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民間の介護保険の必要性は?不要?

最近、国の公的介護保険が改正されたようで、民間の介護保険を検討しています。

加入のきっかけは、介護の場合、一時的な入院・手術で住む病気・怪我と比べて
長期化する可能性が高く、その場合家計が苦しくなるだろうと思っているからです。

検討している保険の内容は、「公的介護保険制度の要介護2以上の認定を受けた場合又は、65歳未満で、「当社所定の要介護状態が180日継続したとき」場合で、その状態が継続中は終身で年金受け取れます。」というものです。

公的介護保険だけでも保障は充実しているという声もありますが、民間の介護保険は必要でしょうか?また、使える商品はありますでしょうか?選び方なども教えていただければうれしいです。

(42歳 男性)

積極的には推奨しない

要介護になっても受け取れるとは限らない!

CFPR、1級ファイナンシャル・プランニング技能士FPリフレッシュ 代表 岡本 典子

高齢期になり介護が必要になると治ることはなく、家族は介護に追われ、家計が圧迫される可能性があります。

では、その確率はどの程度なのでしょうか?
WAMNET(独立行政法人福祉医療機構)によれば、2013年12月末の要介護・要支援認定者数は約580万人です。全員ではありませんが、その大部分は65歳以上高齢者です。2013年9月における高齢者数は3186万人ですから、高齢者の約5~6人に1人が要介護・要支援の認定を受けていることになります。この確率が高いとみるか、そうでもないとみるかは、個人の判断によるでしょう。

さらに、民間介護保険にはそれぞれ「支払い基準」が定められています。公的介護保険が定める要介護度に合わせた「連動型」、それを基に自社の条件を加えた「一部連動型」、独自の基準を定めた「非連動型」です。

どのタイプであれ、要支援の認定では、介護保険料を何年、何十年支払っていても、支給を受けることはできません。保険会社ごとに異なりますが、「要介護2以上」や「要介護4以上」にならないと、支給されない点は押えておく必要があります。

「要介護4以上」というのは、かなり厳しい基準です。

上述の要支援・要介護認定者580万人のうち、要支援4、要支援5の認定者数は132万人ですから、認定者の22.7%しか支給を受けられない、支払基準の厳しい保険といえます。これは、「民間介護保険に加入し、介護保険料を支払い、介護が必要になっても、重度にならない限り支給を受けることはできない」ことを意味します。

まずは、公的介護保険制度でどこまでカバーできるかを知ることが大切!

介護保険制度により、現在は1割負担で介護保険サービスを利用できます。ただし、要介護度別に1割負担で利用できる上限が決められており、それを超えて利用した分は全額自己負担です。そのため、軽度であれば1割負担ですむので、介護費用はそれほど高額にならないといえるでしょう。しかし、重介護になると、家族の介護力がない場合は、利用限度額内の介護サービスでは足りないため、自己負担額が高くなってきます。
しかし、日本には「高額介護サービス費」という制度があるため、介護サービスの利用料金(自己負担額)が世帯ごとの負担上限を超えると、払い戻しを受けられます
また、高齢になると介護だけでなく、医療費も若い頃よりかかるようになってきますが、こちらは「高額療養費制度」により軽減が受けられます。

さらに、医療保険と介護保険における自己負担合算額(同一世帯内で)が著しく高額になる場合は、「高額医療・高額介護合算制度」を利用できます。ただし、毎年8月から翌年7月までの1年間が年度である、医療と介護のいずれかがゼロの場合は適応されない点は注意が必要です。

ということで、大変有効な公的制度が用意されていますので、該当する場合は的確に利用することで、実際の支払額を下げることができます。

介護保険制度は3年ごとに改正が行われていますが、財政難のため、来たる2015年4月の改正では要支援が市区町村に移管される、一部の人は2割負担になるなど縮小傾向にあります。それを補足するために、充分な支払い能力のある人が民間介護保険加入を検討するのは、有効な選択の一つといえるでしょう。

設問の方のように65歳未満で要介護状態になると、脳血管疾患、末期がんなど老化が原因の16種類の特定疾病以外は護サービスを利用できません。その点、民間介護保険の「非連動型」では、年齢に関係なく、規定の支払い基準に該当すれば支給を受けられる点は安心感が高いといえます。

介護費用はいくら必要? 貯蓄で用意することも選択肢の一つ

では、介護が必要になると、実際いくら位費用がかかるのでしょうか?

当サイトの「介護費用の平均額・相場」にありますように、800万円位がめやすと押えておけばよいでしょう。これは、必ずしも民間介護保険に加入しなくても、貯蓄でカバーできる金額です。貯蓄であれば、介護が必要にならない場合は、他のことに使用もできますし、子どもに相続することも可能です。

ここで注意が必要なのは、家族による介護が困難で施設に入所するケースです。費用の安い特養は、思い通りのタイミングで入所できるとは限らないので、有料老人ホームがその代表格といえます。以前に比べ入居一時金は下がってきてはいますが、やはり500~1,500万円程度は覚悟しておかなければなりません。さらに、月額費用が20~30万円程度必要です。

?“いくらかかるか”は大切ですが、実は“いくらかけられるか”という視点で、「身の丈に合った施設選び」がポイントです。

無理のない範囲で選択できるよう、在宅介護、施設介護に関する情報にアンテナを張っておきましょう。

CFPR、1級ファイナンシャル・プランニング技能士FPリフレッシュ 代表 岡本 典子

早稲田大学卒業後、商社勤務。子育て中に賃貸経営を開始。2003年にCFPR、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得し、独立系FPとして活動を開始。
1983年、両親がシニアマンションに転居したことがきっかけで、高齢期のすまいに注目してきました。200ヶ所近い高齢者施設・住宅の見学を重ねながら、シニアの皆様・親御さんの介護や老後のすまいがご心配な皆さまへのセミナー、執筆をはじめ、個別相談にも応じています。

【著書】
『後悔しない 高齢者施設・住宅の選び方』(日本実業出版社)

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