最近、国の公的介護保険が改正されたようで、民間の介護保険を検討しています。
加入のきっかけは、介護の場合、一時的な入院・手術で住む病気・怪我と比べて長期化する可能性が高く、その場合家計が苦しくなるだろうと思っているからです。
検討している保険の内容は、「公的介護保険制度の要介護2以上の認定を受けた場合又は、65歳未満で、「当社所定の要介護状態が180日継続したとき」場合で、その状態が継続中は終身で年金受け取れます。」というものです。
公的介護保険だけでも保障は充実しているという声もありますが、民間の介護保険は必要でしょうか?また、使える商品はありますでしょうか?選び方なども教えていただければうれしいです。
(42歳 男性)
ファイナンシャルプランナー(AFP) レイズコンサルティング株式会社 代表取締役 吉田 要
「介護は突然訪れる」というキャッチコピーを目にしますが、介護現場で感じることは、「介護は徐々に落ちていく」という実感です。
一例を挙げます。お風呂場で滑って転倒し大腿骨骨折。車椅子での治療期間中に認知が進んでしまうケースは多い様です。だがこのようなケースは、そもそも一人での入浴が危険な足腰になってきていることが前提にあります。大腿筋が落ちれば歩行にふらつきが出てくるのは当たり前。杖を使い歩行介助が必要な状況であればすでに要支援認定の可能性があります。
このような可能性は人間年を取れば誰にでも起こりうる話しなので、老後の備えは必ず必要という認識は大切だと思います。万が一の際の保障は保険が一番だとは思いますが、優先順位からいったら介護保険のニーズはなかなか上位にはき難い。そもそも若くして介護度の重い状態になる可能性がどれだけあるか?と考えた場合にまで保険で備えようと思うと毎月の保険料コストが大きく成り過ぎてしまう。第二号被保険者に該当するような特殊疾病(※)。これらに保険で備えようと考えたら、先にガン保険や医療保険の検討からだと思います。
以上の点から私は積極的には推奨しません。では支給要件の面からみてみましょう。古い介護保険では支給要件が要介護3からでしたが、現在は要介護2からが主流です。それ以上の数値が要件の保険はせっかく加入していても備えとして厳しいと言えます。なぜなら要支援1から要介護3までで8割近い方が給付の対象となっております。
さらに要介護度が以前よりシビアに認定されるようになってきております。介護認定は調査員による訪問調査と、主治医意見書により判定され要介護認定がされます。(結果に不服のある場合は再判定申請を行うことも可能。)介護保険スタート時は判定も甘かった様ですが、年々増加する申請者に対し判定が厳しくなるのは止むを得ない面もあります。
そして認定の判定は、1次はコンピューターで行われ2次は専門家による認定審査会により判定されます。当然人が行う判定なので判断のズレはあり、果たして適切な介護度なのか?と思ってしまう利用者さんがおられます。訪問調査時のタイミングに飲んでいた薬によって通常の状態と異なった判断をされてしまうケースも起こりえます。
2025年に介護利用者がピークを迎える状況下において、まだまだ介護保険法改正の度に認定要件が厳しくなることが予想されます。中長期で備える保険はその都度見直しを行わなければ役に立たない可能性が出てきます。それならば貯蓄や運用型の商品のほうが将来の介護ニーズに柔軟な利用が出来ると思います。
手厚い介護環境を若いうちから準備しておきたいと考える方にとって介護保険は有用であると思います。高級有料老人ホームでは利用者一人に対して、介護ヘルパー職員が多く当然設備も充実しております。入居金が数千万円係る様な施設を希望されるのであれば、保険で一時金支給額を高く設定し準備する方法もあります。この場合、将来も入居一時金のシステムがあり続けることが前提になります。
通常の介護環境でいくにしても1割から2割の実費負担や、サービス単位超過分に関しの全額自己負担は計算しなければなりません。その為限りある予算内で手厚いサービスを受ける為にはケアマネージャーによる最良のケアプランが欠かせません。まず本人の希望を良く聞いておき、面倒をみる家族の身体的負担をどれだけ介護サービスで負担を軽くしたいのか。情報を整理して正確にケアプランに反映させてもらいましょう。自己負担を抑える為にはケアマネージャーの協力が必要不可欠です。
平成12年4月より施行された介護保険制度が13年経ちます。その間サービス利用者は当初の3倍近くで、平成26年時点では500万人以上が要支援・要介護認定者である。来年には3度目の介護保険法改正で、利用者負担が一部で1割から2割に引き上がる。要支援者への介護予防サービスは市区町村に移される。一方民間の介護保険の歴史はもう少し古いのですが、介護保険制度がスタートした頃から普及し始めたようです。
※第二号被保険者を対象とした疾病(40歳~65歳未満)
・末期がん
・関節リウマチ
・筋萎縮性側索硬化症
・後縦靭帯硬化症
・骨折をともなう骨粗しょう症
・初老期の認知症(アルツハイマー病、脳血管性認知症、クロイツェフェルトヤコブ病、ピック病)
・パーキンソン病
・脊髄小脳変性症
・脊柱管狭窄症
・早老症(ウエルナー症候群)
・多系統萎縮症
・糖尿病(神経障害、腎症、網膜症)
・脳出血
・脳梗塞
・閉塞性動脈硬化症
・肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息などの慢性閉塞性肺疾患
・著しい変形性関節症
昭和52年江東区生れ。
獨協大学経済学部経営学科卒業。
平成25年6月より介護マネーに特化したファイナンシャルプランナー事務所を開設。
また東京都内にてデイサービスホーム(通所介護施設)も運営し、実際の介護の現場でヘルパーとして携わり多くの高齢者の方々の介護援助も行っている。
Facebook https://www.facebook.com/ReizukonsarutinguZhuShiHuiShe
質問者様の状況を推察すれば、介護保険は必要であるといえる。
介護サービスには利用者負担が軽減される制度がいくつかあり、生活に影響することは少ない。
介護費用が必要となるときまでに自分で資金を準備することが重要。
まずは95歳までのライフプランをつくり、それをたたき台に家族と話し合う機会を持ちましょう。
例: 「老後」「医療保険」などお悩みで検索
※ただいま新規のご質問を制限しております。