していませんので、大学入学資金に換えて、例えば社会人への準備資金や将来の結婚資金として充てる事も可能です。

学資保険を活用する事で、教育費の確保と他の使途で使うお金とを明確に区分けする事が可能になると考えます。

※1:保険料払込免除を外す事が可能な学資保険もあります。

2、終身保険は自ら満期を設定する自由さがある

今回の教育費確保の手段として比較対象になっている終身保険は、保険料払込期間中の解約返戻金を抑え、保険料払込期間が終了すると解約返戻金が増え、払い込んだ保険料の総額を上回る「低解約返戻型終身保険」と言われるタイプのもので、学資保険代わりとして勧められる商品です。

学資保険は、満期保険金が既払い保険料総額を下回ったり、上回るとしても低解約返戻型終身保険よりは返戻率(※2)を下回るという弱点があります。この弱点は、万一の時に保険機能を発揮するための手数料、つまり保険料の掛け捨て部分と捉える事ができます。しかし終身保険も死亡保険には変わりないので、保険料の掛け捨て部分があります。

私が注目しているのは親に万一の時の大きな違いです。終身保険がその時点で保険金を受取る事ができるのに対して、学資保険は保険金の受取り時期が保険期間満了(満期)の時であり、代わりに保険料払込が免除されます。
また終身保険には満期がない事で、自ら満期を設定しなければなりません。裏を返せば、保険料払込期間が満了すれば、解約する事で自由に満期を設定する事ができメリットがあります(※3)。子どもが大学に進学しない場合は、そのまま継続し、結婚する時に祝い金として充てるという事も可能になります。

※2:「返戻率」満期保険金・解約返戻金÷支払った保険料(×100(%))で求められる。100%を下回るものが「元本割れ」とされ、学資保険の弱点のひとつとされています。
※3:低解約返戻型終身保険で、保険料払込期間満了前に解約した場合、返戻率が大きく下回ります。

3、金融商品として、運用リスク、親に万一の時のリスクにも強い

教育費を確保する方法は、学資保険をはじめとする保険商品のほかに、預貯金や投資信託などの金融商品で積立をしていく方法も考えられます。これらの金融商品の積立による教育費の確保には元本割れなどの運用リスクや、親に万一の時には積立を継続する事が困難になるという弱点があります。保険商品には運用リスクや親の万一が起こるリスクにも教育費が確保できる強みがあります。

私が学資保険を勧める理由には、目標が明確であるという事を挙げましたが、もうひとつ挙げるとすると積立タイプの金融商品の中では、学資保険の認知度がもっとも高い事があります。例えばおじいちゃん、おばあちゃんが孫のために贈与したいと考えた場合、学資保険の保険料に充てると解っていれば、贈与する側も「将来の教育費に使われる」という使途が明確になるので安心して贈与できるというメリットがあります。

目標、目的が明確になっている事は、特に教育費の確保においては、運用利回りや返戻率などよりも重要だと私は考えています。しかし、ファイナンシャルプランナーとして、FP相談に来られる顧客には、色々な考え方があるので、それを尊重し、顧客の考えに見合った方法を提案しています。

CFPR、ITコンサルタント、俳優 DONAKUMACOMMIT代表 松山智彦(ドナルド松山)

摂南大学卒。証券会社のシステム部門で開発に携わり、ネット証券取引立上げにも参画。2003年よりファイナンシャルプランナーとして、個人相談や執筆、マネーセミナー等で活動する一方、簿記会計、証券外務員、国内旅行業務取扱管理者、ITパスポート等PC系の資格講師として、また小規模企業のシステムコンサルティグなどで活躍している。
2011年よりドナルド松山として舞台を中心に俳優活動を開始。
湘南工科大学、千葉経済大学短期大学部非常勤講師。

<主な著書>
絵で見てわかる!3級FP技能検定 過去問題&解説集(近代セールス・共著)
一生賃貸!(ダイヤモンド社・共著)
ゼロから学ぶ!ファイナンシャル・プランニング講座(きんざい・共著)
FP技能士3級標準テキスト(セールス手帖社・監修)
FP技能士3級標準問題集(学科編・実技編)(セールス手帖社)

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